「目が乾く感じがすればドライアイ」「目が乾く感じがしなければドライアイではない」。そう思っていないでしょうか?

 名前のイメージから目が乾くという症状ばかり着目されるドライアイ。ただ、「隠れドライアイ」とも言える、乾いた自覚がないドライアイが多くあります。そのことを知らないと原因不明の不調をかかえたり、生産性を著しく落としてしまったりします。そこで冬場に多いドライアイのチェック法からセルフケアまで、一挙にご紹介したいと思います。

〇12秒まばたきを我慢できない人が要注意の理由

 まず、ドライアイかどうかを見分けるには、12秒まばたきを我慢できるかどうか

?ということが一つのポイントになります。

 ドライアイは「涙の量が足りなくて目の乾燥が起こる」と思われていますが、そうでもありません。むしろ「涙の質が悪くて目の乾燥が起こる」ことの方が多いのです。涙の質と言われてもピンと来ないかもしれません。涙には、乾燥しやすい涙と乾燥しにくい涙があるのです。

 涙というのは水だけではなくて、油やムチンといった、涙そのものが簡単に乾かないようにする物質も含まれています。これらの物質が適切に乾燥を防いでくれないと、涙は出ているのだがすぐに乾燥してしまうという状態を引き起こします。冬場で皮膚が乾燥している時に、化粧水だけではなくて乳液などをあわせて塗ると乾燥しにくい、という事と似ています。

 簡単に乾いてしまう涙では、目を開け続けているのがつらくなります。一方でなかなか涙が乾かなければ、しっかりと目を開いたママでいられるのです。だからこそ、目を開けて何秒我慢できるか?ということが涙の質を見る一つの指標になるのです。

 順天堂大学の研究ではまばたきを我慢できる時間が12.4秒以下の場合は、感度82.5%、特異度51.0%でドライアイであるという研究も出ています。※

12秒を一つの指標としてそれ以下でまばたきをしたくなってしまう場合は、涙は出ていても質が悪いと言えるのです。

 ではドライアイは乾燥感が症状なのではないのか?私は乾く感じはしないだけれども。という方も多いです。

〇乾燥だけがドライアイの症状ではない

 また、乾燥感だけがドライライの症状かというとそうではありません。

〇涙がでる

〇目がかすむ

〇まぶしい

〇目やにが出る

〇目が疲れる

〇充血する

 これら、色々な理由で多彩な症状を呈するのがドライアイです。

「涙がでる」というのは目が潤っていて、いかにもドライアイの症状ではなさそうです。特に冬場になると、風が当たると涙が多く出る、という人もいます。

 本来、涙は目を守るという機能をもっています。適切に目の表面に涙がないと、風が吹くといったちょっとした刺激で、目に傷がつきます。その傷を治そうとして、涙を分泌してくれるのです。つまりドライアイなのに、涙が出るのです。

 目に傷がつくことで、光が散乱するようになり、眩しさを感じる人もいます。乾燥により見にくくなり疲れるという症状や、乾燥により傷がついて治そうとして充血するという事もあります。また涙が適切に分泌されていないので、目やにが溜まりやすく不快感などを感じてしまう事もあります。このように「隠れドライアイ」と言えるような、乾燥ではない症状を訴える人が多いのです。

 また、涙の質が悪いと視力は良くても乾いてくるので見にくくなります。これを「実用視力の低下」といい、私たちの生産性を低下させることもわかっています。

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〇生産性が48.7万円低下してしまう理由

 ドライアイになると視力が良くても見にくくなる。この実用視力の低下とは何でしょうか?普通に測る視力はいわば瞬間視力と言え、一瞬の合間に上とか右とか下とか判断します。けれども現実的には、目を使うのは一瞬ではありません。あなたも「本を読んでいたらだんだん見にくくなってきた」という経験はないでしょうか?本であれ、パソコンであれ、スマホであれ、しばらく見続けていると見にくくなってくると感じてしまうのです。このしばらく目を使っている状態での視力を、実用的な視力なので実用視力といいます。ドライアイがあるとこの実用視力が低下します。すると視力は良いけれども「実用視力」が悪く見にくい、疲れやすいという事が起きます。

 現代の仕事、特にオフィスワークなどを主とする場合は、何かを見るという作業の重要性が増しています。営業であれ、事務であれ目を使います。このときよく見えなくなってしまえば、疲労をもたらし、効率を低下させます。さらには眼精疲労にもなります。結果として年間の生産性が48.7万円低下するという研究もあります。※※

 ではどのぐらいの人が実際ドライアイなのでしょうか?パソコン・スマホを使う事の多いオフィスワーカーの65%がドライアイ又はその疑い あるというように言われています。※※※

 つまり半数以上の人がドライアイです。にもかかわらず自分がドライアイであることを自覚している事は少なく、「隠れドライアイ」の状態により不調を感じたり、生産性を低下させてしまっていたりします。このことは、個人や社会にとっても非常にもったいないと言えます。では自分でできるセルフケアなどは何があるのでしょうか?

