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大栄翔が2度目の賜杯へまっしぐら 初優勝をかけて霧馬山がその背中を追う

飯塚さきスポーツライター
最後に賜杯を抱くのは…大栄翔か霧馬山か(写真:日刊スポーツ/アフロ)

侍ジャパンのWBCにおける歴史的快挙に日本中が沸くなか、大相撲大阪場所が佳境を迎える。途中まで単独トップを走っていた小兵の翠富士が、上位陣との連日の対戦で3敗に後退。代わりに星を伸ばしてトップに立ったのは、優勝経験者でもある小結・大栄翔だ。14日目、この2人が直接対決した。

関脇陣の攻防と若隆景無念の休場

連日得意の突き押しで快勝する大栄翔。今場所好調の翠富士との対戦でも、自分の相撲を崩さなかった。立ち合いからもろ手で立ち、小さい相手を正面に置いたまま激しく突き続ける。思わず途中で引いてしまった翠富士。そのまま大栄翔が突き倒して圧倒した。これで大栄翔は2敗を死守。翠富士は残念ながら4連敗を喫し、優勝争いからは脱落してしまった。

前日の取組で、右膝の前十字靱帯損傷、外側半月板損傷などで3か月程度の療養を要すると診断された若隆景がこの日から無念の休場。昨年末の筆者のインタビューで「2022年の(優勝や年間最多勝といった)経験を生かして成長していき、次はさらに充実した1年にしたいです。具体的には、もう一つ上の番付(大関)を目指したい。まだはっきりとはわからないけど、自分の相撲を取れれば上は見えてくるかなと思います」と力強く語っていただけに、その悔しさは計り知れない。14日目の対戦相手だった霧馬山が不戦勝で3敗をキープし、今日の千秋楽で初優勝の望みをかけて大栄翔と直接対決に臨むこととなった。

同じく3敗だった若元春は、14日目の結びで豊昇龍と対戦。途中休場を余儀なくされた弟の分まで、という思いもあっただろうが、同じく大関の高みを目指す豊昇龍が、それをさせなかった。

立ち合いから右に向かって当たり、左四つ得意の若元春に右上手を許さない豊昇龍。狙い通り右の上手をがっちりつかむと、そのまま豪快に右から若元春を投げ捨てた。これで豊昇龍自身も関脇で二桁勝利。虎視眈々と上の番付を狙うほかの力士たちに「そうはさせるか」といった気概の見えた一番であった。

大栄翔が走り切るか、霧馬山の初優勝か

優勝争いは、2敗の大栄翔と3敗で追う霧馬山の2人に絞られた。千秋楽は直接対決。横綱大関不在の場所は不安視されていたが、それが杞憂だったといえるほどの盛り上がりを見せている。2人の過去の対戦成績は、霧馬山の7勝6敗とほぼ互角。筆者は勝てば優勝の大栄翔が有利と見るが、霧馬山が関脇の意地を見せられるか。本割で霧馬山が勝てば、2人の優勝決定戦が実現する。

WBCの余韻が残るなか、サッカーに高校野球と、スポーツ界全体が盛り上がりを見せている日本列島。スポーツファンであれば、そのチェックリストに大相撲春場所の行方を見届けることも加わっているはず。最後に賜杯をその胸に抱くのはどちらか。どんな結末になっても、感涙の準備はできている。

<参考>優勝争いの行方

▽12勝2敗 大栄翔

▽11勝3敗 霧馬山

・大栄翔が霧馬山に〇 → 大栄翔の優勝決定

・大栄翔が霧馬山に● → 大栄翔、霧馬山による優勝決定戦

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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