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世界各国の家庭内における女性観をさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 仕事関連は男女で区分することなく能力や経験で判断すべきとの意見も多い。(写真:アフロ)

身体的な性質、生物学上の役割の上での相違以外に、歴史的背景や宗教的観念などの影響で、男性と女性の間には性別の上での区別・差別が生じることがある。国や地域によって捉え方はさまざまで、ある国では常識的な考え方でも、他の国では問題視される行為も少なくない。世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果から、家庭内における男女の違いにおける社会的観念について確認する。

まずは「妻が夫より稼ぐとトラブルが生じやすい」との設問。強い同意はプラス2、同意はプラス1、不同意はマイナス1、強い不同意はマイナス2とした上で計算した結果が次のグラフ(次の設問も計算方法は同じ)。マイナス幅が大きいほど「妻が夫より稼いでも問題はなく、トラブルなど発生するはずがない」との意見が多いことになる。次の項目も合わせ、回答者における考え方を述べてもらっていることに注意。

↑ 妻が夫より稼ぐとトラブルが生じやすい(強い同意=+2、同意=+1、不同意=-1、強い不同意=-2)(2017~2020年)
↑ 妻が夫より稼ぐとトラブルが生じやすい(強い同意=+2、同意=+1、不同意=-1、強い不同意=-2)(2017~2020年)

夫よりも妻が稼いでも特に問題はないとする意見が多い国が多数を占めている。特に男女平等感の強い欧米でその傾向が強い。日本はマイナス0.207でマイナス圏、つまり問題はないとする派だが、やや値の伸びが弱い。これは他の国際調査でもよく見られる傾向、「どちらともいえない」の回答値が極めて高く(44.8%)、意見そのものが大きな動きを示していないことによるもの。

プラス、つまり妻の稼ぎが多いとトラブルになりうるとする意見は、エジプト、メキシコ、イラク、イラン、チリ、ロシアの6か国。一部の国では宗教的な問題もあり、大きな値が出てしまうのも仕方がない。

続いて子育てにもかかわってくる話。妻が働きに出ると、子供は不幸になることが多いとする意見に対する賛否。今設問の場合、プラス幅が大きいほど同意、つまり妻が働きに出ると子供が不幸になると思っている(から働くことに否定的考えを持つ)人が多いことを意味する。同意派の解釈としては「妻が働きに出ると当然子供との時間が少なくなる。収入の面ではプラスとなるが、その分、愛情が注がれる機会が減ってしまう」というところだろうか。

↑ 妻が働きに出ると子供は不幸になる(強い同意=+2、同意=+1、不同意=-1、強い不同意=-2)(2017~2020年)
↑ 妻が働きに出ると子供は不幸になる(強い同意=+2、同意=+1、不同意=-1、強い不同意=-2)(2017~2020年)

同意を示す国はエジプト、イラク、アゼルバイジャン、韓国、中国、ウクライナ、イラン、メキシコ、イタリア、ブラジル、チリ、ポーランド、コロンビア、キプロス、フィリピン。日本はやや非同意派というポジション。どちらかと言えば欧米で不同意派の傾向が強い感はある。

国毎に兼業主婦の現状や社会福祉体制、宗教観、家事の実態などの実情は異なるため、一概にくくるのは難しいが、国ごとの母子の愛情や兼業主婦の捉え方などの違いが垣間見えて興味深い。

他の属性関連の話同様、男女間における区分も国や地域の文化特性などによって常識やしきたりが定められる場合が多く、唯一無二の正解は存在しない。今件もまた、国ごとの傾向、姿勢を示したに過ぎない。どの国の考えが正しく、また間違っているとの話ではないことを、改めて記しておく。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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