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直近では預貯金だけで6割超え・28.2%が通貨性預貯金…二人以上世帯の貯蓄の中身をチェック

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
夫婦での貯金。色々な仕方があるが。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

普通預貯金、定期預貯金、生命保険など、そして株式などの有価証券…貯蓄の仕方には色々なスタイルがある。夫婦世帯ではどのような形で貯蓄をしているのだろうか。二人以上世帯の貯蓄(ここでは金融資産を意味する)の実情を、総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果を基に確認する。

次に示すのは二人以上世帯における貯蓄の具体的な種類における、その構成比の推移。1969年以降5年おき(つまり調査ごと)の、二人以上世帯における貯蓄残高に関して、どのような形で貯蓄しているのかの割合を示している。単純に二人以上世帯全体で、勤労者世帯以外に年金生活者世帯も含まれていることに注意。また、通貨性預貯金とは普通預貯金を意味する。

↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯)
↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯)

通貨性・定期性を合わせた預貯金がもっとも多く、過半数に達している。それどころか今世紀に入ってからは6割台を維持している。

直近2019年時点で貯蓄残高は1449万7000円。そのうち35.6%の515万9000円が定期性預貯金(期限を定めて行う預貯金。通常は一定期間自由な引き出しができない)、28.2%の408万1000円が通貨性預貯金(いつでも自由に引き出せる代わりに、利子率は「定期性預貯金」より低い)となっている。定期性預貯金の割合は1999年をピークにやや減少しつつあるが、それ以上に通貨性預貯金は増加の一途をたどっており、調査開始以来最高水準を記録している。2019年では通貨性預貯金は3割に届きそうである。

バブル時代の1989年には株価の上昇(=手持ち有価証券の価値上昇)もあり、「有価証券」の比率が最高値を記録したものの、その後は株価低迷に加え、投資そのものからの忌避もあり、値は減少気味。直近の2019年ではやや持ち直しているものの、預貯金への強い信頼ぶりは今現在でも変わっていないことが予想される。

貯蓄額そのものは消費者物価指数との絡みなどがあるため(1969年の100万円と2019年の100万円では、額面が同じでも価値は異なる。また該当年前後の所得との兼ね合わせも考えねばならない)一概に比較はできない。そこで代わりに「いかに預貯金比率が増減しているか」が分かりやすいように、「通貨性預貯金」「定期性預貯金」のみを足してグラフ化を行った。

↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯、預貯金のみ)
↑ 貯蓄の種類別構成比(二人以上世帯、預貯金のみ)

バブルが弾けた後は漸次預貯金率は上昇を続けており、2019年では前回調査の2014年からさらに増加、計測以来最高値を更新している。同時に「貯蓄」全体における「通貨性預貯金率」(のみの割合)は過去最大、「預貯金全体」に占める割合も最高水準を記録している。

この動きの理由はいくつか考えられるが、通貨性預貯金と定期性預貯金の金利差がほとんど無くなり、定期性預貯金にしておく必要性が薄くなったのに加え、クレジットカードなどの引き落とし口座として通貨性預貯金を使う人が増えているからだと思われる。

アメリカ合衆国などと比べると日本では預貯金で貯蓄する傾向が強い。昨今の市場動向を見るに、そして今回のグラフから動向を察するに、今後ますますその傾向は強まるに違いない。

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【主要国の家計資産の構成比率(最新)】

※全国家計構造調査

家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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