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高齢者の自動車の代替手段、知られているものと利用候補と

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
町中でよく見かけるようになった電動アシスト自転車は高齢者にも人気が高いようだ(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

高齢者が身体的な問題などで自動車の運転が難しい状況となっても運転を続ける理由の一つに、生活手段として自動車が欠かせないからというものがある。一方で現在ではそのような高齢者に対し、多様な代替手段が用意されているのが実情。それでは高齢者自身は自動車の運転の代替手段として、どのようなものが存在しているかを知っているのだろうか。内閣府が2021年3月に発表した調査「高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)」(※)の結果を基に確認する。

次に示すのは自動車の代替手段として実在するものに対し、実際に知っているか否かを尋ねた結果。設問の文面は「自動車の代替手段となり得る以下のような移動手段をご存じですか。以下の中から当てはまるものをすべて選んでください」とあり、超小型モビリティやグリーンスローモビリティについては具体的な詳細解説が添えられている。あくまでも単純に知っているか否かの確認であり、存在は知っていても自分には使えないと判断したものは回答に値しないというものではない。

↑ 自動車の代替手段となり得るものに対する認知度(複数回答)(2020年度)
↑ 自動車の代替手段となり得るものに対する認知度(複数回答)(2020年度)

挙げられた選択肢の中ではもっとも知られているのは「電動アシスト自動車」で62.6%。高齢者だけでなく老若男女を問わず普及しているもので、モーターでペダルの足こぎを補助する自転車。ペダルをこがなければ走行しないため、自動二輪ではなく自転車として扱われている。見かける機会も多く、購入も容易で利用もたやすいため、多くの人が知っているのだろう。

次いで多いのは「電動車いす」と「地域コミュニティバス」の45.9%。「電動車いす」は電動モーターで走行する、4つの車輪がついた車いす。通常の車いすを操作するのが難しい人に適している。また長時間の利用にも有用。

「地域コミュニティバス」は移動が困難な高齢者を中心に、地域住民の移動手段を確保維持するために地方自治体などの公的機関が運営するバスのことで、民間企業では採算性の問題から運用が難しい地域において公的に運用されるものが多い。第4位の「乗合タクシー」もほぼ近いコンセプトのものだが、ワゴンなどの車種を用いて少数の旅客を運ぶもので、公的機関だけてなく民間でも運営されている。

続いて「原付三輪スクーター」が23.6%。世間一般に言われている「シニアカー」がこれに該当するもので、普通のスクーターに似たスタイルを持つ、3輪か4輪の電動式カート。移動速度は時速4キロ前後と、早歩きと同程度で、道路交通法上は歩行者あつかいになっている。

これらの代替手段への認知度ではなく、回答者自身が利用できると考えている、主な移動手段になると思っているものについて、上位3つまでを答えてもらったものが次のグラフ。設問文面は「あなたにとって自動車を代替する主な移動手段になり得るものを教えてください。以下の中から当てはまると思うもの上位3つ以内を選んでください」となっている。

↑ 自分にとって自動車を代替する主な移動手段になり得るもの(免許保有者限定、上位3つ以内の複数回答、居住地区別)(2020年度)
↑ 自分にとって自動車を代替する主な移動手段になり得るもの(免許保有者限定、上位3つ以内の複数回答、居住地区別)(2020年度)

自動車を代替する移動手段の存在を知っていても、自分が使いこなせなかったり、自分の居住地区に存在しなかったり、環境の上で利用ができなかったりすれば、少なくとも自分にとって代替するものにはなり得ない。「徒歩」や「車いす」は地区による差異はさほどないものの、例えば「電動車いす」は都市部ほど値が高く、過疎地などでは低い値にとどまっている。これは道路の整備などの問題がハードルとなっているからだと思われる。

似たようなパターンには「家族など周りの人が運転する車に同乗」があるが、こちらは過疎地などでは該当する高齢者自身が一人暮らし、あるいは高齢夫婦として生活しているからだと考えられる。「特に自動車を代替する移動手段はない」が同じパターンなのも、同様の理由だろう。過疎地では3割近くの人が、自動車の代替手段が存在しないと認識している状況は、憂慮すべきものに違いない。

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※高齢者の交通安全対策に関する調査(令和3年3月)

2020年12月から2021年1月にかけて65歳以上の人に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1500人。免許保有者は832人、自主返納者などは668人。都市区分では都市部在住者416人・地方都市在住者416人・その他417人・過疎地251人。都市区分に関しては「都市部」は特別区や指定都市、「地方都市」は中核市や施行時特例市、「過疎地」は過疎地域自立促進特別措置法により過疎地域とされている市町村、「その他」は都市部・地方都市・過疎地以外の市町村。「自主返納者など」は運転免許の全部の自主返納者および一部の自主返納者、免許を更新せずに置いておき、そのまま自主的に失効させた人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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