スマートフォンなどでのインターネット利用率の実情をさぐる(2020年公開版)
全体では7割近く、20~30代は9割超え
今や多くの人にとって日常生活では欠かせない存在となったスマートフォン。それら携帯電話(スマートフォンだけでなく従来型携帯電話やPHSも含む)を用いてインターネットはどこまで利用されているのか。総務省が2020年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、その実情を複数の切り口から確認する。
まずは「携帯電話を使った」「インターネットの利用率」。今項目では後述する個別区分以外では、タブレット型端末は携帯電話には含まれず、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)やスマートフォン、そしてPHSは携帯電話に該当するものとする。
次に示すのは2019年における全体・年齢階層別のグラフ。過去1年間に一度でも携帯電話を経由してインターネットにアクセスしたことがある人の割合を示している。例えば6~12歳では38.0%なので、調査母体のうち6~12歳全体の中で、過去1年間に携帯電話を使って一度でもインターネットにアクセスした人の割合は38.0%となる次第(インターネット利用についての設問そのものに無回答だった人は計算から除外してある)。
携帯電話本体やインターネット全体の利用率同様に、携帯電話によるインターネットの利用率も成人若年層がピークで、その後は緩やかな下り坂を描いている。かつては定年退職後の年齢階層において、減少具合の急激さが見られたが、この数年は緩やかなカーブに代わっており、高齢層にも携帯経由のインターネットアクセスが地味に普及しつつあることをうかがわせる。
また、6~12歳が4割に満たず、13~19歳も20歳以降と比べて少なめなのは、多くの人が自分の収入で端末を入手できないこと、そして保護者から端末の利用許可を受けていないことが想像される。もっとも幼少時においてはタブレット型端末の利用率が伸びており、細かなレベルでの世代交代が起きているのも分かる。
これをさらに過去の調査データを用いて、5年間の推移を示したのが次のグラフ。
40代まではおおよそ値は変わらず、事実上天井にあるようだ。他方50代以降は少しずつ増加の動きがあり、ここ5年程のインターネットの浸透は中年層以降の間で生じていることが分かる。特に直近年では大きな伸びが生じている。
主要機種別にさまざまな切り口から
次に主要機種として従来型携帯電話とスマートフォン、そして上記「携帯電話」には該当しないものの、利用スタイル的には近いポジションにあるタブレット型端末について、年齢階層別、経年の変化を確認していく。
まずは直近2019年の年齢階層別動向。ほとんどの層でスマートフォンが従来型携帯電話を凌駕しているのが分かる。
今件は「保有」ではなく「インターネットの利用」であり、多分に保護者の端末を流用していると考えられるが、6~12歳の時点ですでに35.0%がスマートフォンを使ってインターネットにアクセスしている。これが13~19歳になると76.7%となる。従来型携帯電話は少数派。20代ではさらに増え、9割に届きそう。20歳を過ぎればさすがに保護者の端末を流用する事例も少ないことから、少なく見積もっても9割近くはスマートフォン利用者であると同時に保有者とも考えてもよい。
一方、中年層以降になると、特に60代以降はスマートフォンの利用率は大きく減る。80歳以上でスマートフォンと従来型携帯電話の利用率が逆転していることから、80歳がスマホ世代の境目と考えてもよさそうだ。
タブレット型端末利用率は少々興味深い動きを示している。最多利用率は6~12歳。中年層ではない。6~12歳では従来型携帯電話よりもタブレット型端末を使ったインターネットアクセスが多用されている。それどころかスマートフォンすら超えているのが実情。これは幼少時においてはスマートフォン同様にタブレット型端末が操作しやすく、また対応アプリケーションも数多く登場しているのが要因と考えられる。お絵かき帳やホワイトボード感覚で子供に使わせる事例も多々見られるようになった昨今の状況を、見事に裏付ける結果ともいえよう。
次に示すのは過去9年間、2011~2019年における、全体的なインターネット利用率。概況を示すものだが、これを見てもモバイル系インターネットの主流が、確実に従来型携帯電話からスマートフォンに移行する動きを示しているのが分かる。
従来型携帯電話の減少と、スマートフォン・タブレット型端末の増加がほぼ同じタイミングで起きており、従来型携帯電話からスマートフォンとタブレット型端末にシフトしているようすが分かる(今件は重複回答式のため、従来型携帯電話利用者がスマートフォンとタブレット型端末のいずれかのみにシフトするわけではなく、双方を利用している場合も多々ある)。
他方、ここ数年の動きの限りでは、スマートフォンとタブレット型端末、双方とも頭打ちの感はある。高齢層への普及が進めばもう少し値は上乗せされるはずなのだが。もっとも直近年ではスマートフォン、タブレット型端末、さらには従来型携帯電話までも利用率が前年比で増加しており、少々イレギュラーさを覚える結果となっているのが実情ではある。
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※通信利用動向調査
2019年分は2019年12月に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対して、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(一部オンラインでも実施されている)。有効回答数はそれぞれ1万5410世帯(3万9658人)、2122企業。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。
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