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スタートアップはスマートな馬鹿野郎を欲している。飛び込む角度と姿勢を工夫せよ。

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
新興市場に飛び込むには無謀さと賢さの両立が必要だ。

スタートアップとは急成長を目指すことを宿命づけられた新興企業のことだ。他人資本を入れてIPOもM&Aも考えないというのはあり得ない。

そして、本当の急成長を果たすためには、他人が思ってもみなかった角度で市場参入して、一気呵成に攻めなければならない。それには無謀とも思われる挑戦を平気で行える度胸と、慎重に戦略を考える賢さの両立が要る。

高いところから海面にダイブすることを考えてみよう。腹から落ちれば無駄な水しぶきをたて、腹部を真っ赤にしつつ激痛に苦しむことになるが、ちゃんと指先を鋭く揃えて適度な角度で進水すればきれいに海水に潜り込むことができる。新興市場に参入するということはそういうことだ。

Windows全盛時代に、OS作る奴は馬鹿だと言われたものだ。しかしAppleはiOSでWindowsの存在意義を脅かし、AndroidとChromeが更に参入する余地を作った。それはデスクトップOSというカテゴリーを外れてモバイルOSという新たな領域を作ることに成功したからだ。

そして、AppleがiPhoneを市場に投じたときは、携帯電話市場の成熟度を考えて、Nokiaやモトローラに勝てるわけがないし、Blackberryにさえ追いつくはずがないと考えた識者は笑うほど多かった。しかし、iPhoneは指先で操作するNUIと、Webを誰よりも簡単に使える、というコンセプトをもって先行者を打破した。

Googleの覇権が確立した2000年代、検索サービスに挑む者は(Microsoftは別として)無謀すぎると笑われたものだった。しかし、今ではソーシャル検索やリアルタイム検索を始めとして、さまざまな角度の検索サービスの可能性が示唆されているし、モバイルにおいては検索そのものが今までとは違うユーザー体験に変わりつつある。これもまたモバイルインターネットの台頭によるパラダイムシフトだ。

いま、Facebookが10億ユーザーを集めている。ここに同じような全方位型のメガSNSを作ろうと考えるのは(Google+を別にして)阿呆に違いない。しかし、モバイル上に限ったり、家族や友人、恋人といった特殊かつ限定的な人間関係に絞ったSNSであれば、あるいは実際の人間関係(ソーシャルグラフ)に紐づくものではない趣味嗜好による性別や年齢、国籍などには直接関係のない関心関係(インタレストグラフ)をベースとしたSNSであれば、十分に参入余地がある。むしろFacebookがネット上での我々の存在をパブリック化しているおかげで、セミクローズドで快適な空間を欲するユーザーは増えているのだ。

OSにしてもスマートフォンにしても、検索にしてもSNSにしても、普及度が高まった市場だからこそ、角度を変えてみれば、3D的思考で考えれば一気呵成に参入してシェアを奪える面白い市場はたくさんある。柔軟に考えて、大胆に行動すべし!

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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