Yahoo!ニュース

「現状維持」「自衛隊のみで日本防衛」「撤回し自衛隊も縮小か廃止」安保の今後の在り方への意見

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
日米安保は維持、それとも…日本の安全を守るための選択肢は?(提供:U.S. Navy/アフロ)

内閣府が2023年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)の結果報告書によれば、日米安保が日本の平和と安全に寄与すると考えている人は漸増している。それでは日米安保以外に、日本の安全を守るために選択されるべき選択肢はあるのだろうか。

「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」、通常は「日米安全保障条約」「日米安保」と呼ばれる日米間の条約は、両国の同盟関係の根幹となる条約として知られている。その日米安保について、「日本の」平和と安全に役立っているか否かを5段階評価で聞いたところ、直近年となる2022年では「役立っている」「どちらかといえば役立っている」を合わせた肯定派は89.7%を占める結果となった。逆に否定派(「どちらかといえば役立っていない」「役立っていない」の合計)は9.1%に過ぎない。経年推移ではおおむね肯定派が増加する傾向にある。

↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか
↑ 日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか

それでは安保体制以外に日本の安全を守るための方法論としての選択肢は無いのだろうか。現状維持も含めていくつかの選択肢を提示し、回答者の考えとしてはどれが適切かを選んでもらった結果が次のグラフ。

↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え(2022年)
↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え(2022年)

日米安保の肯定派が、ほぼ「現状維持」にスライドした形で、回答値もほぼ同じ値が出ている。次いで多いのは「安保を撤回して自衛隊のみで日本の安全を守る」との回答だが、どの属性でも1割に満たない。「安保撤回・自衛隊も縮小か廃止」(この状態でどのようにして安全を守るのかは設問では設定されていない)の回答者は数%程度しかなく、最大値を示している属性の40代でも2.1%。「分からない・無回答」との回答も1割に満たない。

属性別傾向を見ると、男女別では男女ともにほぼ同じような傾向を示している。年齢階層別ではおおよそ若年層ほど現状維持(日米安保体制の維持)への支持の値が高い。とはいえ、差異は数%ポイント程度で、事実上誤差と見ても問題はない。要は男女別・年齢階層別のような属性別の傾向はなく、一様に日米安全保障条約と自衛隊の防衛に関して、現状維持を求める声が絶対多数を占めていることになる。

今件の経年推移を見ると、戦争・軍事関連の大きな出来事があると現状維持への反発が強くなることが見て取れる。また近年につれて現状維持への意向がより強くなる動きを示しているのが確認できる。

↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え
↑ 日米安全保障条約と自衛隊の防衛のあり方の考え

昨今では「非武装化」的な意見は漸減し、むしろ「自衛隊のみ」の意見が増加する兆しもあったが、2009年を頂点として再び減少。ぶれの範囲内での動きと評価できる。「現状維持」が直近では9割を超えていることから、大勢の意見は「(日本の平和・安全には)日米安全保障条約と自衛隊の防衛の現状維持が一番」であると判断してまず問題はないだろう。

■関連記事:

【米国以外で日本の安全や平和に役立つ防衛協力や交流相手とは!?(最新)】

【朝鮮半島情勢、中国、ロシアの侵略戦争…平和と安全面からの関心事(最新)】

※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査

2022年11月17日から12月25日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、郵送法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1602人。有効回答者の男女構成比は757対845。年齢階層別構成比は18~29歳が170人、30代が162人、40代が240人、50代が276人、60代が306人、70歳以上が448人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事