老後の主な収入源、どこの国でも公的年金がトップ
生活の主軸はどの国でも公的年金
心身ともに衰えを見せ、現役世代のような就業対価が得にくくなる高齢者でも、日々の生活には資財の消費は欠かせない。それではその年齢階層では、主にどのような収入源を頼りにして暮らしているのだろうか。今回は内閣府が2021年6月に発表した「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(※)の最新版から確認する。
次に示すのは現在の生活において何を主な収入源にしているか、択一回答で答えてもらった結果。厳密には「蓄財引出(預貯金などの引き出し)」は収入とは別物であるが、今調査では同一のものとして選択肢に加えている。なお横軸の項目の並びは設問票に準じている。
日本に限らず今調査の対象国ではいずれも、公的年金を主な収入源としている人がもっとも多い。アメリカ合衆国では5割強とやや低めだが、その分私的年金や財産収入の比率が高くなっている。またスウェーデンは45.7%とアメリカ合衆国以上に低めだが、その分無回答の値が33.2%と極めて高い結果が出ている。スウェーデンでは回答の際に何か問題が生じた可能性がある。
なお今件はあくまでも「主な」であり、例えば日本の公的年金における回答率は67.4%だが、これは「公的年金を収入源としている人は67.4%のみ」を意味しない。例えば就業収入がメインで、公的年金がサブの人もいるだろう。
公的年金以外では就業収入の人が2割前後。それ以外の蓄財の引き出しや財産収入(株式運用・配当や、賃貸住宅の所有による家賃収入など)などは数%のレベル。補助的に取得している人は多数に上ることは容易に想像できるが、メインとしている人はごくわずかでしかない。
今件を日本に絞り、年齢階層別に見たのが次のグラフ。
60代前半はまだ定年退職を迎えていない可能性、あるいは一度退職した上で嘱託などの立場で再就職している事例も多々あることから、2/3近くが就業収入を主な糧としている。公的年金がメインの人は2割足らずでしかない。これが60代後半になると、就業収入をメインとする人は1/4ほどとなる。見方を変えれば、60代後半でも就業を続けて生活の主な支えにしている人が1/4ほどもいることになる。
70代に入るとさすがに就業収入の回答者は1割台に減る。公的年金を主軸とし、就業者は就業収入、そして蓄財の引き出しで生活をまかなっている。サブ、補完的な観点で財産収入や子供からの援助を充てている人はそれなりにいるはずだが、メインの人は誤差の範囲。
就業収入と公的年金を国別・年齢階層別で
上位陣を占めた公的年金と就業収入につき、国別かつ年齢階層別に区分したのが次以降のグラフ。まずは公的年金だが、日本同様他国でも60代前半では少なめ、60代後半から回答率が高めになる。
アメリカ合衆国では全体に値が低めだが、これは上記の通り私的年金などをメインとする人が多いため。スウェーデンの値がアメリカ合衆国同様に低いのは、前述のとおり無回答の値が異様に高いため。他方、日本とドイツでは70代に入ると8割以上が公的年金をメインとして生活していることになる。
一方就業収入の状況は次の通り。
就業収入では、60代前半の時点で一番高いのはスウェーデンで66.2%。日本がそれに続き65.6%。次いでドイツの5割強、アメリカ合衆国の5割近くと続く。歳を重ねるに連れて減少していくのはどこの国も同じだが、ドイツとスウェーデンでは70代前半で5%以下となるのに対し、日米では年上でもなお「就業収入が主な収入源」と回答する人が一定率存在する。国の制度や就業スタイルの違い、高齢者の就業に対する社会の認識の差異の結果によるものだが、高齢者の生活様式を他国との比較で確認する際に、留意しておくにこしたことはあるまい。
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※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査
5年毎に行われている調査で、最新分は2020年12月から2021年1月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)に対して調査員による個別面接聴取方式や郵送調査法、電話調査法、訪問依頼・電話聴取法によって行われたもので、有効回答数は各国とも1000件強。それぞれ男女別・年齢階層別・地域・都市規模などを元にウェイトバックが行われている。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。
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