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世界全体の携帯電話の利用可能領域カバー率の実情をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 山の中でも使える携帯電話。どこまでカバーされているのか。(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

今や日常生活には欠かせない存在の携帯電話。その携帯電話のサービスはどこまでの領域をカバーしているのだろうか。国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)の公開資料から確認する。

次以降に示すのは携帯電話のサービス網がどの程度普及しているのか、利用可能な領域のカバー率を人口比で示したもの。例えばこの値が90.0%なら、その国・地域に住む人のうち90.0%が携帯電話のサービスを受けられる場所に住んでいることになる。その人が実際に携帯電話を利用しているか否かは勘案されていない。

まずは単純な携帯電話の利用可能領域カバー率。スマートフォンだけでなく従来型携帯電話も含み、さらにインターネットが利用できるか否かも問われていない。単に通話ができるだけでも該当する。なおこの値は現時点では2015年以降のものが公開されている。

↑ 携帯電話利用可能領域カバー率(対人口比)
↑ 携帯電話利用可能領域カバー率(対人口比)

2015年の時点ですでに先進国では人口比で98.5%もの領域をカバーしている。つまり携帯電話が利用できない地域に住んでいる人は1.5%に過ぎない。他方新興国では94.1%。つまり20人に1人以上は携帯電話が利用できない地域で生活をしていることになる。これは見方を変えれば、20人に19人近くはすでに携帯電話が利用できる地域にいることを意味する。

直近の2019年では先進国が98.8%、新興国では96.2%。先進国はほぼ頭打ちだが、新興国はまだ伸びる余裕がある。それでもすでに20人に19人以上は携帯電話が使える地域での生活を営んでいる計算になる。

続いて単純な携帯電話の利用が可能なだけでなく、少なくともLTEかWiMAXが使える地域に住んでいる人の割合。実質的にスマートフォンによるインターネットへのアクセスが利用可能な地域と解釈して問題はないだろう。

↑ 少なくともLTEかWiMAXが使える携帯電話利用領域カバー率(対人口比)
↑ 少なくともLTEかWiMAXが使える携帯電話利用領域カバー率(対人口比)

2015年の時点で先進国では85.4%だったのに対し、新興国では35.0%と1/3強に留まっていた。ところがこの数年で新興国ではカバー率が大幅に増加し、直近の2019年では79.3%と4/5に迫る値を示している。今や新興国でも5人に4人近くはインフラの観点でスマートフォンでインターネットを利用できる地域に住んでいる計算となる。

「利用できる」と「利用している」は別物なので、新興国におけるスマートフォンによるインターネットアクセスの利用率がこの数年で数倍に増えたわけではない。また、この値は単に利用できるか否かのみを問われているため、品質・安定性やコストパフォーマンスの観点においてカバー率と同じような成長を示しているとは限らない。とはいえ、新興国でのカバー率の増加度合いは、それらの国の人口を勘案すると、インターネットの世界に大きな変化をもたらしうるとの認識ができるのは当然の話といえるだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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