Yahoo!ニュース

私立は国立や公立と比べて授業料が2倍強…大学種類や居住形態別に大学生の学生生活費をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
何かとお金がかかる大学生活。その実情は(提供:イメージマート)

結構な金額となる大学生の学生生活費。大学の種類や居住形態で違いは生じるのだろうか。その実情を独立行政法人日本学生支援機構が2022年3月に発表した「令和2年度学生生活調査」(※)などから確認する。

学生生活費とは大学生における収支状況のうち支出面から見た金額のことで、具体的には学費と生活費の合算となる。

・学生生活費=学費+生活費

・学費……授業料、その他学校納付金、修学費、課外活動費、通学費

・生活費……食費、住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・し好費、その他日常費(通信費含む)

当事者の大学生の生活環境によって、学生生活費は大きな変化を見せる。そこでまずは大学の種類別に区分し、細かい項目まで踏み込んだ上での学生生活費の現状を確認する次第。なお青系統色は学費、赤系統色は生活費となる。おおよそ学費が非消費支出、生活費が消費支出と見れば理解はしやすくなる。

まずは大学の種類別。

↑ 平均学生生活費(大学種類別、大学昼間部、年間、円)(2020年度)
↑ 平均学生生活費(大学種類別、大学昼間部、年間、円)(2020年度)

国立と公立はあまり大きな違いが無い。両者で公立の方が生活費の中でも食費や住居・光熱費が安めなのは、自宅通いが多いから(国立と比べて公立は多い)。中にはバイト代の一部を自宅に食費や家賃代わりとして渡している人もいるだろうが、今調査では自宅通いの場合は原則住居・光熱費はゼロで計算されており、食費も随分と少なくなる。

他方私立は授業料が国立や公立と比べて2倍強。これが全体額を押し上げている。さらに学校への納付金も桁違いに大きく、これが学生生活費を圧迫している。食費は少なめ、住居・光熱費も随分と少ないのも、自宅通いが多いのが一因。

大学生自身の居住形態別に見ると、下宿などでの一人暮らしにおける金銭的負担の大きさが改めて確認できる。

↑ 平均学生生活費(居住形態別、大学昼間部、年間、円)(2020年度)
↑ 平均学生生活費(居住形態別、大学昼間部、年間、円)(2020年度)

自宅で授業料などの学費が高めに出るのは、私立大学通いの人が多いから。自宅の方が学費が高くなるのではなく、学費が高い人ほど自宅通いをするケースが多い次第である。他方、住居・光熱費は勘定に入らないこと、食費も大いに浮くため、全体額は下宿の8割足らずで済む。

学寮、そして下宿は食費や住居・光熱費が大きく生活費を底上げする形となり、学生生活費そのものも大きな額となる。娯楽・し好費の額が下宿で一番大きくなるのは、やはり一人暮らしの方が趣味を手掛けやすいからだろう。

今件各値は年ベースでの平均値で、落第などを想定しなければ各値を4倍することで、大学修学時の支出を試算できる。無論実際には入学金をはじめ、その他多様な経費が加わるため、さらに必要金額は積み増しされる。

「苦学生」との言葉はあるが、意欲と能力のある学生には、もう少し学問への注力がしやすくなるような手立てが必要な感は否めない。

■関連記事:

【ちょっと気になる大学の受験勉強にかかった費用、中には100万円以上も】

【子供の大学進学、増える負担、親はどうする?】

※令和2年度学生生活調査

2020年11月に大学院、大学学部および短期大学本科の学生(休学者および外国人留学生は除く、社会人学生は含む)の中から無作為抽出方法によって抽出された学生に対して調査票方式で調査されたもの。有効回答数は3万7591人。調査そのものは2年おきに行われており、現時点では2020年実施の結果が最新のデータ。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事