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さまざまな感染症が増え、喘息発作も増加中。普段の喘息治療を見直してみましょう

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:イメージマート)

夜間に喘息発作で救急外来に受診されるお子さんが増えてきました。

そして、保護者さんからお話を聞いてみると、『最近発作が減っていたので、定期薬をやめていました』という方がとても多いように感じます。そして、発作時の気管支拡張薬を何度もつかってから、改善しないために受診される方も少なくありません。

そこで今回は、コロナ禍に喘息発作が減った喘息を持つお子さんに近づいているかもしれないリスクと治療を考えてみたいと思います。

気管支拡張薬を使いすぎると、かえってリスクが増える

提供:イメージマート

発作時の気管支拡張薬は一般的な治療なので、使用していけないわけではありませんが、使いすぎるとかえってリスクが高まることが知られています[1][2]。

喘息発作のきっかけには、かなりの部分をウイルス感染症、特に、『ライノウイルス』という鼻かぜを起こすウイルス感染が原因になることがわかっています[3]。

しかし、この秋以降、新型コロナだけでなく鼻かぜが増えていることは、前線で働く小児科医だけでなく、保育園や学校に通うお子さんをお持ちの方は実感していることでしょう。

そのために、喘息発作のお子さんが増えているのだと考えられます。

コロナ禍で減った喘息発作、再度増加することが予想される

写真:イメージマート

実際に、コロナ禍では喘息発作が減り、その後、段階的に規制が緩和されると、喘息発作が増えてくることが示されています[4]。

日本でも、すでに学校におけるユニバーサルマスキングの段階的な解除を進めている地域もあります。それを否定するわけではありませんが、ユニバーサルマスキングを解除することで、たとえば新型コロナの発生が大きく増えることは、すでに研究で示されています[5]。

すなわち、ライノウイルス感染症が減ったために喘息発作が減っていた状況で、さらに定期薬を中止していたお子さんの喘息発作のリスクが高まっています。そして、その対応を気管支拡張薬のみで行っていると、さらにリスクが高まってくるという状況が生まれているということです。

米国や欧州では、すでに新型コロナだけでなく、インフルエンザやRSウイルスとの同時流行が起こっている

すでに、米国や欧州では、インフルエンザRSウイルスの流行が同時に起こってきており [6][7]、入院できる病床も払底している地域がでてきています[8][9]。

さまざまな感染症が同時に広がってきたときに、受診が困難になってくることは皆さんも経験されていることでしょう。

喘息のお子さんをお持ちの保護者の方々で、もしお子さんが気管支拡張薬を使用する回数が増えているのならば特に、年末年始の前にかかりつけ医にご相談いただければと思います。定期薬を再開する必要性があるかもしれません

この記事が、これからさらに混み合うことが予想される年末年始において、お子さんの心配を減らすきっかけになることを願っています。

【参考文献】

[1] Lancet 1995; 345:41-4.

[2] Pediatric Allergy and Immunology. 2022;33(11):e13885.

[3]ステイホームで喘息発作が少なくなった?しかし今こそ、普段の喘息治療を忘れずに…

[4]Lancet Regional Health – Europe. 2022;19.

[5]New England journal of medicine. 2022;387(21):1935-1946.

[6]Joint statement - Influenza season epidemic kicks off early in Europe as concerns over RSV rise and COVID-19 is still a threat

[7]BMJ (Clinical research ed). 2022;379:o2681.

[8]RSV, covid and flu push hospitals to the brink — and it may get worse

[9]US sees surge in children under five hospitalized for respiratory viruses

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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