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スティーブ・ジョブズ1周忌に際して(前編)

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

2011年10月5日にこの世を去ったスティーブ・ジョブズ。彼の最終決議を得て開発された最後の製品、それがiPhone5だ。

iPhone5は筐体の質感やデザインにおいて、非常に卓越した製品に仕上がっている。史上最速で500万台を売り切ったことに不思議はない。

もちろんiOS6には若干の不安定さもあるし、バッテリーの省電力性能には誰もが不満を唱えている。さらに純正地図アプリの未熟さには世界中のAppleファンでさえ失望を隠せない状況であるが、それでもiPhone5の中長期的な成功は間違いないだろう。

僕が最近ローンチしたセレブ用ソーシャルネットワークのアクセス状況を見ると、

・Windows 39%

・Android 28%

・iOS 23%

・Mac 8%

・その他 2%

というOS分布だった。1ヶ月間で、それなりのアクセス数を得た中での数字だし、同様のサービスを提供しているLittlemonsters.comにおいても、スマートフォンでのアクセスが60%近くだということなので、おおよそ正確な動きであると思っていいだろう。そして、Androidの影響力は(利用率という点であれば)徐々にiOSを圧倒しつつある。

Androidを擁するGoogleとAppleは、現時点で激しい市場獲得戦争の中にあるが、その戦略はかなり異なっている。GoogleはフリーOSとして世界中の機器メーカーにAndroidを提供する。Appleは逆に自社製のハードウェアにしかOSを載せない。

モバイル用として開発された軽量OS、というよりもマウスと物理キーボードを使うGUIから指先や音声(あるいは視線や脳波など)のNUIへと進化することでモバイルガジェットのみならず、世界中のありとあらゆる電子機器のOSになり得るのがAndroidでありiOSだ。10年以内には家電はおろか、自動車を含む交通機関やATM、スマートハウスなどまでが、この軽量OSによって制御されていくことは疑いない。

Appleは自社製ハードウェアと自社OSの組み合わせを頑に守ることで、Apple製ハードウェアを”特別な存在”として、大きな利益率を享受できるようになった。しかしiOSで自動車を制御するには自動車を作らなければならないということになるので、そうそうに市場参入はできない。Googleはそもそも無償でOSを配るから、そこから利益を得ることはないが、世界中の電子機器にAndroidを使ってもらえる。

Amazonや楽天が電子書籍リーダーを投入し、それをiPadなどと同じカテゴリーのスマートタブレットへと進化させようとしているが、AppleとGoogleが見ている世界は既に更にその先に行っている。Appleが音声入力UIであるSiriに投資し、さらにダメアプリ扱いされることを承知の上でGoogleマップから自社製地図アプリへと切り替えたのも、地図を使う=(自動車だけでなくあらゆる移動体のための)ナビシステムを必要とするさまざまなハードウェアが次の戦場になることを熟知しているからだ。Siriは電話用ではなく、車の中や家の中で(誰にも不審な目で見られないクローズドな空間で)使うことを想定しているに違いない。ジョブズがiPhone5に寄せた最期の期待は、iPhoneが世界中のガジェットのリモコンになることだったと僕は考える。つまりiOSはiPhoneを介してさまざまなシステムと間接的に連動していくことになる。

そしてGoogleはもっと直接だ。Android(本当はその先のChrome OS)が全世界のデバイスのプラットフォームに搭載されていくように仕向けていく。

この戦略の違いから、GoogleというかAndroid陣営が(かつてMicrosoftがWindowsでしたように)Appleを市場から駆逐する、もしくは弱小勢力へと追いやるという見方をする専門家の方が多いようだが、果たしてそうなるだろうか?

僕の見方は、次回以降に詳しく述べることにする。

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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