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尖閣諸島に何で関心を持った? 「テレビ・ラジオ」が88.9%(2023年発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
尖閣諸島問題はさまざまな方法で告知が行われているが(写真:第11管区海上保安本部/ロイター/アフロ)

尖閣諸島への関心はテレビやラジオ経由が圧倒的

内閣府は2023年12月、尖閣諸島に関する世論調査(※)の結果概要を発表した。その公開資料から、尖閣諸島への関心のきっかけとなった経路について確認する。

尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部であり、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定しており、歴史的にも国際法上も疑うことなく、日本固有の領土である。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。

なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(および周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。

↑ 尖閣諸島の位置(外務省・日本の領土をめぐる情勢内尖閣諸島の専用ページより)
↑ 尖閣諸島の位置(外務省・日本の領土をめぐる情勢内尖閣諸島の専用ページより)

その尖閣諸島に対する関心がある人は、今調査対象母集団では78.3%に達している。

↑ 「尖閣諸島」について関心があるか
↑ 「尖閣諸島」について関心があるか

この「関心がある人」に、どのような経路で関心を持つに至ったかを尋ねた結果が次のグラフ。圧倒的に「テレビ・ラジオ」が多く88.9%、次いで「新聞」が47.0%。いわゆる4マス経由で知った人が多数におよんでいる。なお2019年までは「関心がある人」ではなく「知っていた人」に対する質問で、認知経路を尋ねているため、2019年までと2023年以降では連続性は無い。

↑ 「尖閣諸島」の関心経路(複数回答、関心がある人限定)
↑ 「尖閣諸島」の関心経路(複数回答、関心がある人限定)

同じ4マスでも「テレビ・ラジオ」のような電波媒体系の効果は大きく、紙媒体系の「新聞」は小さなものとなっている。また同じ紙媒体系でも報道色の薄い「雑誌・書籍」は、ひときわ回答の値が低い。特に「認知経路」だった2019年までは10%強だったのに、2023年に「関心経路」になると4.8%にまで急落する実情を見るに、「雑誌・書籍」は言葉通り、読まれるだけにとどまってしまう質の内容でしかないと解釈できてしまう。

もっともこれは雑誌や書籍の場合には、掲載される機会そのものが少ないのに加え、記事掲載誌がある程度絞られてしまい、「他の記事に合わせてついでに」との機会があまりないのが原因だと考えられる(例えば週刊漫画雑誌に、いきなり尖閣諸島問題の特集記事が何十ページにもわたり掲載されれば、よほど上手い切り口でない限り、違和感を覚える人が多数に上るはずだ)。一方テレビやラジオ、新聞の場合は、尖閣諸島問題そのものだけを視聴するのではなく、全般的に利用する中で、併せて見聞きして知り、関心を持つようになることが想定される。

インターネット関連の情報は16.4%、政府のインターネット情報にいたっては3.6%でしかない。解説しているサイトが比較的少ないことも一因だが、インターネットの情報はあまり公知には役立っていない現状が再確認できる。

今後の啓蒙にも期待がかかるテレビ

テレビやラジオ、新聞経由で関心を持った人が多いこともあり、今後の啓蒙に求められる取り組み方法においても、テレビや新聞に対する期待は大きい。

↑ 「尖閣諸島」への関心を深めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)
↑ 「尖閣諸島」への関心を深めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)

「テレビ・ラジオ番組や新聞を利用した詳細な情報提供」を期待する声は3/4超。見方を変えると、現状の広報・放送量では啓蒙としてまだ足りない、さらに質・量ともに必要であるとの認識が強いと解釈ができる。

興味深いのは「領土・主権展示館の周知や内容・イベントの充実」を求める声が5割近くあること。関心経路としての「領土・主権展示館」は1.2%のみだったが、資料がしっかりと集められた上で一覧できる、領土・主権展示館への需要はかなり大きい。

需要の大きさといえば「ウェブサイトやSNSによる広報」の期待も高く、37.4%(2017年までこの設問は「見やすさ・分かりやすさを重視したウェブサイトの開設」だった)。インターネット経由で関心を持った人が1割台でしかなかっただけに、適切で分かりやすく、ハードルが低いタイプの専用サイトの開設や運用、SNSによる(公的な)情報発信を望む声は強い。

今リリースには調査目的として「尖閣諸島に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とする」との文言が確認できる。今回の項目に関しては、この言葉通り、積極的かつ正しい方向性で「把握」して、今後に活かしてほしいものである。

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※尖閣諸島に関する世論調査

2023年9月7日から10月15日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は1649人。2014年までの調査では20歳以上を対象としていたのに対し、2017年からは18歳以上を対象としているため、2014年分までと2017年分以降との間に厳密な連続性は無いことに注意が必要。また2019年調査までは個別面接聴取法を用いていたが、2023年以降は郵送法で実施しているため、2019年までと2023年以降との間に厳密な連続性は無い。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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