Yahoo!ニュース

ソーシャルメディア勢力図を俯瞰する(後編)

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
インタレストグラフベースのコミュニティは有望

Facebookは、モバイル広告の収益を拡大しつつある。市場もそれを好意的に評価し、FacebookはIPO時につけた株価38ドルをついに回復させることができた。

ここで何度か触れているように、IPOを果たして以来のFacebookには、ふたつの不安材料の解消という課題があった。ひとつはモバイルのトラフィックの換金効率を向上させて、デスクトップからモバイルへの収益構造変換を成し遂げること。もうひとつは、若者の離反を食い止め、ユーザー層の新陳代謝を促すことだ。

ひとつ目の不安解消には成功しつつあるFacebookだが、ふたつの目の若年層からの支持の回復というテーマについては、現状ではあまり芳しい状況ではない。マーク・ザッカーバーグは今後現在の11億人から50億人へとさらにユーザー数を伸ばしていくと明言しているが、それはあらゆる国・性別・世代に利用してもらわなければならないという意味である。ただ、若者からすれば、親や上司、学校の先生などの私生活の模様などはみたくないし、自分たちもまた楽しく羽目を外した夜の遊びをオトナに見咎められたくはない。つまり、全世代への拡大戦略そのものが若年層をFacebookから離れさせる。

Facebookとしては、先進国での若者の離反はある程度やむを得ないが、途上国のユーザーを増やしていくことでバランスをとり、同時にInstagramを受け皿に若年層のトラフィックの確保を目指す。つまり、ある程度の失血は覚悟のうえで輸血しながら勢力を伸ばすわけだ。

実際、Facebookとしてはこの戦略以外に採るべき道はない。その結果、どうしても新たなソーシャルメディア勢力の台頭を許すことになるが、それはやむを得ないことだ。

逆に言えば、Facebookはインターネット利用者とサービサーにとってのDNS(ドメインネームサーバ)として機能し、彼らが存在するからこそほかの新興ソーシャルメディアに成長の余地が与えられるという状況になっているのである。

前編でも書いたが、ポストFacebook、というよりFacebookが拡大する過程で失っていく(それは不可避な失血である)ニッチな領域に対していち早く進撃し、確保を目指すスタートアップが次から次へと登場することになるのだ。

前編で述べたように、米国ではメッセージングサービス、画像共有サービス、ミニ動画共有サービスなど複数の領域で複数のベンチャーがしのぎを削っているが、日本国内ではメッセージングサービスにおけるLINEが突出している状況だ。日本国内においてもFacebookはユーザー数そのものは伸ばし続けているものの、若者の支持は弱まっている。Facebookに魅力を感じない若者の気分を受け止めているのがmixiかというとそうでもないし、新しいSNSが生まれているようでもない。いまのところ受け皿はLINEに集中している。

しかし、米国の流行はたいてい1~2年のタイムラグを経てから日本に上陸する。だから2014年には、日本国内においてもソーシャルメディア系のスタートアップの動きが目立つようになるだろうと考える。では、どのようなサービスが登場する余地が日本にはあるかというと、以下のふたつの領域は大きなチャンスがある。

・ミニ動画共有

VineやInstagram同様に、数秒単位のミニ動画をシェアするサービスは、日本人にも受ける可能性が高い。VineやInstagramが日本国内で大きなシェアを得てしまえばチャンスはないわけだが、現状はまだその兆しはない。サービスとしてはつくることがそれほど難しくはないので、クローンサービスを立ち上げていち早く広めてしまえば国内市場を抑えることは不可能ではないと思う。

ただLINEがミニ動画共有機能をサポートする可能性は高いので、やるなら年内に勝負をかけねばならないかもしれない。

→と、書いていたら、早速参入企業があった:「6秒間の動画を友人限定で共有する「ともらっち」--ソーシャルランチ生みの親が新サービス

・インタレストグラフ型&クリエイター向けコミュニティ

つまりはTumblrだ。積極的に自分の作品や興味の対象を画像などのリッチメディアで公開し、ファンを募るというサービスは、Facebookページでもできなくはないが、実はFacebookページは求心力が弱い。

日本国内では従来はAmebloが押さえていた領域だが、Blogのテキスト中心の構造はもはや古臭い。自分が書かないとトラフィックを発生させられないという点も、コメントやトラックバックがインタラクティブとは言いがたい点も良くない。

TumblrはBlogの進化系といえるが、これまで日本国内ではあまり流行ることがなかったが、Twitterでは舌足らずでFacebookでは共有しづらいコンテンツを、リアル社会での人間関係とはリンクしない他者に向けて公開するためのツールとして米国ではBlogに替わり大ブレイクした。日本ではAmebloがBlogベースとはいえアメンバーなどのアカウントサービスを加えることで独自進化した。それがTumblrの本格的な日本進出を妨げていたといえる。

しかし、繰り返すがもはやBlogは時代遅れのプラットフォームである。これ以上Blogベースでの独自進化をさせることは、貧弱なプラットフォームをさまざまな工夫と開発で進化させてきた携帯電話(つまりガラケー)と同じ道へと進むことになる。

viaMdN Interactive

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

小川浩の最近の記事