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貴景勝が完全なる相撲で優勝争いのトップに君臨 千秋楽でいよいよ照ノ富士と直接対決

飯塚さきスポーツライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

いよいよ大詰めを迎えた大相撲11月場所。十四日目を終え、幕内・十両共に優勝争いの行方が注目されている。

貴景勝が優勝へ一歩リード!

十四日目。1敗で単独トップに立つ大関・貴景勝は、関脇・御嶽海と対戦。今場所はすでに7敗と調子が上がらない御嶽海だが、これまで優勝争いに関わる力士たちに土をつけてきた実績があるばかりに、どうにも不気味で侮れない相手といえた。

しかし、大関はそんな懸念をいともたやすく吹き飛ばした。立ち合いから低く強く当たり、御嶽海の体を下から突いて押し上げながらどんどん前に出る。御嶽海になすすべなく、そのまま力強く突き出した。完全なる貴景勝の相撲。高い集中力を保ち、実に落ち着いた様子が印象的だった。

昨年9月場所では、御嶽海に優勝決定戦で敗れ、涙を飲んだ。その雪辱を果たし、堂々と優勝争いのトップに残る。このまま本日、大関として初の優勝を手にできるか――。いまこの瞬間は、その姿が容易に想像できる。

照ノ富士、優勝へ望みつなげる

貴景勝の背中を追いかける2敗同士で当たったのは、照ノ富士と志摩ノ海。過去の対戦経験はなく、今場所の調子から考えても、どちらが勝つかわからない、大注目の一番だった。

しかし、立ち合いから踏み込んで先手を取ったのは照ノ富士だった。立ち合いと同時に右を差しに行き、左は強烈なおっつけで前への圧力をかけ続ける。脇はがっちり固めて、相手にまわしを許さない。力強く左上手を取ると、そこからは早かった。あっという間に寄り切り、優勝への望みをつないだ。

対する志摩ノ海も、得意の低い体勢で、照ノ富士の強烈な攻めに耐えた。幕尻ながら、大関・小結相手にも善戦し、ここまで場所を盛り上げてくれたことに、心からの拍手を送りたい。

本日、貴景勝と照ノ富士の直接対決が結びで行われる。どちらが勝ってもまったくおかしくはない状況だが、筆者の個人的な見方としては、貴景勝が有利なのではないかと感じている。仮に本割で照ノ富士が勝ったとしても、2度続けて勝利するのは至難の技である気がするのだ。ここまでどちらも落ち着いて取っているため、絶対とは言い切れないが、筆者の予想としては貴景勝のほうに分があるとここに記しておく。

新入幕確実の翠富士が十両優勝に王手

十両の土俵では、貴源治を下した二枚目の翠富士が、10勝目を挙げて単独トップに躍り出た。小柄な体ながら、まっすぐ貴源治の胸に当たっていった翠富士。右からの出し投げを繰り出し、頭をつけて相手の横につこうと動き続ける。最後は肩透かしが決まって、優勝争いの先頭に立った。

十三日目には、珍手「ずぶねり」で白星を挙げ、念願の新入幕が確実となった翠富士。その栄誉に「十両優勝」の花を添えられるか。次ぐ9勝5敗で後を追いかけるのは、旭秀鵬、千代の海、宇良、常幸龍の4人。千秋楽で翠富士が勝てば優勝だが、負けた場合はほかの4人にもチャンスが回ってくる。

どの一番も見逃せない千秋楽。力士たちの疲労がピークに達する日ともいえるが、それでも最後まで力を振り絞って戦う、彼らの雄姿を刮目せよ。

<参考>優勝争いの行方

▽13勝1敗 貴景勝

▽12勝2敗 照ノ富士

・貴景勝が照ノ富士に〇 → 貴景勝の優勝決定

・貴景勝が照ノ富士に● → 貴景勝・照ノ富士による優勝決定戦

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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