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2021年は前年比1万人増加で137万人…フリーターの推移と現状(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
店舗などで働くアルバイトの人も少なからずはフリーター(写真:アフロ)

1980年代から1990年代にかけてのバブル時代を背景に、在学中でなくパートやアルバイトで生計を立てるライフスタイル・就労状態を示す「フリーター」(時間を自由にとれる「フリー」な、アルバイトをする人「アルバイター」を意味する、2つの言葉を融合させた造語)なる言葉が生まれ、注目を集める時代があった。当時は高給を稼ぎ自由な生活を営むとの観点から、自由人的な生き方として半ばもてはやされてはいたが、昨今では職業、そして生活の上での不安定さから、避けるべき状況を意味する場合が多い。今回は総務省統計局が2022年2月に公開した、2021年分となる労働力調査(詳細集計)の速報結果を用い、「フリーター」の現状推移を確認していく。

2021年分の労働力調査の結果値によれば、2021年における若年層(15~34歳)のフリーター、今調査においては「パート・アルバイトおよびその希望者」(厳密には「男性は卒業者、女性は卒業で未婚の者」で、「パート・アルバイトとして雇用されている」「失業者(※)で探している職種がパートかアルバイト」「非労働人口で、家事も通学もしていない人のうち、就業内定をしておらず、希望する仕事の形式がパート・アルバイト」のいずれかに該当するものと定義づけている)は137万人、昨年比で1万人の増となった。

↑ 若年層のパート・アルバイトおよびその希望者((完全)失業者+非労働人口)(いわゆるフリーター)数(男女別、万人)
↑ 若年層のパート・アルバイトおよびその希望者((完全)失業者+非労働人口)(いわゆるフリーター)数(男女別、万人)

フリーターは若年層そのものの人口減少に加え、フリーターの存在が社会問題化したことから、2004年以降は減少傾向にあった。しかし2009年には再び増加に転じ、2011年に至るまでその動きは継続していた。2012年以降はやや起伏を繰り返しながらも、全体としては減少の傾向にある。

2009年以降3年ほどフリーターが増加した背景には、いわゆる「派遣叩き」で非正規雇用者のうち派遣社員の受け皿の減少が継続していたことが挙げられる。定義の通り派遣社員ならばパート・アルバイトでは無いのでフリーターには該当しない。また、企業側の対応の変化も影響しているものと考えられる。つまり就労側も企業側も、派遣社員の減少分の一部がパート・アルバイトにシフトした次第。

一方2013年以降は景況感の変化に伴い、労働市場の大幅な改善と非正規社員へのシフトトレンドが続いており、契約社員ですらも増加を示している。パート・アルバイトの需要も増加しているが、(完全)失業者も減っていることから、全体としてのフリーターは減少傾向を示す形となっている。2021年では新型コロナウイルスの流行で景況感、そして雇用市場が悪化したこともあり、フリーターは前年比で増加した。

昨今ではフリーターの高齢化が指摘されているが、今公開値でもそれが顕著化しているのが確認できる。

↑ 若年層のパート・アルバイトおよびその希望者((完全)失業者+非労働人口)(いわゆるフリーター)数(年齢階層別、万人)
↑ 若年層のパート・アルバイトおよびその希望者((完全)失業者+非労働人口)(いわゆるフリーター)数(年齢階層別、万人)

15~24歳までの世代層では「フリーター」の減少が2004年から確認されている。また、フリーター全体の減少過程においても、減少率・減少数ともに15~24歳層の方が大きい。特に注目すべきなのは2006年から2007年の区切りで、2002年(公開値が確認できる最古の値)以降ではこの年ではじめて「15~24歳」と「25~34歳」の人数の序列における逆転現象が起きている。今後さらに高齢化、言い換えればフリーター全体に占める「25~34歳」の割合が増加していくだろう。

2021年では前年比で「15~24歳」は変わらず、「25~34歳」は1万人増加した。現状でも「25~34歳」が「15~24歳」を大きく上回っている。この人たちの立ち位置に変化が無ければ今後、さらに上の年齢階層の「35~44歳」において、いわゆる「高齢フリーター」へとシフトすることになる(2021年における「35~44歳」の「高齢フリーター」は53万人)。

ちなみに男女別では男性よりも女性の方が「フリーター」の、若年層人口全体に占める比率は高い。直近の2021年では男性は5.1%、女性は6.1%との値が出ている。

↑ 若年層のパート・アルバイトおよびその希望者((完全)失業者+非労働人口)(いわゆるフリーター)の該当属性人口に占める割合(男女別)
↑ 若年層のパート・アルバイトおよびその希望者((完全)失業者+非労働人口)(いわゆるフリーター)の該当属性人口に占める割合(男女別)

2020年の動きとしては、前年比で女性においてフリーター率の減少が読み取れる。男女合わせた全体では、おおよそ該当する年齢階層の18人に1人はフリーターなのが現状ではある(グラフ上では小数第一位までの表記のため2019年と2020年が同じ値になっているが、厳密には2019年は5.4936%、2020年は5.4596%である)。

フリーターそのものに対する評価が賛否分かれるため一概に言い切ることは難しいものの、フリーター数の減少は悪い話ではない。他方、フリーターの高年齢階層(25~34歳)が引き続き高水準にある状況は、そのまま「高齢フリーター」の増加に容易につながりうるだけに、十分な注意が必要になる。

当人たちがそのライフスタイルを望むのなら、それもまた個人の生き方であり、他人の干渉は許されない。他方、歳を重ねてから、例えば34歳を超えて世間一般の「フリーター」の枠組みから外れた際に、どのようなライフプランを持っているのか、それを考えると疑問と不安が頭をよぎる。

なお35歳以上の同様な立ち位置にある人たちは、少なくとも労働力調査では「フリーター」とは呼んでいない。しかし就業環境・財政面で同じ状況にあることに違いはない。35歳になったから「フリーター」と呼べなくなっただけで、突然就労状況が一気に改善するはずは無い。「高齢フリーター」(一部では「中高年フリーター」「壮齢フリーター」とも呼ぶ)との言い回しとその実状は、今後フリーターとともに大いに注目を集め、一般化するに違いない。

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※失業者

2018年分の労働力調査から、「完全失業者」に加え「失業者」の概念が追加された。

・失業者

次の3つの条件を満たす者

【1】仕事が無く調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)。

【2】仕事があればすぐ就くことができる。

【3】調査週間を含む1か月間に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。

・完全失業者

次の3つの条件を満たす者

【1】仕事が無く調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)。

【2】仕事があればすぐ就くことができる。

【3】調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。

完全失業者は2017年分までと同じ定義で、失業者は仕事を探す活動や事業を始める準備の期間が異なるのみ。報告書では失業者が多く用いられるようになっており、今件のフリーターでも要素の一つである「完全失業者で探している職種がパートかアルバイト」が「失業者で探している職種がパートかアルバイト」に差し替えられることとなった。完全失業者に関する公開データでは一部取得できない値が生じてしまったため、2018年分以降は報告書同様に失業者の値を基に各値を算出している。

なお条件から分かる通り失業者は完全失業者よりも多いため、2018年分以降の値は2017年分以前の基準で計算すれば、もう少し低くなるはずである。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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