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仮設階段がなくなったJR大阪駅の「雨との因縁」

伊原薫鉄道ライター
JR大阪駅のアトリウム広場。中央右が撤去された仮設階段、左奥が大階段だ

JR大阪駅の「アトリウム広場」からヨドバシカメラ・マルチメディア梅田方面へ抜ける仮設階段が3月27日に閉鎖された。毎日大勢の人が利用していたこともあって、関西では多くのマスコミが報じており、関心の高さが伺える。利用者は今後、うめきた広場へ降りる大階段(とその手前にある小さなエスカレーター)を使うことになるが、以前より大回りになる上、大階段は屋根がないため、利用者からは「不便になった」という声が上がっている。

大阪駅とヨドバシ梅田(左後方)方面を結ぶ「本来のルート」である大階段
大阪駅とヨドバシ梅田(左後方)方面を結ぶ「本来のルート」である大階段

そもそもこの仮設階段は、もともと計画にはなかったもの。大阪駅と商業施設が一体となった「大阪ステーションシティ」と、北側にある「グランフロント大阪」の整備が同時期に完了する予定だったため、当初から大階段がメインルートとなるはずだった。だが、グランフロント大阪の完成が2年ほど遅れたことから、当面の移動ルートを確保するため仮設階段を設置することに。2013年、グランフロント大阪のオープンとともに大階段も使用を開始したが、仮設階段はそのまま残っていたという形だ。このタイミングで閉鎖されたのは「アトリウム広場とヨドバシカメラを直結する連絡デッキの建設工事に伴い、仮設階段を撤去する必要があるため」(JR西日本の広報担当者)だそう。連絡デッキの完成は2年後の予定で、それまでは大階段や、いったん地下へ潜るルートのみとなり、不便はしばらく続くことになる。

ちなみに仮設階段の撤去後、今年7月からこのスペースは各種イベントやキャンペーンなどに使用されるという。そのスペースが確保できるなら、せめて連絡デッキができるまで仮設階段を残しておいてくれても…と思うが、色々とそうはいかない事情があるようだ。

大阪駅3階へ上がる階段からアトリウム広場を眺める。雨の日は傘が必要だ
大阪駅3階へ上がる階段からアトリウム広場を眺める。雨の日は傘が必要だ
アトリウム広場から見上げる。「雨よ降り込め」と言わんばかりの構造だ
アトリウム広場から見上げる。「雨よ降り込め」と言わんばかりの構造だ

ところでこの「アトリウム広場」、以前から不評だった点がある。それは、雨の日に傘が必要なこと。ここは「開放感やスケール感が溢れる、大阪駅の新しいシンボル」(前述の広報担当者)となるようデザインされた。天井となるフロアが11階部分までなく、両側の建物に囲まれてまるで門のように感じられる空間は、それはそれで気持ちよいのだが、ひとたび雨が降れば不便きわまりない。「雨が降り込む」というレベルではなく完全に屋外のため、ここからグランフロント大阪へ続く通路まで、わずか10メートルほど(大階段を経由してヨドバシ梅田へ行く人は更に長い距離)のために傘をさすハメになるのだ。当然、周囲は傘を出す人・たたむ人で混雑する。せめて、連絡通路へと続く部分だけでも屋根をつけてほしいと、利用者の一人として思うのだが、その予定はないそうだ。

大阪駅のシンボル・大屋根。その下にあるホームの屋根は本来ないはずのもの
大阪駅のシンボル・大屋根。その下にあるホームの屋根は本来ないはずのもの

実は、JR大阪駅は何かと雨に因縁がある。一番のシンボルとも言える、プラットホームを覆うように設置された大屋根は、計画では文字通り「屋根」として機能し、これまで各ホームにあった屋根は両端を除いて撤去。欧米の鉄道ターミナル駅のような開放感が味わえるはずだった。

大屋根の下にホームの屋根が。手前のガラス部分がもともと計画になかった箇所だ
大屋根の下にホームの屋根が。手前のガラス部分がもともと計画になかった箇所だ

だが、いざ建設してみると予想より降り込む雨がひどく、ホームの屋根を撤去すると“ずぶ濡れ”になることが判明。結局、ホームの屋根はほとんどが撤去できなかった。ホームの屋根をよく見てみると、一部が金属製ではなくガラス製になっているのが分かるが、これがもともとは計画になかった部分だ。近年増えているゲリラ豪雨など、設計時に予測できなかった点はあるだろうが、例えば大屋根の両側にガラス製の垂れ壁をつくるなどして、開放的なホームにできなかったのか、少し残念である。

御堂筋口のバスターミナルで見られる、屋根のすき間。見るからに残念である
御堂筋口のバスターミナルで見られる、屋根のすき間。見るからに残念である

雨と言えば、昨年整備された御堂筋口のバスターミナルにも残念なところがある。駅とバス乗り場の境目に、わずかだが屋根のない部分が。ほんの数十センチメートルほどとはいえ、壁を伝って落ちてくる水滴もあり、バス待ちの時などはかなり気になる。

この隙間の原因は、一言で言えば「敷地の壁」。つまり、駅の敷地を所有するJR西日本と、バス乗り場を管轄する大阪市交通局が、それぞれ相手の敷地に侵入しないように屋根を設置した結果なのだ。それなら双方の屋根をぴったり接触させてしまえば良いと思うのだが、「屋根同士が接触していると、地震が起こった際にぶつかって危険」(前述の広報担当者)などの理由で、あえて隙間があくようにしているという。

横断歩道部分は屋根が重なるように設置されていて、傘をささずに済む
横断歩道部分は屋根が重なるように設置されていて、傘をささずに済む

だが、屋根を上下に重ねるようにするなど取り合いを工夫することで、接触させずとも利用者が雨にぬれない工夫はできるはず。現に、バスターミナル横の横断歩道部分はそのようになっていて、傘をささずに済む。結局は、土地の所有者同士で調整するのが面倒なだけでは?と思わずにはいられない。

ちなみにJR西日本の名誉のために補足するが、実はこれ、JR大阪駅に限らず全国あちこちでよく聞く話なのだ。貴方も一度、自分が使っている駅の入り口を見てみてほしい。そこに隙間があるなら、そういうことなのかもしれない。

ホームドアの整備をはじめ、今も改良が続いているJR大阪駅。安全面はもちろん、こういった利用者目線での改良も期待したい。

鉄道ライター

大阪府生まれ。京都大学大学院都市交通政策技術者。鉄道雑誌やwebメディアでの執筆を中心に、テレビやトークショーの出演・監修、グッズ制作やイベント企画、都市交通政策のアドバイザーなど幅広く活躍する。乗り鉄・撮り鉄・収集鉄・呑み鉄。好きなものは103系、キハ30、北千住駅の発車メロディ。トランペット吹き。著書に「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」「街まで変える 鉄道のデザイン」「そうだったのか!Osaka Metro」「国鉄・私鉄・JR 廃止駅の不思議と謎」(共著)など。

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