諸外国の国民が思う、相手の国の好き嫌いの実情をさぐる(2022年公開版)
国としての政策姿勢とは別に、国民レベルで他国に向けた好感、嫌悪感といった感情は確実に存在する。その実情を新聞通信調査会が2022年2月に発表した、アメリカ合衆国やイギリス、フランス、中国、韓国、タイへのメディアに関する世論調査「諸外国における対日メディア世論調査」(※)の報告書の内容から探る。
次に示すのは、その対日本も含めた調査対象の各国における、自国以外の国への好感度の指標。好感が持てる(強弱)、好感を持てない(強弱)、加えて実質的にもう一つの選択肢である無回答(あるいは分からない)も合わせ5択のうち、強弱を合わせた好感が持てる派の回答率を合計した値となっている。
日本は調査実施国ではないので掲載されておらず、また各国において自国の部分は空欄となっている。
各国の市民感情としての他国への敬愛度、好感度が如実に現れているのが興味深い。アメリカ合衆国は日本以外では英仏への値が高く、タイは6割台と高めの値。中韓へは半数にも届かない。特に中国へは3割程度にとどまっている。フランスも似たようなものだが、対韓国への値がいくぶん高め。
タイはおおよそどの国へも好感度が高いが、対中国は5割台にとどまる。韓国では日本に対する値が一段と低いが、中国への値はそれより低い。
中国はといえば、フランスへの好感度が一段と高く6割強、次いで対タイが5割台。対日は低く3割足らずで、対米の値とほぼ同じ。昨今の米中関係を推し量れる値ではある(アメリカ合衆国の対中好感度も31.0%と低い)。
これらの値はあくまでも一般市民の思惑であり、各国の政府や行政などの姿勢とは別物。とはいえ民主主義国家では多分に市民感情なるものが国策に影響を与えうることを考えると、無視できない結果には違いない。
余談ではあるが、以前の報告書で特記事項的に記されていた、中韓の好感度合いの推移を確認したのが次のグラフ。
中国→韓国はかなり波があり、ここ数年で持ち直しの気配もあったが、韓国→中国はほぼ漸減傾向にあり、2015年度から2021年度の間に好感度が半減以下となってしまっている。両国の間に何があったのかはさておき、特に韓国サイドからの好感度の減少が生じているのは興味深い傾向に違いない。
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※諸外国における対日メディア世論調査
直近発表分はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2021年11月から12月に行われたもので、アメリカ合衆国・フランス・韓国は電話調査、中国・タイでは面接調査で実施されている。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件。グラフの年数表記は調査結果の発表年で統一している。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されたが、2014年度分は中国において質問そのものができなかった項目が複数ある。またイギリスの2020年度分は新型コロナウイルスの流行悪化の影響で調査はできなかったため、回答値が一切無い。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。