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諸外国の人達はどの媒体でニュースを目にしているのだろうか(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
ニュースを取得するメディアは多々あるが(提供:イメージマート)

諸国はテレビ経由が最多だがタイでは

日々生じるさまざまな出来事の内容を迅速に取得し正しい判断をするために、人々は多様な手段を使ってニュースを確認する。インターネットの普及に伴い、ニュースの取得スタイルも大きな変化を遂げている。今回は新聞通信調査会が2024年2月に発表した、アメリカ合衆国やイギリス、フランス、韓国、タイへのメディアに関する世論調査「諸外国における対日メディア世論調査」(※)の報告書の内容から、諸国におけるニュース取得の利用媒体の違いを見ていくことにする。

次に示すのは各国の人達がニュースを取得する際に、どのような媒体を用いているかを複数回答で尋ねた結果。インターネット経由調査ではないので媒体によるバイアスは生じない。ニュースを取得する意気込みなどにも左右されるが、各国の情報取得の方法論、実情を推し量るよい指標となる。

↑ ニュース取得の利用媒体(複数回答)(2023年度)
↑ ニュース取得の利用媒体(複数回答)(2023年度)

おおよその国でテレビが高い値を示しており、今でも情報取得の普遍的なツールとしてテレビが有効であることを改めて認識させる結果となっている。アメリカ合衆国、イギリス、フランス、韓国ではトップの値。それらの国のうちアメリカ合衆国と韓国では、テレビに続くのはインターネットのニュースサイト、そしてSNS(ソーシャルメディア)のような、インターネットを用いたサービスとなっており、インターネットによる情報取得が当たり前となりつつある状況がうかがい知れる。他方、イギリスやフランスでは、テレビの次に新聞がついているのが興味深いところ。

そのインターネットサービスだが、SNSと比較すると、アメリカ合衆国や韓国ではインターネットのニュースサイトの値の方が高く、SNSはそれと比べると低め。昨今のフェイクニュース問題が影響しているのかもしれない。他方イギリスやフランス、そしてタイではインターネットのニュースサイトよりもSNSの方が高い値となっている。タイではテレビの値すら抜き、媒体内では最大の値を示している。タイのインターネットへの傾注度の高さが見て取れる。

新聞やラジオ、雑誌などは低め、特に韓国やタイでは低さが目立つ形。しかしフランスでは新聞やラジオも6割台の値を示しており、テレビに次ぐ値となっている(テレビ、新聞、ラジオの順)。フランスではニュース取得の意欲は他国よりも高く、多方面で取得する傾向があるようだ。イギリスでも新聞の値は高く、テレビに次ぐものとなっているのも印象的。

テレビとインターネットニュースの詳しい実情

報告書ではそれぞれの媒体に関して属性別の値も公開している。そこでテレビとインターネットニュースに限るが、その内情を見ていく。

まずはテレビ。

↑ ニュース取得の利用媒体(複数回答、テレビ、属性別)(2023年度)
↑ ニュース取得の利用媒体(複数回答、テレビ、属性別)(2023年度)

フランスがとても高くどの属性も少なくとも5割以上、20~30代を除けば6割以上の値を示している。タイもそれに続く値を示しているが、20代ではやや値が落ちる(5割を切る)。

男女別では男性よりも女性、年齢階層別では中年層以降が高めに出るのは多くの国に共通する傾向で、テレビの実情を推し量れるよい資料となる値の動きを示している。70歳はすべての国で8割以上の値となっている。

続いてインターネットのニュースサイト。

↑ ニュース取得の利用媒体(複数回答、インターネットのニュースサイト、属性別)(2023年度)
↑ ニュース取得の利用媒体(複数回答、インターネットのニュースサイト、属性別)(2023年度)

インターネットのニュースサイトではテレビとおおよそ逆の傾向が出ているのは注目に値する。男女別では男性が、年齢階層別では若年層が高い値を示す傾向がある。一部の国で10代において低めの値が出るのは、利用機会が得られていない、興味がわいていないからだろうか(テレビは多分に受動的に取得する機会があるが、ネットニュースでは原則的に能動的でないと取得は不可能)。50代や60代から値が小さくなるのは、現役世代が仕事場で利用するケースが多いからだろうか。その仮説で考えると、アメリカ合衆国で60代でも6割台と現役世代とほぼ同じ、70歳以上でも5割近くを示しているのは興味深い。

直近年度では調査そのものが実施できずに非公開値となってしまったが、前年度の調査結果の限りでは、中国は男女・年齢階層を問わず高い値が維持されていた(70歳以上はやや落ちるが、それでも7割台)。今件調査は中国では都市部限定とはいえ、インターネット経由ではなく面接調査で実施されており、メディアによるバイアスが存在しないことを思い返せば、大いに注目すべき結果だった。それゆえに、直近年度で中国での調査がかなわなかったのは残念でならない。

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※諸外国における対日メディア世論調査

今調査はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、韓国、タイに対し、2023年11月から12月に行われたもので、アメリカ合衆国は電話調査とウェブ調査の併用、イギリス・フランス・韓国は電話調査、タイは面接調査で実施されている。調査地域はタイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件。グラフの年数表記は調査結果の発表年度で統一している。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されたが、2014年度分は中国において質問そのものができなかった項目が複数ある。

中国は毎年調査対象国ではあるが、2023年度分の調査では一切値が出ておらず、その理由について「今年度は中国での調査ができなくなりました。中国の他の調査機関にも依頼しましたが、いずれも現在の国内状況では、国外から依頼された世論調査を行うことは難しいとの回答でした」との説明がある。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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