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年間平均114.5万円…大学生への仕送り額の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
お財布の中は寂しく金欠状態。仕送り額はどれぐらいなのだろうか(写真:イメージマート)

大学生が一人暮らしをするとなれば、学業・私生活ともに相応のコストが生じる。そのコストをまかなうためにアルバイトをしたり、実家からの仕送り(家庭給付)を受けたり、やりくりをする。その仕送りの実情を独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月に発表した「令和2年度学生生活調査」(※)などから確認する。

直近2020年度では大学昼間部の平均的な仕送り額は約115万円となっている。

↑ 大学生収入事情(大学昼間部、万円)
↑ 大学生収入事情(大学昼間部、万円)

そこで気になるのは国立・公立・私立それぞれの大学種類別の仕送り額の違い。一般的、そして今調査における調査結果(平均値)でも、学費は国立がもっとも安く、やや上乗せする形で公立、そして私立が大幅高との状況にある。当然仕送り額は私立の方が額面上で大きなものでないと、学生側の生活が成り立たなくなる。

次のグラフでは、その大学種類別・仕送り額について、値を確認できた2000年度以降の推移を描いている。無論この値は年間のもの。

↑ 家庭からの給付額(大学昼間部、大学種類別、万円)
↑ 家庭からの給付額(大学昼間部、大学種類別、万円)

学費は国立が一番安いのだが、仕送り額は公立の方が安い。これは今数字が自宅(実家)・下宿合わせた上での平均値であることに加え、自宅通いの割合は公立の方が高いのが原因。自宅通いの場合は必要となるコストが安く済むので、保護者から受け取れる生活費も抑えられる次第である。ただし額の差異は10~20万円程度に収まっている。当然、国立大の学生の方が平均値の上では、生活費の面で(多少ながらも)余裕が持てる次第。

一方、私立大学の仕送り額は公立・国立と比較して30~40万円程度の差が出ている。それだけ学費に圧迫されているのだから仕方がない。実際、直近2020年度の値を見ると、国立・公立の大学生と比べて、仕送り額が多いのにもかかわらず、厳しい生活をしているようすが確認できる。

↑ 学生生活費(大学昼間部、大学種類別、年間、万円)(2020年度)
↑ 学生生活費(大学昼間部、大学種類別、年間、万円)(2020年度)

元々私立大学は費用がかかるため、世帯収入が高めな世帯の子供が通う傾向が出てしまう。それでもなお、仕送り額が大きく違うこともあり、家庭にかかる負担は大きい。

↑ 家庭からの給付額(大学昼間部、大学種類別、家庭の年間収入に対する割合)
↑ 家庭からの給付額(大学昼間部、大学種類別、家庭の年間収入に対する割合)

直近2020年度では国立・公立大学では10%台なのに対し、私立では14.5%を示しており、4%ポイント程度の差が出ている。それだけ私立大学に通う子供を持つ世帯では、家計が圧迫されていることになる。

グラフ記述の該当期間では消費者物価指数はさほど大きな変化が無いことも含めて考えると、学生の生活が厳しさを増していることは容易に想像がつく。私立の場合は実家通い率が漸増しているのも一因だが(グラフ化は略)、それでも、学生本人、そして実家の保護者もそろばん勘定に頭を痛めている状況が続いていることには違いあるまい。

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※令和2年度学生生活調査

2020年11月に大学院、大学学部および短期大学本科の学生(休学者および外国人留学生は除く、社会人学生は含む)の中から無作為抽出方法によって抽出された学生に対して調査票方式で調査されたもの。有効回答数は3万7591人。調査そのものは2年おきに行われており、現時点では2020年実施の結果が最新のデータ。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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