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想定外だった? オホーツク海高気圧の影響

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
最近20日間の降水量の平年比(気象庁ホームページより)

雨が多い7月

 梅雨入り後しばらく、南の海上で鳴りを潜めていた梅雨前線ですが、7月はほとんど毎日、日本列島に停滞し、各地に大雨をもたらしました。東北地方も例外ではなく、この20日の雨量は、平年の100~250%ほどと、非常に雨の多い7月になっています。

 仙台を例にとると、最近20日間の雨量は、242.0ミリで、平年の179%ほど。7月に降水が観測されなかったのは、わずか1日だけです(7月18日時点)。それに伴って日照時間も少なく、最近20日間の日照時間は、平年の36%にとどまっています。ただ、雨が多くなることは、以前から長期予報で指摘されており、これは想定内といえば想定内です。

想定外?の「オホーツク海高気圧」

 一つ想定外といえるのが、オホーツク海高気圧の出現です。梅雨時にはよく現れることがあるため、そういった意味では想定内ですが、これがいつ出現するかは、特に3か月予報などの長期予報では、予測することが困難です。

 そのオホーツク海高気圧が、ここに来て顕著になってきています。この高気圧は、東北地方の太平洋側に冷たく湿った空気を送り込みます。強い雨こそ降らないものの、どんよりと曇って、気温も低くなります。これが出現した今週、仙台では、最高気温が20℃に届かない日が3日間もあり、外出するにも長袖・上着が手放せない毎日でした。西日本にお住まいの方からすると、にわかに信じがたいかもしれませんが、これが東北の梅雨の実態です。

7月16日の天気図 仙台の最高気温は19℃だった(ウェザーマップ提供)
7月16日の天気図 仙台の最高気温は19℃だった(ウェザーマップ提供)

7月の低温はイネの生育に影響

 7月は、イネの幼穂が作られる「幼穂形成期」、花粉が作られる「減数分裂期」にあたり、イネが育つにあたって非常に大事な時期です。なかでも「減数分裂期」は最も低温に弱いとされ、平均気温20℃以下が数日続くようなことがあると、花粉がうまく作られず、不稔の原因となります。

 今まさにその時期に入っているわけですが、来週にかけて再びオホーツク海高気圧の出現が予想されます。きょう19日は一時的に晴れ間が出て、気温は上がる予想ですが、来週はまた曇りや雨の日が多くなり、気温も平年より低めで経過する可能性があります。状況を確認しながら、深水管理をするなど、適切な対策をとっていただきたいと思います。

仙台の週間予報(18日17時 気象庁発表)
仙台の週間予報(18日17時 気象庁発表)
気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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