西鉄のエース・8000形が駆け抜けた28年間

最後の力走を見せる西鉄8000形。28年間、福岡県民の足として活躍した

 日本には「大手私鉄」と呼ばれる鉄道会社が16社ある。そのうち本州以外にある唯一の会社が、福岡県にある西鉄こと西日本鉄道だ。路線長は106.1kmと、大手私鉄で9番目。関東だと京成や東急、関西だと京阪などよりも長い。九州最大の都市・福岡市の中心部と、南部の大牟田市を結ぶ天神大牟田線が主軸で、輸送人員は年間1億人(2016年度実績)。文字通り、九州の経済を支える大動脈だ。

 そんな西鉄で、28年間にわたって活躍してきた8000形が引退の時を迎えた。

◯全国トップレベルの設備と速度

特急として快走する8000形。大きな窓の展望席は、子供たちに大人気だった
特急として快走する8000形。大きな窓の展望席は、子供たちに大人気だった
車内は2扉クロスシート。JR鹿児島本線の快速に対抗できる設備とした
車内は2扉クロスシート。JR鹿児島本線の快速に対抗できる設備とした

 西鉄8000形がデビューしたのは1989年3月。それまで特急に使用されていた2000形と交代すべく、6両編成6本が導入された。特急用車両にふさわしく、2扉で転換クロスシートを装備。前面展望を考慮して、前面窓や運転室との仕切り壁は大きな窓ガラスとなり、客室に設けられた展望席は子供たちに大人気となった。一方で、車端部はロングシートとして多客時にも対応。白と赤の新カラーリングに身を包み、西鉄福岡(天神)〜大牟田を約65分で結んだ。これはJR鹿児島本線の快速とほぼ同じスピードで、表定速度は70.1km。特別料金が不要の特急列車としては、全国トップレベルの速さと快適性を誇る。

◯西鉄初の観光列車に

観光列車「旅人」太宰府までの短い距離だが、観光客に楽しみを与えた
観光列車「旅人」太宰府までの短い距離だが、観光客に楽しみを与えた
「旅人」の車内に設けられたスタンプ台。願い事を書く札なども置かれた
「旅人」の車内に設けられたスタンプ台。願い事を書く札なども置かれた

 デビュー以来、特急用として活躍してきた8000形だが、6両編成で2扉という構造のため、ラッシュ時には特急運用から外れることも多かった。そんな中、2014年には1編成を観光列車「旅人(たびと)」へと改造。太宰府の観光名所などをデザインした外観、車内は6両すべてが違う絵柄の壁紙となり、記念スタンプや願い事を記入する祈願札なども設置された。続く2015年には柳川をテーマにした観光列車「水都」もデビューし人気を呼ぶ一方、同年からは残る編成の廃車も開始。特急として走り続けた同形は他の車両よりも走行距離が突出して多く、老朽化が進行していたためで、3扉クロスシートの3000形に特急運用を譲ることになった。

◯2017年10月、ついに引退へ

「旅人」に続いて登場した観光列車「水都」。こちらは柳川観光がテーマ
「旅人」に続いて登場した観光列車「水都」。こちらは柳川観光がテーマ
引退を前に、車内には記念の吊り広告が設置された
引退を前に、車内には記念の吊り広告が設置された

 そして、2016年末には一般車両の4編成が全て廃車され、観光列車の「旅人」「水都」も2017年夏には営業を終了。最後に残った「旅人」編成がオリジナルの塗装へ戻され、10月8日から1週間にわたってさよなら運転が行われた後、10月15日に開催されたラストランツアーと

「にしてつ電車まつり」での展示を最後に引退することになった。

 平成の幕開けとともに走り出した8000形。大手私鉄有数の豪華な設備とその俊足は特筆されるべきものだった。28年間という、近年の鉄道車両としてはいささか短い“人生”だったが、その姿は鉄道ファンはもちろん、福岡の人たちの心にいつまでも残るだろう。隠れた名車両の引退に、拍手を送りたい。

28年間にわたって福岡を駆け抜けた8000形。その姿にエールを送りたい
28年間にわたって福岡を駆け抜けた8000形。その姿にエールを送りたい

(文中の写真は筆者撮影、ただし一部は手嶋康人氏撮影)