〇目薬しても治らないドライアイ

 もちろん市販の目薬も有効な手段です。しかし、市販の目薬をしてそれでも目の渇きや疲れなど不調が収まらない、だから「自分はドライアイではない」と思うのは待ってほしいです。つい「目が乾いているから目薬さえすれば改善するはず」と思ってしまいます。けれどもドライアイは涙の質が問題であることの方が多いわけで、目薬をしてもそれは一時しのぎです。そのため市販の点眼薬をしたからといってドライアイが治ってしまうというのは非常に難しいと言えます。

 確かに現在は昔と比較すると、ドライアイに使える目薬が市販のものでも増えています。スイッチOTCといって、かつては医療機関でしか使えなかったヒアルロン酸の点眼薬を、今では薬局でも買う事ができます。けれども現在の眼科の治療では、それ以上に涙の質を改善するようなムチンという成分に着目した点眼薬が良く使われています。つまりは市販薬で改善しなくても、病院での処方薬なら改善するという事が往々にしてあるのです。

 ただ、生活や体質などいよってドライアイになってしまうケースはかなり多く、その場合はいくら点眼しても完全に状態が良くなるというわけではなく、症状を和らげる、症状を落ち着かせるという方向に持っていくのが、現実的な所です。そのためセルうケアをすることが大切になってきます。

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〇ドライアイの3つの「コン」

 突然ですが、眼科界隈では、ドライアイを悪化させる3つの「コン」があるといわれています。「エアコン・パソコン・コンタクト」です(パソコンはスマートフォンも含みます)。

 まず、乾燥によりドライアイを悪化させるのが「エアコン」です。

 次に、使用中にまばたきの回数を減らしてしまうのが「パソコン」です。通常1分間に20回程度まばたきするのがパソコンを使う時は5回程度と言われています。※※※※

 つまりそれだけ目を休めることができないのです。ちなみに、読書の場合は10回程度で、パソコンの方がまばたきは少なくなります。パソコンのモニターは常に点滅しており、私たちは無意識にまばたきの回数を減らすことで、目を凝らして見ているものと思われます。

 最後に、「コンタクト」は使用によって目の水分が奪われることでドライアイを悪化させます。

 以上3つの「コン」に対応して、セルフケアで対応していくことがドライアイを悪化させない上でも重要になってきます。

〇3つの「コン」への対処法

 これら3つの「コン」それぞれ対処法があります。

 エアコンを使用する時は、加湿器を併用するのが効果的です。加湿器がない場合は部屋にぬれたタオルをほしたり、霧吹きで湿度を保ったりする方法があります。また、エアコンの代わりにオイルヒーターや石油ストーブ・ガスストーブなどを使用するとよりよいです。オイルヒーターは湿度の低下を招きません。石油ストーブ・ガスストーブは空気の入れ替えなどを必要とするものの、燃料が燃える時に水分を発生させ、加湿効果をもたらします。

 次に、コンタクトの場合は使用時間を短くしたり、使用回数を減らしたりするという事が重要になります。またコンタクトレンズの種類によっては乾燥しにくいものもあり、そのようなコンタクトレンズを使用するのもよい方法です。

 パソコンを使用する場合は、まばたきが減ってしまうので眼精疲労の原因になります。これを解消するためにも、60分に1回は休みを入れる必要があります。できれば、まばたきを意識的にして目をうるおすことが必要になります。点眼薬などをもちいて乾燥を防ぐ事も必要です。

 したセルフケアを行うことで、目をドライアイの症状から守ることができるでしょう。

 これからの季節肌だけではなく目も乾燥します。ついついおざなりになりがちな目のケアを普段から気を付けて乾燥しない目を作っていただければと思います。

Inomata T et al:Maximum blink interval is associated with tear film breakup time: A new simple, screening test for dry eye disease Sci Rep. 2018 ;8(1):13443

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Uchino M et al:

Dry Eye Disease and Work Productivity Loss in Visual Display Users: The Osaka Study

American Journal of Ophthalmology. 2014 ;157(2):294-300

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Uchino M et al:Prevalence of Dry Eye Disease and its Risk Factors in Visual Display Terminal Users:The Osaka Study American Journal of Ophthalmology. 2013;156(4):759-766.

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佐藤直樹ら: VDT作業とドライアイの関係  あたらしい眼科 1992;9: 2103-2106

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】