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お年玉の推移を家計調査からさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 子供達にとって大変楽しみなお年玉。大人からの金額は変化をしているのだろうか。(写真:ミラタス/アフロイメージマート)

毎年この時期になると子供達が皮算用を始め、大人達がそろばん勘定で頭をかかえるのがお年玉について。自分の子供と他世帯の子供へのお年玉の推移を、家計調査から推測する。

家計調査においてお年玉に相当すると思われる項目は、家計支出編における「他のこづかい」と「贈与金」。それぞれは説明によると次の通り。

・他のこづかい…世帯主を除く世帯員(への)こづかい。

・贈与金…一般社会の慣行による自発的現金支出。持参金など世帯への譲渡金も含む。ただし、仕送り金、慰謝料は除く。せん別、香典、見舞金、謝礼金、祝儀、持参金、結納金、財産分与金、遺産分与金。

期間を1月に限定することにより、「他のこづかい」は自世帯の子供への、「贈与金」は他世帯の子供へのお年玉と見なすことができる。実際には1月に限っても子供へのこづかいは発生し、親族や知人へのせん別や香典、見舞金などを支払う可能性はある。しかしその区分は家計調査では行われていないため、あえて1月の金額はすべてお年玉と見なして精査を行う。

また、月単位での「他のこづかい」「贈与金」が確認できるのは二人以上世帯の品目分類のみ(品目分類とは使用目的にかかわらず同じ商品・サービス・消費内容は同じ項目で分類する方法)。よってその条件での精査となる。

始めに示すのは、毎年1月における二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」の動き。家計調査では2000年以降についてこの値が取得できる。

↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」(円)(各年1月)
↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」(円)(各年1月)

2000年以降に限れば「他のこづかい」「贈与金」双方とも漸減状態にある。「他のこづかい」は2002年の7385円がピーク、「贈与金」は2001年の28634円がピーク。それが直近の2020年ではそれぞれ2081円・16795円。「贈与金」は4割強の減少で済んでいるが、「他のこづかい」は3割足らずにまで落ち込んでいる。景況感の悪化か、大人がケチになっているのか、お年玉にかかわる慣習の変化が生じているのか。

そこでこの額についてそれぞれの年の消費支出の割合を算出する。消費支出とは世帯を維持していくために必要な支出であることから、普段使いするお財布の中身のどれほどの割合なのかを示していることになる。この値に変化が無ければ世帯単位でのお財布事情が悪化しているので、お年玉も減っていると見なせるのだが。

↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」(消費支出に占める割合)(各年1月)
↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」(消費支出に占める割合)(各年1月)

多少の起伏感に違いはあるが、ほぼ金額そのものと同じような形状のグラフができあがった。つまりお年玉の額が減っているのは世帯のお財布事情が原因というよりは、お年玉に割く割合が減った結果ということになる。

もう一つお年玉の金額が減っている原因として考えられるのは、世帯における子供の数が減っているからとするもの。子供が二人いる世帯では(年齢の差による金額の差異が生じる可能性はあるが)二人分のお年玉が必要になる。一人しかいない世帯ならば一人分で済むため、単純計算では半分の額で済む。これは他世帯へのお年玉に相当する「贈与金」でも当てはまる考え方。

そこで各年の平均世帯人数を基に子供の推定人数を試算し、2020年の値を基準として仮に他の年も世帯における子供の数が2020年と同じだとしたら、どのような金額になるかを計算した結果が次のグラフ。

↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」(直近年の推定子供人数をベースに調整、円)(各年1月)
↑ 二人以上世帯の「他のこづかい」と「贈与金」(直近年の推定子供人数をベースに調整、円)(各年1月)

減少度合いが緩やかになったことから、世帯における子供の人数が減ったことが影響を与えているようだが、それでも減少傾向にあることに変わりは無い。

単純に子供へのお年玉の相場が減少しているのか、それとも直接の金銭以外でのお年玉的なもの、例えば子供が欲しがっているゲームソフトを購入して渡すなどの方法にスタイルが変わっているのかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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