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1日約253箱…コンビニでは1日に何箱たばこが売れているのかをさぐる(上)…概算編

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
たばこは今でもコンビニの主要販売品。どれほど売れているのか(筆者撮影)

全売上に占めるたばこの割合は28.6%

最近は値上げや健康志向を受けて勢いは落ちているものの、たばこがコンビニにおける主要商品の一つには違いない。では実際に店舗あたりでどれほど売れているのだろうか。大手コンビニの一つであるローソンの統合報告書による公開値から検証する。

ローソンの統合報告書の最新版ではたばこの売上比率に関して「たばこの販売構成比は28.6%」と明記されている。この売上額は6279億円。

↑ 商品群別売上高構成比率(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)
↑ 商品群別売上高構成比率(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)

↑ 商品群別売上高(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)(億円)
↑ 商品群別売上高(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)(億円)

少なくとも年ベースでは売上をかさ上げし、その伸び率は他商品区分と比べて高い領域で推移。結果として全売上に占めるシェアは伸びつつあった。

ただし2013年(ローソンでは2月末締めのため、今件グラフにおける各年は、その年の2月末までの値。マイナス1年の年度の値でもある。例えば2013年なら2012年3月から2013年2月までの2012年度)以降になると、各年の報告書では「たばこのセールスが減少している」などの表記が見られ、たばこの販売「数」の減少が生じていることが確認できる(2013年から2014年にかけての減少はグラフ注記にもある通り取得値対象の変更によるもの)。

2017年以降は再びわずかながら増加を示しているが、これは加熱式たばこの盛況ぶりによるところが大きい。また、店舗数が増加していることも小さからぬ要因だろう。そしてたばこの相次ぐ値上げによるたばこ単価の上昇も一因ではある。

1日1店舗でどれほどたばこが売れているのか

「たばこの売上は全体の28.6%」。この値が判明していれば、あとは1店舗あたりの1日平均売上を確認することで、平均的な店舗における「たばこの日次販売額(平均日販)」が計算できる。そしてたばこの平均単価は約590.0円なので(代表的な銘柄のメビウスとセブンスターの価格から月割りで算出)その金額で割り算をすれば「どれだけの個数が売れたのか」も(概算ではあるが)把握できる。

「平均日販」こと1日の店舗単位での平均売上は、統合報告書ではなく決算短信の補足資料中に表記を見つけることができる。それによると2022年度(上記グラフでは2023年に該当)は全店で52万2000円(「売上および商品の状況(国内コンビニエンスストア)」の「平均日販」から取得)。ちなみに客数は663人/日、客単価は788円/人。

よって、1店舗あたりの1日のたばこ販売額と箱数は、

・52万2000円×28.6%=14万9292円(/日)

・14万9292円÷590.0円=253.0箱(/日)

となり、1日に約253箱のたばこが売れている計算になる。

仮に販売箱数の約半分がカートン買いで、残りの半分はすべて1人が2箱の形で買われたとすると、(253÷2÷10)+(253÷2÷2)=75.9人となり、コンビニ(今件ではローソンだが)の1日の来場客数663人のうち1割強ほどが、たばこ購入による来店となる。売上だけでなく、来店機会の観点でも「たばこ」がコンビニを支えている実態が認識できる値である。

ここ数年の試算結果を確認すると次の通りとなるが、たばこ値上げの影響が出る以前から、たばこの販売における勢いが衰えているのが確認できる(2014年分から計算の上での指標が単体のものとなったため、グラフの上でイレギュラーが生じている)。

ただし2021年以降は新型コロナウイルス流行の影響で全体としての来店客数が大幅に減っており、それと比べるとたばこ購入を主目的としている来店客はさほどの減少が生じなかったようで、結果として来店客数全体に占めるたばこ購入起因の来店客数率は持ち直す結果となった。

↑ コンビニでのたばこ販売動向(ローソン)
↑ コンビニでのたばこ販売動向(ローソン)

今後もたばこ価格は値上げされるだろう。健康志向によるたばこ忌避の動きも強まりを見せており、売上・購入者のさらなる減少は容易に想像できる。加熱式たばこの盛況ぶりはたばこ全体の売上を後押ししているが、これもたばこ税の引き上げで歩みを止めてしまう可能性が高い。コンビニ各社がプライベートブランドのスイーツや惣菜、ドリップコーヒー、ドーナツなど、汎用的で来店機会を生み出しやすい商品開発に熱意を払っているのも、十分理解できる次第である。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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