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中国が1番…アメリカ合衆国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アメリカ合衆国にとってアジアで重要視している国は?(写真:アフロ)

アメリカ合衆国にとってアジアで最も重要なパートナーは?

アメリカ合衆国の人達はアジア地域においてどの国をパートナーとして重要視しているのだろうか。その実情を外務省が2021年5月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。

まずは「アジア地域の中でどの国が、アメリカ合衆国・地域にとって最も重要なパートナーであるか」(つまりアメリカ合衆国におけるアジア地域でもっとも頼りにしたい、付き合いを深めたい国)との設問に、択一で答えてもらった結果の推移の確認。なお一般人に関しては直近の2020年度では該当項目の調査が行われなかったため、その前年の2019年度の値が最新のものとなる。

↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(一般人、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(一般人、択一)

↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(有識者、択一)
↑ アジア地域の中でどの国がアメリカ合衆国・地域にとってもっとも重要なパートナーであるか(有識者、択一)

一般人は2011年度になって初めて、有識者では2010年度に日中の逆転現象が起きた。これは中国の人口・資源を背景にした経済成長に伴う影響力の強化によるもの。1990年以降、とりわけ今世紀に入ってからの中国の値の伸びがそれを裏付けている。

ところが2012年度になると、一般人では日中の立ち位置が再び逆転し、日本が上位につき、有識者でも順位の変化こそ無いものの両国の差は急激に縮まった。この変動の理由については、米中関係の変化(悪化)に伴い、相対的に日本への政治的側面での再評価が行われたもの、そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う米軍の救援作戦「オペレーション・トモダチ」によるものと考えられる(2011年度調査時点では震災関連の動きは反映されていない)。

その翌年の2013年度では、中国の動きは一般人では横ばい、有識者では大きな下落を示している。他方日本は一般人では大きく下落し、再びトップの座を中国に明け渡している。有識者ではほぼ横ばいで、中国との差は4%ポイントにまで縮小した。他方、一般人・有識者ともに韓国が大きく伸びている。

直近の2020年度では有識者では中国が前年度から大きく値を上乗せし、日本は下落。結果として両国のポジションは入れ替わる結果となった。調査期間がアメリカ合衆国の大統領選挙が実施された直後だったのが少なからず影響しているのかもしれない。

パートナーとしての認識の理由を確認

今世紀における中国の値を押し上げた原因としては「経済成長に伴う影響力の強化」が想像できる。その想像の裏付けをしていくことにする。まずは一般人において、日本と中国それぞれをベストパートナーとして選んだ回答者に、その理由を自由回答で答えてもらい、上位5位の推移を見たものが次のグラフ(上記にある通り前回年度の2019年度の結果であることに注意)。直近年度で値が公開されている(上位に入ってる)項目のみグラフに反映させている。

↑ 「日本」と回答した理由(一般人、自由回答)
↑ 「日本」と回答した理由(一般人、自由回答)

↑ 「中国」と回答した理由(一般人、自由回答)
↑ 「中国」と回答した理由(一般人、自由回答)

日本では長期間にわたり継続性のある項目は「貿易・経済関係」のみで、直近年度では。それ以外はここ数年で順位が上がって来た項目。かつては「技術力」「国の特質(人口など)」「政治的結びつき」などが上位に入っていたことも合わせ考えるに、一般人における日本への注目点が大きな変化を示しているかもしれない。

他方中国では上位項目の順位はほとんど変わらないため、継続性のある複数の項目が上位を示し続けている。各項目が横ばい、減少にあるのに対し、唯一「貿易・経済関係」が跳ね上がっていた。要は多くの一般人にとって、中国がアジアでの最重要パートナーである理由は、経済関係に寄るところが大きいと見てよい。もっとも2013年度をピークに大きな減少を示しており、「貿易・経済関係」がパートナー認識の理由として選ばない人が増えているようすがうかがえる。直近年度でも選択肢の中ではトップに変わりはないのだが。

有識者においても一般人と大きな認識の違いはない。グラフの動きがやや粗いのは、元々有識者数が少ないのに加え、それぞれの国と回答した人に限定されているからである。こちらも直近年度で値が公開されている(上位に入ってる)項目のみグラフに反映させている。日本のグラフですかすかな状態となっているのは、上位項目が新しい選択肢ばかりだからである。

↑ 「日本」と回答した理由(有識者、自由回答)
↑ 「日本」と回答した理由(有識者、自由回答)

↑ 「中国」と回答した理由(有識者、自由回答)
↑ 「中国」と回答した理由(有識者、自由回答)

日本においては長期間にわたり継続性のあった項目は皆無。前年度まで継続して挙がっていた「貿易・経済関係」も、直近年度では無くなってしまった。直近年度で上位陣として値が公開された選択肢は、ここ数年で順位が上がって来た項目ばかり。有識者の間でも日本に対する注目点に関して大きな変化が生じているのだろう。「国の経済・好景気」「よい関係、同盟国」などの値が上位についているのは気になるところだ。

他方中国では「貿易・経済関係」「国の経済・好景気」が継続して上位に入っているが、それ以外では「国のパワー」などが高い値を示しているのが目にとまる。人口などの絶対的な数量としての国力に注視していることが透けて見える形となっている。

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※米国における対日世論調査

直近分は外務省がハリス社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2020年12月~2021年1月に実施されたもので、有効回答数は一般人1013人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。一般人にはインターネット経由で、有識者には電話によるインタビュー形式で実施されている。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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