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「男性か女性か」ワークシェアリング意識に関する世界各国の考え方をさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 就業においては男女区分無く平等にとする意見は多々あるが。(写真:アフロ)

仕事が足りず就業希望者が余るような状況下で生じる、特定の属性への優先主義的な考え方。男女間に関して男性優遇を肯定するか否かについて、主要国における考え方の実情を、中長期的に定点観測の形で調査報告している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に確認する。

今回確認するのは一言でまとめると「男性就業優先意識」。就業機会が限られる場合、他の条件を考慮せず、性別で判断して男性を優先すべきか。多分にケースバイケースとなるが、一般論として答えてもらった結果が次のグラフ。

選択項目として「強く肯定する」「肯定する」(以上肯定派)「否定する」「強く否定する」(以上否定派)「中立」「分からない」「無回答」が用意されており、どれか一つを選択することになっている(「無回答」は選択する、というよりは結果的なもの)。

この選択肢のうち今回は「強く肯定する」「肯定する」の肯定派を単純に加算して、その値から「否定する」「強く否定する」の否定派の値を引き、提示された意見への同意度合い(DI値)を算出した。つまりこのDI値が大きいほど、その国では該当する意見を強く肯定していることになる。マイナスならば否定的意見の方が多い次第。

↑ 就業機会が限られる場合、男性を優先すべきである(強い肯定・肯定-否定・強い否定)(2017~2020年)
↑ 就業機会が限られる場合、男性を優先すべきである(強い肯定・肯定-否定・強い否定)(2017~2020年)

「ウーマン・リブ(女性解放運動)」の話が思い起こされるが、就業において男性を優位にすべきであるとの考えには否定的な国が圧倒的であるのが分かる。特に北欧諸国をはじめとするヨーロッパで強い否定意見が出ている。他方、エジプトでは非常に高いプラス値、つまり肯定派が多い結果が出ているが、これは国の事情(宗教など)の上で仕方のない話。

日本はといえば、わずかながらマイナス。この結果だけを見ると色々と物議をかもしそうだが、実は1つ留意点がある。選択肢の中の「中立」の値が日本は断トツの1位になっている。

↑ 就業機会が限られる場合、男性を優先すべきである(「中立」の回答値)(2017~2020年)
↑ 就業機会が限られる場合、男性を優先すべきである(「中立」の回答値)(2017~2020年)

ポジティブに考えれば「男性が優勢である、いや違うといった類の話は、あまり考える必要はないのでは?」と冷静な判断を下している、ネガティブに考えれば「深い考えがない、問題意識がない」のだろう。最初のグラフの結果のみで、「日本は職業上、他国と比べると男尊女卑の国である」と断ずるのは正しい見解ではないことをここに記しておく。

日本の場合は男女の就業については「男性優位ではないが強い思いではない。大勢としてはあまり深く考えていない」と見てよいだろう。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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