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国による戦争やテロのリスクへの懸念度の違いをさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 戦争勃発の実際のリスク、そして国民が感じている度合いは国によって異なる。(写真:ロイター/アフロ)

思惑の違いや利己的な願望、時として偶発的な出来事で国家間の紛争、戦争が勃発することがある。また社会的に迎合しがたい考え方を持つ集団による非合法的な手段を用いた破壊活動で、無垢の人たちが傷つくテロ活動が起きる可能性もゼロではない。人々はこれらの事象発生のリスクをどれほど恐れ、懸念しているのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果から、その実情を確認する。

次に示すのは、回答者の住む国が関与する形で、何らかの戦争(この場合は国家間戦争を意味し、国内での内乱などは該当しない)が勃発する可能性について、どれほど考えているかを示したもの。(強)かなりあるを3、結構それなりにあるを2、たいしてないを1、そして(弱)まったくありえないをゼロとしてウェイトをかけ、平均値を算出したもの。回答者全員が「かなりある」ならば3.000、全員が「まったくない」なら0.000になる。要は数字が大きいほど、戦争リスクが高いと皆が考えている次第。なお今回取り上げる設問については現在集計中らしく値が非開示となっている、あるいは元から設問が用意されていない可能性がある国が複数確認できる。

↑ 自国が関与する戦争が勃発する可能性(かなりある:3、結構ある:2、たいしてない:1、まったくない:0での平均値)(2017~2020年)
↑ 自国が関与する戦争が勃発する可能性(かなりある:3、結構ある:2、たいしてない:1、まったくない:0での平均値)(2017~2020年)

もっとも値が高い国はウクライナ、次いでメキシコ、フィリピン、イラク、そして日本。一方、ニュージーランド、香港、イラン、ギリシャ、タイなどは低めに留まっている。

日本の高さが気になるが、調査年は2019年。近隣諸国、特に中韓との間で尖閣諸島や竹島に関する問題が頻発しており、両国のあからさまな軍拡の実情が日々伝えられていることが多分に影響したものと考えられる。意外なのはそのもう一方の当事国である韓国や中国における値が低いこと。今件問題は現在も継続中であることから、問題そのものに関して少なくとも国民レベルでは危険感をあまり認識していないのだろう。

一方、国同士の戦いではなく、国内に存在している(国外から来訪した勢力も含む)反社会的勢力による攻撃・破壊的行為、いわゆるテロ行為への懸念だが、同じように算出したところ、メキシコやフィリピン、イラク、トルコ、ウクライナが上位に付き、次いで日本が入る形となった。戦争同様テロに関しても、日本は強い危機感を覚えていることになる。

↑ 自国がテロリストに攻撃される可能性(かなりある:3、結構ある:2、たいしてない:1、まったくない:0での平均値)(2017~2020年)
↑ 自国がテロリストに攻撃される可能性(かなりある:3、結構ある:2、たいしてない:1、まったくない:0での平均値)(2017~2020年)

どこまでをテロ行為と見なしているかにもよるが、日本でも前世紀末に大規模な新興宗教団体による複数の事案が発生し大きな社会問題と化したことは、今なお多くの人の記憶に新しいところではあるし、小規模なものならば数え切れぬほど発生している。それらまで含め、可能性は高いと考えているのかもしれない。また上記の通り国家間の争い事へのリスクに関する高い値が出ていることから、それと連動した形での恐れを抱いている可能性も多分にある。

この項目も国家間戦争同様に、ニュージーランドや香港、イラン、ギリシャ、タイなどは概して低め。心配性であるか否かの国民性もいくぶん反映されているのだろうが、意外さを覚える国が多数確認できるのも事実ではある。

今件はあくまでも一般の国民で構成される回答者による判断、考えで、実際の国内外情勢を反映したものではない。日本の事例がよい例だが、多分に国民自身の特質によるものもある。

一方で、それぞれの国の人たちが、戦争などの危険性についてどの程度考えているかを示しているのも、また確かな話。国によってはその悲観的・楽観的考えが、政策などに反映されることがあるのかもしれない。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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