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「ラーメン 凪」プロデュースの親鶏中華そばが480円! 「扇屋」が採算度外視の食堂をオープン

井手隊長ラーメンライター/ミュージシャン
極太麺もしっかり絡む「親鶏中華そば」

コロナ禍が明けて、夜の街にも少しずつ人が戻ってきた。繁華街の夜は人に溢れていて、コロナもいよいよ収束したかと思われているが、郊外に行くとその限りではない。郊外の居酒屋はまだまだ厳しく、コロナ前の売り上げに戻るのにはまだまだかなり時間がかかりそうだ。

株式会社ヴィア・ホールディングスが展開する「扇屋」は郊外にもお店が多く、売り上げの戻らない現状に対策を講じる必要があった。

昼の時間を利用して名古屋の台湾まぜそば「麺屋 はなび」を展開するお店もある(写真は二俣川店)
昼の時間を利用して名古屋の台湾まぜそば「麺屋 はなび」を展開するお店もある(写真は二俣川店)

過去にも、昼の時間を利用して名古屋の台湾まぜそばの人気店「麺屋 はなび」を展開し、二毛作営業するなど画期的なトライアルをしてきた「扇屋」

しかし、郊外店においては昼の売り上げだけでなく、夜の人出も戻っておらず、大きな売り上げ減の状況が続いていた。その中で、ランチ営業に力を入れ、さらには夜の飲み需要でない食事目的の集客を狙って運営していたが、それもまた厳しかった。

「やはり居酒屋のランチ、食事メニューということになると、他の飲食店に比べるとお客さんに選んでもらいづらい。そこで、完全に“食堂”という方向に振り切って運営してみることにしました」(株式会社ヴィア・ホールディングス 代表取締役社長 兼 株式会社扇屋東日本 代表取締役社長 楠元健一郎さん)

炭火焼鳥麺飯店 オオギヤ食堂 三芳藤久保店
炭火焼鳥麺飯店 オオギヤ食堂 三芳藤久保店

テスト店として埼玉県三芳町にある三芳藤久保店を「炭火焼鳥麺飯店 オオギヤ食堂」としてリニューアルした。今までの居酒屋業態をやめ、一気に“食堂”として運営していく方針に変えたのだ。

焼き鳥がメインの「扇屋」の得意分野をそのままメニューに応用し、親鶏中華そば、親子丼、唐揚げなど鶏を軸としたメニューが充実する食堂となっている。

ほぼ採算度外視の値付け

驚きの低価格メニュー
驚きの低価格メニュー

驚くのはその価格帯だ。親鶏中華そばは普通盛で480円、親子丼は580円から、唐揚げはなんと1個30円で発売している。

「はっきり言ってほぼ採算度外視です。

唐揚げや餃子などのサイドメニューはほとんど赤字レベルの値付けになっています。まずはお客さんを集めてファンを作ること、地域のお客さんに食堂として早く認知されることを目的に圧倒的な低価格で勝負しています」(楠元さん)

トッピングはタッチパネルで自由に選べる
トッピングはタッチパネルで自由に選べる

タッチパネルで注文をする方式だが、これが面白い。

まずメインメニューを選んでからトッピングを選ぶ。トッピングはチャーシューやほうれん草はグラム数、ノリや味玉は乗せたい数をタッチパネルで指定する方式だ。完全に自分の好きなようにカスタマイズして注文することができるのが面白い。もちろんトッピングは無しで、メンマとネギだけ乗ったノーマルで注文することも可能だ。

唐揚げもタッチパネルで1個から注文できる
唐揚げもタッチパネルで1個から注文できる

特に激安で提供している唐揚げや大餃子などのサイドメニューは、メインメニューを注文した人だけが注文できる方式になっている。単品ではとんでもない価格だが、最低限の客単価は取れるように工夫している。

ラーメンは「ラーメン 凪」がプロデュース

「親鶏中華そば」は480円だがハイクオリティ
「親鶏中華そば」は480円だがハイクオリティ

そしてこの「親鶏中華そば」だが、味をプロデュースしているのは有名店「ラーメン 凪」である。

そのクオリティは居酒屋の1メニューとしてのラーメンというレベルではなく、しっかり一杯の中華そばとして勝負できるものになっている。

自由にトッピングしてカスタマイズして楽しめる
自由にトッピングしてカスタマイズして楽しめる

鶏の旨味の分厚い清湯系で鶏油がほどよく効いている。麺はなんと極太麺で、スープがよく馴染むように斜め切りになっている。麺は「凪」が運営する新宿だるま製麺製だ。

一度焼き鳥として焼いた鶏を再度煮込んで作る「親子丼」
一度焼き鳥として焼いた鶏を再度煮込んで作る「親子丼」

「親子丼」は一度焼き鳥として焼いた鶏を再度煮込んで作る手間のかかったもの。「唐揚げ」も大ぶりだがしっかりとした肉感でとても美味しい。

1個30円とは思えないクオリティの「唐揚げ」
1個30円とは思えないクオリティの「唐揚げ」

コロナが落ち着いて、これから時間をかけて以前のような夜の賑わいが戻るかどうかはまだわからない。その中で郊外の居酒屋業態が各社どう対策を打っていくのかが注目される。

この「扇屋」の大胆な戦略は1つの大きなヒントになるかもしれない。

炭火焼鳥麺飯店 オオギヤ食堂 三芳藤久保店

埼玉県入間郡三芳町藤久保781‐1

049-274-5171

※写真はすべて筆者による撮影

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ラーメンライター/ミュージシャン

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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