吉田栄作インタビュー(第1回)麻雀ドラマ「天」を語る「全人生を賭けて“男が惚れる男”に」(ネタバレ)

プロから監修を受けた、吉田栄作の麻雀の打ち方にも注目! (C)「天」製作委員会

 「これまでの僕の全人生をアカギの中に注ぎ込むのだという気持ちで撮影にのぞみました。アカギの役は、そのくらいの覚悟でなければ口にできないような重みのあるセリフや立ち居振る舞いばかりだったんです」

 そう語るのは、テレビ東京(水曜深夜1:35~放送。全12話)で、本日深夜、放送開始の麻雀ドラマ「天」(福本伸行氏の麻雀漫画『天 天和通りの快男児』の実写化)で、雀神アカギ役を務めた俳優吉田栄作だ。「天」は雀士の世界を舞台に、主人公天とひろゆきという若手の雀士の師弟関係を中心にストーリー展開されるが、吉田は、2人の前に壁として立ちはだかりつつも、後には強い味方となって2人を助ける重要な役どころを果たしている。

 80年代後半、“トレンディ俳優”の代表的存在としてブレイクした吉田は、1995年、その座を捨てて、渡米。ロサンゼルスで3年間休養した後、NHKのドラマで復帰し、俳優として、またシンガーとして活躍を続けている。

 今年は、俳優デビュー30周年。初めて挑戦した昼枠のドラマ「越路吹雪物語」はゴールデン・タイムの視聴率を凌ぐ数字を獲得して話題を呼んだ。また、ドラマ「未解決の女」で演じた大学教授役も大当たりして注目された。11月8日からは、ブロードウェイでロングランを記録した「カクタス・フラワー」の日本版の舞台にも出演する。

 1998年に帰国後も、毎年訪れている“第二の故郷”ロサンゼルスで、恒例のライブを終えたばかりの吉田に、「天」のこと、アメリカのこと、人間関係のこと、そして、これから始まる“人生のチャプター3”について語ってもらった。

俺は俺のままで生きたい

ーー今回、アカギを演じて、彼の生き方についてどう思われましたか?

 アカギは、「あしたのジョー」で言えば、力石のような役と言えます。台本を読むと、一言一言がかっこいいのですが、同時に、生半可な気持ちではとても口にできないような重みのあるセリフばかりでした。アカギはそれだけ強い覚悟を持って生きて来た人間だからでしょう。例えば、アカギは「俺の麻雀は百戦して百勝する麻雀なんだ」と言い切るわけです。かっこいいけど、なかなか口にできないセリフですよね。これまで打って来た一局一局、一手一手や、歩んできたアカギの人生に裏付けられた一言と言えます。

 また、言葉だけではなく、タバコの吸い方一つをとっても、どこまでもクールなんです。アカギの一挙手一投足は、まさに、“男が惚れる男”のそれ。それだけに、これまでの僕の人生をすべて投影させる気持ちで、アカギの役に挑みました。それくらいの強い覚悟を持ってしてでなければ、できない役柄だったと思います。

寂しく孤独だが信念のあるアカギに、自身を重ね合わせた吉田栄作。(C)「天」製作委員会
寂しく孤独だが信念のあるアカギに、自身を重ね合わせた吉田栄作。(C)「天」製作委員会

ーー演じられてみて、ご自身と重なるところは感じられましたか?

 僕は、1~12話中の3~9話に登場するのですが、9話目で、アカギが去り際に「俺はいつ死んだってかまわねえんだ。俺の命はやがて何かになって蘇る」というのです。アカギは“命の再生”を信じているからです。しかし、アカギにとってやっかいなことがあります。それは、“次に生まれて来る時には、俺という意識がないこと”。だから、アカギは「俺はあくまで俺のままで生きたい」というのです。

 そんな考え方からか、アカギは、漫画では、侵された病気(アルツハイマー病)のため俺のままで生きられなくなっていく自分を感じ、安楽死を選ぼうとします。そんなアカギを、これまでの対戦相手たちが止めに入るんですが、誰も止めることができず、最後は死んでしまうのです。

 次に再生する時は、俺という意識がない俺が生きなくてはならない、それがいやなんだ。そんなふうに言うアカギはすごく寂しい人なんだなと思いました。孤独な人なんだなと。しかし、そう言い切る彼には揺るぎない信念を感じました。そんなアカギにインスパイアされたし、不思議と、自分自身を重ね合わせることができたんです。だから、9話は自分なりに咀嚼した上で演じることができた気がします。

安楽死には反対できない

ーーアカギは漫画では安楽死を選ぶわけですが、アメリカでは安楽死を認める州が増えています。安楽死についてはどう思われますか?

