プラスチックごみの問題は、社会のしくみやさまざまな人々が関係していて複雑だ。しかし、プラごみによる環境劣化を食い止めるために、いま市民一人ひとりができることは、けっこう単純だ。そのひとつが、使わなくてもよいプラスチック製品を使わないこと。でも、それはいったいどんな製品なんだろう。

プラごみのモヤモヤ

 2020年7月にレジ袋が有料化され、コンビニで受け取っていた無料のプラスチックスプーンなどにも、2022年4月からは法律の網がかかる。プラスチックごみが海をはじめとする自然環境を汚していること、それに対して社会が対策を講じようとしていることは、すでに広く知られるようになった。

 ごみを回収する自治体の求めに応じ、燃えるごみとプラごみは分別する。買い物にはマイバッグを持っていく。自分にできるこうした努力を続けてはいるが、一方でモヤモヤした気持ちも抱えている。一般市民を対象に海洋プラスチックごみについて講演すると、そう感じることも多い。

 こんなわたし一人の小さな努力が、プラごみ問題の解決に役立つのだろうかというモヤモヤ。不便を忍んでレジ袋は使わないようにしているが、レジ袋はプラごみの数%にすぎないというではないか。そもそも、プラスチックの原料として使う石油は全体のわずか数%だし。

 リサイクルのため「サッと軽く洗って捨ててください」といわれても、その「サッと」って、いったいどれくらいのこと?

 それに加え、「プラスチック製品にも、やはり必要なものはある。減らしていこうとは思うけれど、どんな製品から、どういう姿勢で取り組めばいいのだろうか」というモヤモヤも。

それは必要か、使わずにすませやすいか

 この最後のモヤモヤについてなら、浅利美鈴・京都大学准教授らが専門誌『環境と安全』に発表した「プラスチック製品に対する消費者意識・行動の可視化ツール ―プラ・イドチャートの提案と意義について」という論文が役に立つ。

 わたしたちの身の回りにあるプラスチック製品について、それぞれ「必要か不必要か」「使用を避けやすいか避けにくいか」の2項目を消費者にアンケートし、「不必要」で「避けやすい」プラ製品を増やしていくにはどうすればよいかを探った研究だ。

 44製品について統計学の手法で分析したところ、消費者の意識の持ち方により、プラ製品は6グループに分類できることがわかった。

浅利さんらの論文で使われている図。横軸は、左にいくほど必要度が高く、右にいくほど不必要。縦軸は、上にいくほど使用を避けやすく、下にいくほど避けにくい。44種類の製品が6グループに分類された。
浅利さんらの論文で使われている図。横軸は、左にいくほど必要度が高く、右にいくほど不必要。縦軸は、上にいくほど使用を避けやすく、下にいくほど避けにくい。44種類の製品が6グループに分類された。

 まず、「不必要」で「避けやすい」と考えられている製品のグループ(図のA群)。ここには、プラスチック製ストロー、使い捨ての傘袋、使い捨てのスプーン・フォークなどが含まれる。たしかに、その気になれば使わずにすみそうで、使用削減の第一候補といえる。

 反対に、「必要」で「避けにくい」ことがはっきりしている製品群(図のF群)。コンタクトレンズ、メガネのレンズ、歯ブラシ、ボールペン、電子基板などだ。このグループの製品の使用をいきなり制限すれば、消費者は戸惑い、生活に支障がでかねない。とりあえずは長持ちさせ、繰り返し使用するような工夫が必要だ。

ソノ気になることが重要な製品群も

 この論文で興味深いのは、たとえば、現実には「必要」「不必要」な製品が混在するが、避けやすさについては多くの人が「避けやすい」と考えている製品のグループ(図のB群)。ここには、プラスチックの食器、プラスチックのまな板、ウェットティッシュ、合成繊維のマイバッグなどが含まれている。

 どうすれば使わずにすむかは多くの人がわかっているので、「使わないですまそう」とソノ気にさせることが重要な製品群だ。意識を変えることが大切ということだ。

 「不必要」と多くの人が考えているのに、「避けやすい」「避けにくい」が混在する製品群(図のC群)には、野菜のプラスチック包装、お菓子の個包装、雨天時に新聞を宅配する際の袋などが含まれている。

 これについては、なくてすむ製品を作る企業努力に期待し、また、使わずにすむ方法をみんなで考えて教え合うことが大切だ。

 「必要」だが、「避けやすい」「避けにくい」が混在する製品群(図のE群)については、代替素材の開発などで「避けやすい」製品を増やすことが有効だと論文では指摘している。ここには、プラスチックの家具、収納箱、化繊の衣類、使い捨てマスクなどが分類されている。

 プラスチック製品の使用量を減らすことは、わたしたち市民が日常の生活でできる有効なプラごみ対策だ。その際、この研究で示されたように製品の特性を意識すると、自分たちの気の持ちようでなんとかなるもの、企業の力がなければなかなか進まないものがあきらかになる。どこに注力すればよいかが見えてくる。

 プラごみについては、なにをどうしたらよいかに迷い、モヤモヤを抱えたまま頑張っている人も多い。ぜひ、市民の視線でアタマをスッキリさせてくれるこうした研究が増えていくことに期待したい。