AppleとFacebookは盛者必衰の理から抜け出せるか?

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす

■ 市場の圧力にビビるApple経営陣

Appleの株価が冴えない。iPhone5の市場投入にも関わらず、値下げしたiPhone4Sの販売を引っ張りすぎ、かつiPadより安いiPad miniがタブレット分野の増収減益を招いたという。

また、iPhoneが生み出したタッチスクリーンによるアイコンと仮想キーボードのUIがコモディティ化したことも、Appleの相対的な評価を下げている。スマートフォンにしてもタブレットにしても、Androidで十分ではないか、という平均的なユーザー層が高価なApple製品を避けてサムスンに流れているという見方があるわけだ。Appleが本当にいまだに神話にふさわしい企業ならば、今頃はもう別の分野を再定義する商品開発が進んでいるはずだし、廉価版iPhoneの噂に右往左往することもないだろうと多くの人は考える。

トヨタはフォルクスワーゲンなどと自動車生産台数世界一を争っている。市場シェアこそが両者の争点であり、最大のKPI(目標達成率を定義する補助的計量基準群)だ。サムスンはいわばスマートフォン市場におけるトヨタであると言っていい。彼らの販売台数はAndroid陣営ではダントツだし、Appleとノキアを合わせたシェアに匹敵する。

しかし、Appleはフォルクスワーゲンではない。彼らはメルセデスやBMW、あるいはポルシェを目指してきたはずだ。そのAppleに対して多くの投資家はフォルクスワーゲンになれと迫っている。その要求にAppleが煮え切らない態度をとるから株価は下がるし、そのプレッシャーにティム・クックが耐えられないのではないかと不安になるAppleファンの心理が市場に悪影響を与えている。

■ ジョブズ不在の影響がついに顕在化?

スティーブ・ジョブズがいてくれたなら、と投資家達もAppleファンも考える。ジョブズが健在であれば「Appleはすぐにまた革新的なイノベーションで新しい市場を切り拓く」「シェアを狙って中途半端製品を出してファンを失望されることは絶対にしない」と強い言葉で我々の不安を払拭してくれただろうと。電話の次は家電や車を再定義してくれる、それがスティーブが創ったAppleだろうと期待する。

それに比べて現在のAppleは、繰り返すが煮え切らない。従来の戦略を貫くだろうとは思っても、下手したらiOSをオープン化してOEM供給を開始してしまうようなことさえしそうに思えてならない。

盛者必衰とはいうが、平氏も平清盛がいなくなるとすぐに烏合の衆になり、源氏との戦いに破れてしまった。一人のリーダーシップが失われたことで企業も国も簡単にひっくり返るのは歴史を見てもよくあることだ。

Appleは株式市場からの圧迫に耐えぬくことでクールな存在であり続けなければならないが、馬耳東風を周囲の声を無視する鈍感さを、スティーブ・ジョブズ同様に持っている人間がどれだけいるか?そして内なる声を形にして、革新的なアイデアを製品開発につなげる先鋭さをスティーブ・ジョブズ同様に持っている人間がどれだけいるか、にかかっている。

■ Facebookも失速?

創業30年をはるかに超える老舗IT企業であるAppleに比べれば、まだまだ新興企業と言えるはずのFacebookもまた、IPO以来株価の低迷に苦しんでいる。日本市場でのユーザー数はmixiを抜き、1500-1600万人を突破したというが、若年層には思うようにシェアを伸ばすことができずにいるようだ。

米国でも最近は高校生以下のユーザーは減っているという。InstagramやTumblr、Snapchat(保存できない写真やテキストのやりとりをするチャットアプリ。FacebookがパクってPokeアプリをリリース)などの比較的シンプルなツールが受けているらしい。日本でもLINEが無料通話とスタンプによるメッセージングサービスを歓迎され、一気に勢力を伸ばしたことに近しいものがある。どちらにしてもティーンエイジャーにはFacebookは難し過ぎるし、オトナが参加しすぎたことで既にクールでもエッジィでもないのだ。

FacebookはAppleとは異なる戦略をとらざるを得ない企業であり、自動車で言えば逆にポルシェであってはならない、トヨタやフォルクスワーゲンよりのシェア重視の企業である。だから世界的にユーザーを増やしていくとともに、さまざまなユーザーニーズに応えなければならない。ポルシェはファミリーカーを作らないが、フォルクスワーゲンはファミリーカーからスポーツカーまですべてを網羅しようとする。同じようにFacebookも、SNSでありゲームのプラットフォームであり無料通話サービスであり、誰とでもつながるメッセージングサービスでなければならない。画像共有というユーザー体験がソーシャルアクティビティの中心であれば、Instagramを法外な金額であっても買収するし、メッセージングサービスが台頭してくれば買収に首を振らないSnapchatを容赦なくパクる。かっこわるかろうがなんだろうが、そうしなければ生き残れないのだ。

そしてトヨタが高級車市場にはトヨタの名前を冠さないレクサスブランドを投入し、フォルクスワーゲンが高級車にはアウディやブガッティ、スポーツカーにはランボルギーニなどの傘下ブランドを、別ブランドとして投入し続けているように、彼らはホールディングカンパニー本体は総合的で、そんなに格好よくなくても安定した大衆企業のイメージを消費者にあたえ、若年層や富裕層には専用のクールなブランドイメージを切り分ける戦略を採択している。これと同じように、今後Facebookもまた多数のソーシャルブランドを持つ総合企業になっていくことが賢明だろう。

Appleにしても、Facebookにしても、2013年は数年後に彼らが隆盛をまだ誇っていられるかどうかの試金石となるさまざま試練に直面する年になりそうだ。