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NYタイムズに匿名の論説文を送った“犯人”は、トランプ氏自身か彼の手先? マイケル・ムーア氏の考察

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
問題のNYT論説文は、トランプ氏かその手先が書いたと考えるマイケル・ムーア氏。(写真:Shutterstock/アフロ)

 「トランプか、彼の手先が書いたんだよ」

 大きな波紋を呼んだ、NYタイムズに掲載された“トランプ・バッシング”の論説文。“抵抗勢力”と名乗るトランプ政権の政権高官が匿名で書いたものだが、トランプ氏は“犯人探し”に躍起になっている。そんな中、映画監督のマイケル・ムーア氏が、CNNのインタビューで、“犯人はトランプ氏かトランプ氏の手先説”を展開した。

 

 ムーア氏はその理由をこう説明する。

 「トランプは真実から国民の目を逸らすのが上手いんだよ。人を間違った方向に導くキングだ。彼が国民に本当に信じてもらいたいと思っているのは、“心配するな。政権内には大人もいるのです”というくだり。このくだりで、国民の心を落ち着かせ、自分の実際の行動から目をそむけさせようと考えているんだ」

 確かに、論説文を読むと、トランプ氏の言動が批判されてはいるものの、終わりには「大統領以外の政権内部の者たちは、安定した国家を運営しようとしており、政府を正しい方向に向けて動かしていくために、可能なことをしていくつもりだ」という趣旨のことが書かれている。単なる告発文に終わらず、最後は“国民のみなさん、安心して下さい”とでも言いたげではある。

自らメディアに垂れ込んだトランプ

 “犯人はトランプ氏かトランプ氏の手先説”はムーア氏の飛躍した解釈のように感じられるものの、その反面、なるほどとも思った。というのは、トランプ氏は、不動産王として活躍していた時代、自らメディアに垂れ込むような特異な行動を取っていたからだ。

 ワシントン・ポストのシニア・エディターで、『トランプ』の著者、マーク・フィッシャー氏がこんなことを話していた。

 「トランプ氏はニューヨークの新聞記者に、ジョン・バロンやジョン・ミラーという偽名で電話をして、“トランプが今夜、スタジオ54に、セクシーなモデルやセレブたちとやってくるぞ”と垂れ込み、取材に来させようとする行動を取っていたのです。それは消費者ベースを獲得するためのトランプ氏のマーケティング法でした。メディアを使って、自分がリッチな生活を送っていることを人々に見せつければ、人々もリッチなライフスタイルを送りたくなる、自分が所有するゴルフコースやホテルを訪れたり、自分が開発したマンションに住んだりしたくなるとトランプ氏は考えたのです」

 偽名まで使って、自らメディアに垂れ込むマーケティングを行っていたトランプ氏であるから、今回は、匿名でNYタイムズに寄稿したとしても不思議ではないかもしれない。

不信を買い、支持率低下

 しかし、もしそうだったとしたら、トランプ氏の狙いは何だったのか? ムーア氏の主張するように、“批判を受けている自分の言動から国民の目を逸らし、国民を安心させる”という狙いがあったのか?

 あるいは、自分自身にとって“爆弾”になるような論説文をあえて載せることで、注目を集めて、支持基盤を強化する狙いがあったのか?

 

 しかし、その狙いが何であれ、狙い通りには行かなかったと言えるだろう。この論説文は明らかに国民を不安に陥れ、トランプ氏は国民の不信をいっそう買う結果となってしまったからだ。支持率が41%を下回ったことが、そのことを証明している。

 

 今度は、ムーア氏が9月21日公開予定の新作映画『華氏11/9』(詳しくは、マイケル・ムーア監督が警告「トランプが2020年の大統領選で勝ってしまうぞ」をお読み下さい)で、トランプ氏に打撃を与えようとしている。トランプ氏と性関係を持ったと言われている元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏の暴露本『全面暴露』も10月2日に出版される。

 中間選挙を前に降りかかる数々の攻撃に、トランプ氏は立ち向かう術を持っているのか?

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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