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大栄翔の地元を訪ねて──優勝から2ヵ月。埼玉県朝霞市はどんなときも味方だった

飯塚さきスポーツライター
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

先場所の初優勝で大フィーバーを巻き起こした大栄翔。筆者は今回、埼玉県出身力士初の優勝に沸いた、彼の生まれ故郷・埼玉県朝霞市を訪問。優勝から2か月経った地元で、“聖地巡礼”を敢行した。本稿では、町の人の声を拾いながら、その様子をお届けする。

朝霞駅は大栄翔でいっぱい

東武東上線・朝霞駅に飾られている大栄翔のパネル(写真はすべて筆者撮影)
東武東上線・朝霞駅に飾られている大栄翔のパネル(写真はすべて筆者撮影)

東武東上線・朝霞駅に降り立ち、改札を抜けると、大きな大栄翔パネルが出迎えてくれた。朝霞市から贈られた、市の公式キャラクター「ぽぽたん」が施された化粧まわしを締めており、場所前に掲げられたのであろう「大相撲三月場所三役復帰」の文字も見て取れる。

改札を出てすぐ、駅ビル内にある書店「CHIENOWA BOOKSTORE」では、大栄翔が表紙を飾った相撲誌をはじめ、相撲関連書籍が平積みになり、大きくコーナー展開されていた。

「CHIENOWA BOOKSTORE」内の大栄翔優勝記念コーナー
「CHIENOWA BOOKSTORE」内の大栄翔優勝記念コーナー

優勝から2ヵ月経ったいまも、朝霞駅に降り立てば、そこには”大栄翔ワールド”が広がっている。たくさんの大栄翔の姿に見守られながら、彼にゆかりのある場所をいくつか訪ねてみた。

朝霞市公式キャラクター「ぽぽたん」も大栄翔を応援

駅を出て向かったのは、ぽぽたんグッズをはじめ、地元の商品が数多く売られている「ラキアショップ」。自社で開発販売しているLAKIAブランドの自転車用品を販売する店だが、2019年8月からぽぽたんのグッズ販売ショップとなった。以前、大栄翔がテレビで紹介して話題となった「朝霞カレー」を取り扱っている店でもある。

「ラキアショップ」内の大栄翔特設コーナー。並んでいるおせんべいやドライフルーツは大栄翔の好物
「ラキアショップ」内の大栄翔特設コーナー。並んでいるおせんべいやドライフルーツは大栄翔の好物

同店の運営や、ぽぽたんの企画・グッズ販売を行っている、代表の塩味明(しおみ・あきら)さんは、大栄翔の後援会員でもある。お話を聞いたところ、朝霞カレーは年間1000食ほど作られているが、テレビ放映後、たった1週間で売り切れてしまったという。

「大栄翔関の優勝を機に、480円から390円(サンキュー)に値下げしたんです。店頭では1週間、通販では3日ともたずに売り切れてしまいました」

朝霞カレーは、残念ながら現在は品切れ中
朝霞カレーは、残念ながら現在は品切れ中

大栄翔一家も、ラキアショップの常連。「お母さんとお兄さんには、よく立ち寄っていただきます。お相撲さんは何かと荷物が多いでしょうから、以前大栄翔関に大容量のぽぽたんバッグをプレゼントしたところ、大変喜んでいただきました」と、塩味さんが教えてくれた。

大栄翔にプレゼントしたというぽぽたんのバッグ
大栄翔にプレゼントしたというぽぽたんのバッグ

大栄翔優勝記念缶バッヂも600個手作りし、商品を買ってくれたお客さんにプレゼントしていた塩味さん。しかし、「缶バッヂだけでも売ってほしい」というファンも多く、大栄翔人気を肌で感じている。

「朝霞カレーに至っては、電話でのお問い合わせも多くいただいています。4月中旬に再入荷する予定ですので、楽しみにしていていただければと思います」

駅から徒歩2分。朝霞を訪れる際は、ぜひ立ち寄ってほしい「大栄翔関連スポット」のひとつである。

大栄翔が汗を流した土俵も

朝霞市武道館。奥に土俵がある
朝霞市武道館。奥に土俵がある

次に向かったのは、大栄翔が子どもの頃に通っていたという朝霞市の相撲場。朝霞市役所から徒歩5分ほどの場所に位置する。稽古があるのは毎週日曜日の午前中とのことで、この日は人がいなかったが、土俵を見に行ってみた。

武道館の奥にある土俵
武道館の奥にある土俵

この土俵で、いまも朝霞市相撲連盟の子どもたちが稽古に励んでいる。道場の先輩が幕内最高優勝を果たしたことは、子どもたちの大きな刺激になったことだろう。ここからまた、第二の大栄翔が誕生するか。大いに期待したい。

朝霞市は、どんなときも大栄翔の味方

帰路に就く前に、大栄翔が「日本で一番おいしい」と豪語するデニーズ朝霞駅前店に立ち寄り、彼の好物であるオニオングラタンスープを堪能した。店のスタッフに尋ねても、やはり優勝後からかなり売れているとのこと。スープに浸ったバゲットは、もちもちとやわらかい一方で、表面の香ばしさも残しており、チーズの塩味とも相性抜群。先日、大栄翔のお母さんもテイクアウトしていったと、スタッフが嬉しそうに教えてくれた。

今場所は、上位陣との対戦が続いて苦戦を強いられている大栄翔。しかし、七日目は1敗を守っていた関脇・隆の勝に対して、目の覚めるような突き押しを繰り出し、今場所の流れを断つ快勝だった。地元の人々は、一喜一憂はあれど、その結果いかんで彼への思いを変えるわけではない。もちろん、優勝したことで彼の存在を知ったという人も多かろうが、実際に地元へ足を運び、町の人の話を聞いたことで、人々の温かいエールの気持ちを感じ取ることができた。どんなときも、朝霞の人々は彼の味方でい続けてくれている。結果がすべての厳しい世界で戦い続ける大栄翔に、本稿が少しでもエールになれば幸いである。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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