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全局視聴率下落…主要テレビ局の直近視聴率実情(2023年3月期下期・通期)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
家族団らんに欠かせない存在のテレビ。その視聴率は(写真:アフロ)

全日はテレ朝、プライムもテレ朝がトップ

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が(世帯)視聴率。キー局における最新となる2023年3月期(2022年4月~2023年3月)における下期、そして通期の視聴率を確認する。

各種データはTBSホールディングス・決算説明会資料集ページ上で発表された「2022年度(2023年3月期)決算説明会」などからのもの。「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、よい機会でもあるので合わせてグラフに収める。

なお多くの局の発表資料ではここ数年の間に、HUT(世帯視聴率、Households Using Television)ではなくPUT(個人視聴率、Persons Using Television)を用いるようになったが、連続性を鑑み今記事では引き続きHUTを用いる。以後の記事内表記・グラフ内表記も断りがない限り「視聴率」は「世帯視聴率」を意味する。

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2023年3月期・下期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2023年3月期・下期)

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2023年3月期・通期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2023年3月期・通期)

下期動向について見ていくと、テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているものの、他の4局と比べれば放送エリアの問題や放送内容の特異性の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが主要キー局では視聴率が一番低迷している。これは同年上期から変わらない。数年前まではフジテレビとTBSの立ち位置が逆だったことを思い返せば、フジテレビの凋落ぶりがよく分かる。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19~22時)とプライムタイム(19~23時)。その時間帯で10%以上の値を示しているのは、テレビ朝日(ゴールデンタイム、プライムタイム)のみ。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が大きいのが目にとまる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22~23時の夜間における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっているのが分かる。もっともこれは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方がない話ではある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見るとトップはテレビ朝日、次いで日本テレビ、NHK、TBS、フジテレビの順。プライムタイムで比較すると、トップにはテレビ朝日、次いで日本テレビ、NHK、TBS、フジテレビが収まることになる。ゴールデンタイムとプライムタイムとの間で、各局の視聴率の順位に違いはない。上位陣が競り合っている程度。

他方、それぞれの局のゴールデンタイムとプライムタイムの視聴率を比較すると、普通ならばプライムタイムの方が低い値を示すはずなのだが(比較的夜中の時間帯の22~23時を含むため)、テレビ朝日とTBS、フジテレビはゴールデンタイムとプライムタイムで同じ値となっている。これは22時から23時の時間帯で放送される番組の人気が影響を与えていると見てよい。具体的にはテレビ朝日ならば同局の「報道ステーション」がプライムタイムの値をけん引しているのだろう。

前年同期からの変化を確認

通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次の通りになる。比較対象は当然、前年の2022年3月期通期のもの。

↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2023年3月期・通期)
↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2023年3月期・通期)

すべての局のすべての時間帯で前年同期比がマイナス。しかもおおよその局で全日よりもゴールデンタイムやプライムタイムの方が下げ幅が大きいことから、テレビがよく視聴される夜の時間帯で視聴者が離れている状況が確認できる。特に日本テレビ、TBS、テレビ朝日では、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が下げ幅が大きくなっているのが気になるところ。23時ぐらいまで放送するタイプのドラマなどの集客力が落ちたのだろうか。

各局の決算報告書や補足資料などを確認すると、新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナへの侵略戦争とそれを受けての物価高の影響で経営的には厳しい状態が続くとする一方、番組制作費を上乗せする局が多々見られる。また比較的堅調だったインターネット部門や通販部門へのさらなる注力だけでなく、組織改革や部局の再編・新設なども含めた、テレビ番組との連動性をこれまで以上に高める施策を打ち出す局も見受けられる。さらにはメタバース事業を立ち上げる局も確認できる。

新型コロナウイルスの流行などの苦境が、テレビ番組・放送にどのような変化をもたらすのか。そしてその動きは視聴率にいかなる影響をおよぼすのか。注意深く見守りたいところではある。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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