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高齢者でも減少中…新聞購読の推移(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新聞を読む高齢者。新聞はお気に入りの媒体のはずだが。(写真:アフロ)

従来型の4マスメディアの中でも、文化形成の象徴であると自認し、昨今では消費税に絡んだ軽減税率の話の中でその意義を再認識させることとなったのが、メディアとしての「新聞」。雑誌同様にデジタルツールの普及侵透に伴い、紙媒体の弱点が露呈される形となり、利用者の減少とともに業界規模は縮小し、売上も低迷している。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書を基に、その購読状況の前世紀からの推移について確認する。

今件における新聞行為者率(≒新聞購読率)は、該当日に15分以上新聞を読んだ人の割合を意味する。この新聞は自らが購入したものに限らず、一般紙の朝刊だけでなく夕刊、さらには業界関係紙、広報紙、そしてチラシや電子版までをも含む。紙媒体としての新聞は購読していないが、電子版を読んでいる人も、今件の新聞行為者に該当する。

まずは直近となる2020年の新聞行為者の実情。年齢階層別・曜日別の実態と、平日の男女別は次の通りとなる。

↑ 新聞行為者率(男性、曜日別)(2020年)
↑ 新聞行為者率(男性、曜日別)(2020年)

↑ 新聞行為者率(女性、曜日別)(2020年)
↑ 新聞行為者率(女性、曜日別)(2020年)

曜日別だが、就業者の年齢階層では低めで40代までは低く、50代ぐらいから新聞行為者率は増えてくる。しかし50代までは平日よりむしろ土曜の方が値が低いため、単に通勤・通学の際の時間つぶしのツールとして新聞が読まれなくなったのではなく、新聞を読む習慣そのものが薄れている感は強い。逆に60代以降は土曜の方が高い値となり、日曜は平日とさほど変わらないため、まだ新聞を読む習慣そのものが残っており、単に通勤などの時に読んでいないのかもしれない。

続いて経年変化。まずは男女年齢階層を問わず、全体の値の推移。

↑ 新聞行為者率(曜日別)
↑ 新聞行為者率(曜日別)

かつては通勤の友だった新聞の実情を表すように、平日の方が行為者率は高かった。それが2005年の時点では土曜の方が上となり(2000年の時点ではまだわずかに平日の方が上)、以降その状態が続いている。通勤時に欠かせない存在としての新聞のトップポジションは2005年あたりから揺らぎ始めたと見てよいだろう。

他方、土曜が平日よりも上回るなどの順位変動はあれど、各曜日における行為者率の経年による減少ぶりにはあまり変化がない。ほぼ一様に減っている。そして2010年から2015年にかけての減少度合いは、これまでとは異なり、より大きな割合での減少であることが分かる。スマートフォンの普及とインターネット上における情報配信の侵透はまさにこのタイミングで起きており、シェアを奪われた結果が数字となって表れている。

さらに2015年から2020年においては、日曜における値が急激に減っているのが確認できるが、日曜出勤というケースはあまり考えにくいことから、自宅で新聞を読む機会が大きく減った、つまり世帯単位で新聞を定期購読する人が大きく減ったという推定が成り立つ。

続いて年齢階層別の経年動向。

↑ 新聞行為者率(平日、男性、年齢階層別)
↑ 新聞行為者率(平日、男性、年齢階層別)

↑ 新聞行為者率(平日、女性、年齢階層別)
↑ 新聞行為者率(平日、女性、年齢階層別)

まず男性だが、50代までは一様に下げ傾向で推移し、その傾向が2020年まで継続している。中年層までの新聞離れは前世紀から起きていたことになる。60代以降は2010年まではほぼ横ばいで、70歳以上に限れば増加する気配すら見せていたものの、2015年ではともに大きく下落。2020年も60代は下落を続け、減少傾向は50代までではなく60代までと表現できる形となった。70歳以降は2020年がほぼ横ばいなので様子見だが、長期的に見れば漸減とも解釈できる動き。

他方女性は中年層以降で「高年齢層ほど高い新聞行為者率」が当てはまらず、むしろ50代や60代の方がよく新聞を読む傾向があったものの、2005年以降は50代が40代以下同様に下落の動きに転じる形となる。60代と70歳以上は横ばいで高い値を推移していたが、2015年では60代が大きく下げ、それより下の年齢階層同様に下落の動きを示している。ただし男性の高齢層ほど大きな下げではない。2020年では60代までは一様に下げ続け、70歳以上が横ばいで維持し、結果として男性同様に「高年齢層ほど高い新聞行為者率」となった。70歳以上に限れば長期的にはむしろ微増とも解釈できる、稀有な動きではある。

軸の取り方を変え、調査年別の動向を見ると、全体として新聞行為者率がどのように落ちているのかがよくわかる。

↑ 新聞行為者率(平日、男性、調査年別)
↑ 新聞行為者率(平日、男性、調査年別)

↑ 新聞行為者率(平日、女性、調査年別)
↑ 新聞行為者率(平日、女性、調査年別)

高年齢階層でいくぶんクロスが生じているが、ほぼきれいな形で直近に近づくに連れ、各年齢階層とも同じような比率で行為者率が落ちていく(2020年において新型コロナウイルス流行という特殊事情下で、急激な下落あるいはこれまでの傾向とは反しての増加が無かったのは意外)。また、2010年と2015年の間の幅が大きく、特に男性において開いており、この5年間で大きな減少が起きたのが分かる。グラフ化は略するが、年齢階層ではなく世代の動向を見ても、多くの世代でじわりと下げ、そして2015年には大幅な下落が起きているのが確認できる。

一方で高齢層では各年の棒グラフの幅が狭く、他年齢階層と比べると減少度合いが小さいことも確認できる。若年層・中年層と比べ、高齢層が新聞にこだわるようすがうかがえよう。

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※2020年国民生活時間調査

住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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