 もの凄く苦しんでいる人が安楽死をチョイスすることには、反対できないですよね。僕自身も、場合によっては、安楽死を希望するかもしれません。特に、アカギが侵されてしまったアルツハイマー病の場合、じょじょに、自分が自分でなくなっていく、俺が俺でなくなっていくわけです。病気で周囲の人たちに迷惑をかけてしまう自分に、自分という意識がないのは本当に辛いことだと思いますね。

ーー自分が自分であり続けられるか。それは、とても大きな課題かもしれませんね。今年、芸能界では、歴史に残る大物スターが他界されました。西城秀樹さんはその一人ですが、西城さんは、脳梗塞の後遺症のために言葉がうまく出なくなったり、体が思うように動かせなくなったりしても、ファンの前に立ち続けました。同じ状況に置かれたら、栄作さんはどんな選択をされると思いますか?

 西城さんとは交流がなかったんですが、幼い頃からのスーパー・ヒーローでしたから、亡くなられた時は、友達とカラオケで「秀樹さん、ありがとう」と叫びながら、彼の歌を歌い、僕なりに追悼させて頂きました。

 もし僕が西城さんと同じ状況に置かれてしまったら……。難しい問題ですね。声がうまく出せなくなった、本来の自分ではない自分をファンの方々にお見せすることにはためらいを感じてしまうかもしれません。僕はアカギのように、本来の自分のままであり続けている自分で、人と触れ合いたいところがあるように思います。

ーー自分のままであり続けたという意味では、先日、他界された樹木希林さんもそんな生き方を貫かれましたよね。

 樹木希林さんとは面識はないのですが、樹木さんにはアカギと重なるものを感じますね。決して傍目には幸せそうには見えないところや、無欲なところ、人とは距離感を保ちつつ、さりげなく、見返りも求めずに愛情を態度で示すようなところがアカギに似ているように思います。何より、芯の通った、かっこいい生き方をしてこられたことも。お2人の生き方は生き方というより、生き様と呼ぶ方がふさわしいですね。

リアルな立ち居振る舞いに

ーー今回、共演された方々はいかがでしたか?

 岸谷五朗さんは、彼の持ち味である、静かに熱い演技を披露してくれました。背中で若いひろゆきに語るようなところが素晴らしかった。

ひろゆき役を演じた古川雄輝さんには、時代は変わったと認めざるをえないような若者らしい器用さを感じました。年齢もキャリアも同じくらいの的場浩司さんは、演技が上手く行かなかった時は、50回でも100回でも「いいですか?」とリテイクを申し出て、その熱血漢ぶりはイメージのままで頼もしかったです。

ーー撮影現場はどんなところだったのでしょうか?

 劇中の東西戦は(5話~9話)渋谷のクラブで撮影したんですが、酒と化粧という夜の盛り場の匂いと40度近くまで上がったこの夏の暑さのせいで、若干、調子が悪くなったこともありました。アカギはチェーンスモーカーなので、タバコを吸わない僕は、ネオシーダーという医療用タバコを吸いました。といっても、味はタバコの味とほぼ同じなんです。

 麻雀をした経験は一度もなかったので、麻雀のプロから立ち居振る舞いの監修も受けました。それに、面白いことに、現場は、麻雀好きなスタッフばかりだったんです。だから、監修の方が席を外した時も、カメラマンやADの方が細かい部分を教えてくれました。その意味では、みんなで楽しみながら作り上げたドラマです。監修の方に褒められた僕のリアルな立ち居振る舞いも、是非、お楽しみいただけたらと思います。(第2回に続く)