中食が増えていく食のスタイル…一人暮らしの若者の食生活の移り変わり
「自炊による食事が少ない」とのイメージが大きい一人暮らしの若年層。その食生活の中身を、総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果から検証する。
今回精査を行うのは、一人暮らしの勤労者世帯のうち30歳未満が対象。その世帯を対象に、1か月の食料費項目の詳細を確認したもの。「外食」、「調理済みの食料(中食)」、そして「素材となる食料」「その他(調味料やお菓子、飲料、酒類など)」をまとめて「その他(素材食料)(≒内食)」と、合わせて三つに区分し、男女別に食料費全体に占める比率の変化をグラフ化したものが次の図。
男性の外食比率が女性と比べて一様に高い。これは女性と比べて男性の昼食時における弁当持参比率が低いこと、仕事から帰宅した時の夕食の自炊率は男性の方が低いのが大きな要因だと考えられる。また同じ勤労状態にあるとしても、女性より男性の方が「付き合いの飲食」=外食の回数が多くなってしまうのも原因の一つなのだろう。
また、中食比率は男女であまり違いがなく、男性で外食が女性と比べて多い分、そのまま「その他(≒内食)」が少なくなっている動きも興味深い。
中長期的な動きとしては、男女とも中食比率が増加している。ファストフード、コンビニ、スーパーなど購入経路は多様だが、自炊ではなく、また外食でもなく、出来あいものを調達して自宅で食べる中食のスタイルが定着しつつあることがうかがえる。調達できる環境が整備されているのも大きな支えとなっているようだ。
また男性では中食・自炊が増え外食が減る傾向が強まる方向性を示しているが、女性は中食の増加分が外食と自炊を少しずつ食っていく形となっている。若年勤労単身世帯における、食生活の変容ぶりが、男女間で異なる様相にあるのは、注目に値する。ただし女性も解釈次第では、少しずつ外食が減っているとも読める。もっとも外食比率は40%前後で安定していると読んだ方が無理はないのだが。
節約の際には真っ先にターゲットとされる傾向があることから、「外食費が減少している」との話がクローズアップされている。しかし少なくとも若年単身勤労者においては、外食費の減少は前々から起きている動きに他ならない。昨今の流れはそれが継続しているに過ぎない、と見てよいだろう。
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※全国家計構造調査
家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。
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