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「ハイリスク・ハイリターン」な金融商品が欲しいか否か、その実情をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
「ハイリスク・ハイリターン」な金融商品はギャンブルのようなもの?(写真:イメージマート)

金融商品には「絶対儲かる」ものは無い。リスク(マイナスの結果を生み出す可能性)の大小と、そのリスク込みの商品を選ぶことで得られるかもしれないリターン(利益、収益)のバランスを考え、購入者自身で選択することができる(「買わない」も選択肢の一つ)。その特性が大きく表れている「ハイリスク・ハイリターン」な金融商品の選択の是非について、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。

今件項目では「元本(投入した資産)割れを起こす可能性があるが、収益性が高いと見込まれる金融商品」、つまり「損をするかもしれないが大きく儲けられる可能性がある金融商品」について、今後における購入・保有意欲を尋ねている。例えば株式、投資信託が該当する(預貯金などは該当しない)。昨今では仮想通貨も該当するだろうか。なお2019年までは設問において単純に「今後」ではなく「今後、1~2年の間に」との文言が用いられており、ニュアンスが微妙に異なることに注意が必要となる。

直近の2023年の調査結果では、保有そのものを希望しない人が単身者で56.7%、二人以上世帯で51.8%に達している。過半数はリスクを極力避ける傾向が見受けられる。

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(2023年)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(2023年)

日本では諸外国と比べて(特に金融方面で)リスクを敬遠する傾向が強い。正確には「リスクとリターンの正しい関係」を習得していない雰囲気がある。あるいは強固な慎重さを持っている、と表現すべきか(その知識不足から逆に、自分が一度「儲かるかも」と思った・思わされた対象へは「絶対に儲かる」との信奉的な心情を抱きやすい傾向もあるように思える)。

また世帯種類別では単身世帯の方がリスクを強く避ける傾向がある。自分自身以外の守るべきものである「家族」があることや、リスクが生じた時に自分以外に迷惑がかかる対象が多いとの気負いがあるからだと考えれば、二人以上世帯の方がリスクを避ける傾向があるように思われるのだが。一般的には二人以上世帯の方が可処分所得が多くなるため、ハイリスク・ハイリターン金融商品に手を付けやすくなるのだろうか。

今調査項目の結果は2007年以降の値が取得可能。それらをまとめてグラフ化したのが次の図。単身・二人以上双方の世帯で、少しずつ反動を経ながらリスク回避傾向が強まっていたが、この数年はわずかずつだが状況が変化しているようすが確認できる。

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(単身世帯)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(単身世帯)

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(二人以上世帯)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(二人以上世帯)

以前はリスクへ立ち向かう勢いが二人以上世帯よりも強かった単身世帯の方が、リスク回避へと流れて行く動きも大きなものとなっていた。2007年といえば直近の金融危機…サブプライムローンショックに始まりリーマンショックに続く、長きにわたる不景気時代…が体現化した年でもあり、「リスクを避けよう」との考えが支配的になるのも理解はできる。

単身・二人以上世帯ともリスク回避の動きはより強固なものとなっていたが、双方とも2012年を底値に、少しずつだが再びリスクを取りリターンを求める動きに転じていた。これは株価動向や景況感の変化によるものと考えれば道理は通る。

もっとも単身世帯は積極的な保有傾向が強まりを見せる中、積極保有希望と消極保有希望を合わせた保有希望派全体に変わりは無かった。二人以上世帯は積極保有希望者に変化はほとんど無く、消極保有希望者が漸増していた。景況感の回復の中でも、より積極姿勢を見せる単身世帯と、少しずつ、慎重に歩みを示す二人以上世帯。それぞれの根底にあるリスク金融商品への姿勢が表れており、非常に興味深い。

2016年以降は単身・二人以上世帯双方ともに、保有しない派が少しずつ減る動きがある。それとともに単身世帯では積極保有希望と消極保有希望双方が、二人以上世帯では消極保有希望が増加する動きを示している。

2020年以降は単身・二人以上世帯双方ともに積極・消極ともに保有希望派の割合が増えている。これは上記で触れている通り、設問の文言が2019年までは「今後、1-2年の間に」と期間限定だったのに対し、2020年からは単純に「今後」とだけになったためだろう。特に二人以上世帯における増加が著しい。

また二人以上世帯に限れば、2020年までが訪問と郵送の複合・選択式だったのに対し、2021年以降はインターネットモニター調査法に変わったため(単身世帯は以前からインターネットモニター調査法)、積極・消極ともに保有希望派の選択肢を選びやすくなったのかもしれない。ただし保有希望派の大幅な増加傾向は2020年から生じているため、調査方法の変更のみが増加の理由とは考えにくい次第ではある。

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※家計の金融行動に関する世論調査

直近分となる2023年分は世帯主が20歳以上80歳未満の世帯に対しインターネットモニター調査法で、2023年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は単身世帯が2500世帯、二人以上世帯が5000世帯。過去の調査も同様の方式で行われているが、二人以上世帯では2019年分以前の調査は訪問と郵送の複合・選択式、2020年では郵送調査式だった。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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