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感染予防のための手袋でアレルギー?気をつける点を専門医が解説

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
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コロナ禍で、感染対策のための手袋をする方が増えました。

そして、手袋で手荒れがすると思うと聞くことがあります。よく確認をするとラテックス(天然ゴム)製の手袋をしている…ということも少なからずあります。

ラテックスによるアレルギーに関しては、聞いたことがある方も多いかもしれません。では、ラテックス製でなければ、かぶれることはないのでしょうか?

実は、ラテックス製から別の材料の手袋に変更しても、かぶれてしまう原因はさまざまにあります

そこで今回は、感染予防対策のための手袋の素材に関して、アレルギーの視点から簡単に解説してみます。

ラテックスアレルギーは、1980年代から注目され始めた

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ラテックスアレルギーの話題は、1980年代の米国でエイズの拡大からパニックがあったことに端を発します。

エイズへの感染対策に対しラテックス手袋の消費量が増え、ラテックスタンパク質が多く残る低品質のラテックス製品が流通しました。そしてラテックスにアレルギーとなる人が増えたことで1987年に「ラテックスアレルギー」という言葉が生まれたのです[1]。

皮膚や粘膜にラテックスが触れる頻度が高くなるほど、ラテックスアレルギーになる可能性が高くなります。

例えば、5回以上の手術歴のある方は、ラテックスにアレルギーを獲得する可能性が高くなるという研究結果もあります[2]。そのため最近は、手術時のラテックス手袋の使用を避ける医療機関も増えています。

しかし現在も、市販されている安価な製品にはラテックス手袋は少なくないようです。

そのため、コロナ禍で感染対策が広まることで、今後ラテックスアレルギーの方が増えてくることが懸念されます。

ラテックスアレルギーがあると、果物アレルギーになりやすい

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さて、ラテックスには、15種類のアレルゲンになりうるタンパク質が見つかっており、その一部のタンパク質が果物にも含まれています。

そのため、ラテックスアレルギーのある方の20~60%に一部の果物(主にバナナ、アボカド、クリ、キウイフルーツなど)のアレルギーがあることが知られています[3]。

ご心配な場合は、アレルギー専門医にご相談ください。

ラテックス製の手袋についている粉は、ラテックスではない

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さて、ラテックス製の手袋の表面に粉(パウダー)がついてることがあります。

そのパウダーは、ラテックスではなく、コンスターチ、トウモロコシのデンプンが使われています。

しかし、そのパウダーはラテックスをたくさん吸収しやすいので、パウダーがついている製品はラテックスアレルギーになりやすいのです[4]。

そして2016年、FDA(米国食品医薬品局)は、パウダー付きの医療用手袋の差し止めを発表し、日本でもパウダーフリーの手袋に切り替えることが推奨されています[5][6]。

ラテックス製でない『ニトリル手袋』も、かぶれの原因になる…その大きな理由は?

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さて、『ラテックス』は、天然ゴムのことです。

ラテックスアレルギーは天然ゴムアレルギーということですね。

そこで、ラテックスアレルギーを避けるためには、別の素材を考える必要があります。

そこで最近は、合成ゴムを使ったニトリル手袋や、ビニール製手袋が広く感染予防の手袋の素材として使用されています。

ただ、ビニール製の手袋は伸びがありません。ですので、ラテックスの代わりとしてはニトリル製の手袋が使われることが多いです。

そのニトリル製手袋に関しても実は問題を起こしやすいケースが知られています。

天然ゴムのラテックスにしても、合成ゴムのニトリル製にしても液状のゴムを固めていって手袋にするのですが、『加硫促進剤』という、ゴムが固まるのを加速する成分が添加されることがあります。

その加硫促進剤に対し、接触皮膚炎、すなわち”かぶれ”を起こしやすいことがわかっているのです[7]。

つまり、感染予防対策のための手袋に関しアレルギーやかぶれを予防するためには、ラテックス製ではなく、パウダーがなく、加硫促進剤の使っていない(もしくは少なくしている)手袋を選択した方が適切だろうということですね。

もちろん、これらの条件をそろえると高価になりますので、適切に使い分けができれば良いでしょう。

コロナ禍のなか、感染予防策が続けられることが求められています。この記事が、ラテックスアレルギーや感染対策の一助になることを願っています。

[1]Dyck RJ. Historical Development of Latex Allergy. AORN Journal 2000; 72:25-40.

[2]Arch Argent Pediatr 2016; 114:30-5.

[3]Internet Symposium on food allergens: Citeseer, 2000:125-35.

[4]Journal of allergy and clinical immunology 1994; 93:751-8.

[5] FDA proposes ban on most powdered medical gloves

(2021年12月10日アクセス)

[6] パウダーが付いていない医療用手袋への供給切替えを促します:厚生労働省 (2021年12月10日アクセス)

[7]Archives of Dermatology 2010; 146:1001-7.

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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