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加速する「鶏清湯ラーメン」ブームが冷凍麺・チルド麺業界にも突入! その企業努力に迫る

井手隊長ラーメンライター/ミュージシャン
各社から発売される「鶏清湯」の冷凍麺とチルド麺

ラーメン界のトレンドは時代によって変遷しつつあるが、ここ数年は「鶏清湯」のブームが止まらない。

鶏ガラ、丸鶏などを寸胴でじっくりと炊き、濁らないように仕上げる。そこに生揚げ醤油などこだわりの醤油を数種合わせ、鶏油を合わせて完成させる。

「ミシュランガイド」の東京版で鶏清湯のお店が複数掲載されるようになり、2013年頃からブーム化。人気店にインスパイアされたお店が多数出てくるほか、今では資本系のチェーン店も現れている。一時は飽和状態になり、ある程度は淘汰されたが、それでも新規店の鶏清湯率は高い印象だ。

人気店の評価が著しく高い上に、スープが鶏100%と一見わかりやすく、マネしやすいのというのが店が増える要因らしい。しかし、実際は鷄、水、醤油ダレだけで構成されているので、ブレが出やすく、そこに研ぎ澄まされた高い技術が必要なのが現実である。

驚きの冷凍麺の技術

最近驚いたのは、冷凍麺やチルド麺にもその流れがきていることだ。

2月下旬にはキンレイから「お水がいらない 東京醤油らぁ麺」が発売された。

この「お水がいらない」シリーズは累計販売数1億3千万食を突破した大人気シリーズ。スープの上に麺と具材を重ねてそのまま冷凍したもので、鍋で7分温めるだけで完成するお手軽冷凍麺だ。

お水がいらない 東京醤油らぁ麺(キンレイ)
お水がいらない 東京醤油らぁ麺(キンレイ)

ラーメン評論家で株式会社ラーメンデータバンク会長の大崎裕史氏が監修し、ミシュランガイドで評価の高い「鶏清湯」の再現に取り組んだ。

タレは生醤油と再仕込み醤油の2種をブレンドし、スープは濃縮エキスを使わず、生の鶏ガラを一度下茹でしてアクを除去してから丁寧に炊き出した。麺には全粒粉を配合し、小麦の香りを楽しめる麺を目指している。

豚、鶏の2種類のチャーシューが嬉しい
豚、鶏の2種類のチャーシューが嬉しい

これが大変美味しい。

醤油感をしっかりアピールしながら鶏のリッチな旨みも演出している。豚、鶏の2種類のチャーシューが乗っているのも豪華だ。

「東京醤油らぁ麺」という名前から、トレンドの「鶏清湯」を目指しながら旨味に少しノスタルジック感を残しているのも実に大崎氏の監修らしい一杯だった。

なんとこれが300円程度(オープン価格)で食べられるのだから驚きである。

コンビニでは名店監修のチルド麺が登場

コンビニのローソンからは「らぁ麺やまぐち監修 醤油鶏そば」が発売されている。

パッケージのままレンジでチンすれば完成するチルド麺で、コンビニでは定番の人気商品になっている。

らぁ麺やまぐち監修 醤油鶏そば(ローソン)
らぁ麺やまぐち監修 醤油鶏そば(ローソン)

こちらは、高田馬場エリアを代表する行列店「やまぐち」の鶏清湯ラーメンを再現したもの。

「やまぐち」はミシュランガイドにも掲載実績のある名店で、まさに鶏清湯の最高峰的存在。

奥行きのあるスープと醤油感が特徴
奥行きのあるスープと醤油感が特徴

醤油の香りと鶏の旨味の分厚さは見事。

見た目のあっさり感からは予想できないほど奥行きがしっかりあるスープは、コンビニの商品とは思えないレベル。鶏チャーシューがたくさん乗っているのも嬉しい。

こちらも530円とかなりリーズナブルな商品だ。

新型コロナウイルスの外出自粛の影響で、一気にニーズの高まった冷凍麺・チルド麺業界。

各社の技術の向上は凄まじく、実際のラーメンとの徹底的な差が少しずつ見えなくなってきている。人気店が衰えないことは言うまでもないが、インスパイア店が少しずつ駆逐されていくのとは逆の動きで冷凍麺・チルド麺業界が加速している印象だ。

ラーメンライター/ミュージシャン

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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