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一人横綱の照ノ富士を追随する力士の初日は 2年ぶりに活気戻る九州場所展望

飯塚さきスポーツライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

九州場所も横綱・照ノ富士に期待

2年ぶりに、大相撲が福岡の地に冬の到来を告げる。画面越しに見る限り、初日とあって活気がうかがえた。新型コロナウイルスの完全なる収束はまだ見えないものの、大相撲が地域を元気づけてくれることを願うばかりだ。

今場所の展望はというと、白鵬が土俵を去ってしまったいま、優勝候補は照ノ富士以外いないといえるだろう。初日は、新三役の霧馬山を相手に少々時間はかかったものの、横綱らしい落ち着きを見せ、白星発進となった。ほかの力士が、どこまで彼に追随できるか。今場所はそこに期待したい。

初日を沸かせた力士たち

照ノ富士を追う力士として、ここのところ成績が振るわないものの、やはり大関・貴景勝と正代の名を真っ先に挙げるべきだろう。ケガさえ治れば貴景勝はその期待に応えてくれるものと信じているし、熊本出身の正代も、ご当地での意気込みは普段以上だと思いたい。初日は、貴景勝が若隆景の挑戦を受け、危なげなくそれを退けた。しかし、正代は優勝経験者である大栄翔の得意の突き押しに倒れてしまった。大栄翔にはこのまま思い切りよく取り続けてもらいたいが、大関にも矜持をもって場所を引っ張っていってもらいたい。

この日、バースデー白星を挙げた隆の勝と、その相手であった関脇の明生にも注目。力の拮抗する両者は、今場所も好成績を残してくれるに違いない。先場所準優勝・技能賞受賞の妙義龍は、タイミングのよいいなしを見せて宝富士を下した。また、初日は格上に土をつけられたものの、横綱・照ノ富士に善戦した新小結の霧馬山、三役復帰をねらう若隆景と、上位層の力士たちにも大いに暴れてほしい。

前頭5枚目の豊昇龍も絶好調だ。前に出てから打つ華麗な下手投げは、もう彼の「伝家の宝刀」と呼んでいいだろう。結果を出すだけでなく、迫力と美しさで見る者を魅了する。

さらには、人気力士の宇良。初日から見事な足取りで玉鷲を破り、会場を沸かせた。7場所ぶりに幕内の土俵に帰ってきた阿炎も、持ち味の突きを繰り出し白星スタートを切った。勢いに乗って、平幕の存在感を見せつけてくれるか。チャンスは、文字通り全員にある。

期待がかかる十両の若い力

十両では、新しい顔ぶれに期待がかかる。新十両の高砂部屋・朝乃若と境川部屋・平戸海。加えて、先場所新十両となったにもかかわらず、新型コロナウイルスの影響で休場、今場所で初めて関取として土俵に上がった宮城野部屋の北青鵬。26歳の朝乃若は実力者であり、21歳の平戸海は若く力強い相撲が、今月20歳になったばかりの北青鵬は、2mの身長を生かした大きな相撲が魅力である。

初日は新十両同士が対戦し、平戸海が立ち合いから一気に朝乃若を押し出した。北青鵬は、東白龍に押し出されて白星発進とはならなかったが、この負けを経験に変えて、自分らしい相撲を取ってくれることだろう。3人の今場所の活躍を見守りたい。

2日目となる本日、筆者は現地取材に乗り込む。今日はどんな相撲が見られるだろうか。2年ぶりの福岡のにぎわいと、頬を刺す初冬の空気を、肌で感じてこようと思う。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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