日本が1番…アメリカ合衆国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移(2020年公開版)
アメリカ合衆国にとってアジアで最も重要なパートナーは?
アメリカ合衆国の人達はアジア地域においてどの国をパートナーとして重要視しているのだろうか。その実情を外務省が2020年3月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
まずは「アジア地域の中でどの国が、アメリカ合衆国・地域にとって最も重要なパートナーであるか」(つまりアメリカ合衆国におけるアジア地域でもっとも頼りにしたい、付き合いを深めたい国)との設問に、択一で答えてもらった結果の推移の確認。
一般人は2011年度になって初めて、有識者では2010年度に日中の逆転現象が起きた。これは中国の人口・資源を背景にした経済成長に伴う影響力の強化によるもの。1990年以降、とりわけ今世紀に入ってからの中国の値の伸びがそれを裏付けている。
ところが2012年度になると、一般人では日中の立ち位置が再び逆転し、日本が上位につき、有識者でも順位の変化こそ無いものの両国の差は急激に縮まった。この変動の理由については、米中関係の変化(悪化)に伴い、相対的に日本への政治的側面での再評価が行われたもの、そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う米軍の救援作戦「オペレーション・トモダチ」によるものと考えられる(2011年度調査時点では震災関連の動きは反映されていない)。
その翌年の2013年度では、中国の動きは一般人では横ばい、有識者では大きな下落を示している。他方日本は一般人では大きく下落し、再びトップの座を中国に明け渡している。有識者ではほぼ横ばいで、中国との差は4%ポイントにまで縮小した。他方、一般人・有識者ともに韓国が大きく伸びている。
直近の2019年度では一般人では日本の値は前年度から上昇し、中国も上昇を示し、結果として両国の値の差は変わらず。他方有識者では中国が前年度から値を落とし、日本も下落し、両国の値の差は変わらず。ここ数年における日本と中国に対する見方は一般人・有識者ともに、日本へのウエイトが中国よりも大きい状態が継続している。
パートナーとしての認識の理由を確認
今世紀における中国の値を押し上げた原因としては「経済成長に伴う影響力の強化」が想像できる。その想像の裏付けをしていくことにする。まずは一般人において、日本と中国それぞれをベストパートナーとして選んだ回答者に、その理由を自由回答で答えてもらい、上位5位の推移を見たものが次のグラフ。直近年度で値が公開されている(上位に入ってる)項目のみグラフに反映させている。
日本では長期間にわたり継続性のある項目は「貿易・経済関係」のみで、直近年度では。それ以外はここ数年で順位が上がって来た項目。かつては「技術力」「国の特質(人口など)」「政治的結びつき」などが上位に入っていたことも合わせ考えるに、一般人における日本への注目点が大きな変化を示しているかもしれない。
他方中国では上位項目の順位はほとんど変わらないため、継続性のある複数の項目が上位を示し続けている。各項目が横ばい、減少にあるのに対し、唯一「貿易・経済関係」が跳ね上がっていた。要は多くの一般人にとって、中国がアジアでの最重要パートナーである理由は、経済関係に寄るところが大きいと見てよい。もっとも2013年度をピークに大きな減少を示しており、「貿易・経済関係」がパートナー認識の理由として選ばない人が増えているようすがうかがえる。直近年度でも選択肢の中ではトップに変わりはないのだが。
有識者においても一般人と大きな認識の違いはない。グラフの動きがやや粗いのは、元々有識者数が少ないのに加え、それぞれの国と回答した人に限定されているからである。こちらも直近年度で値が公開されている(上位に入ってる)項目のみグラフに反映させている。
有識者の認識において、日本に対しては2013年度にて「貿易・経済関係」の値が2倍以上に増加しており、日本に何を求めている・期待しているのか改めて認識できる(回答形式の変更も多分な要因だが)。
有識者も一般人同様、日本においては長期間にわたり継続性のある項目は「貿易・経済関係」のみで、直近年度では。それ以外はここ数年で順位が上がって来た項目。有識者の間でも日本に対する注目点に関して大きな変化が生じているのだろう。「よい関係、同盟国」「同じ価値観・利害一致」などの値が上位についているのは気になるところだ。
他方中国では「貿易・経済関係」「国の特質(人口など)」が継続して上位に入っているが、それ以外では「国の経済・好景気」などが高い値を示しているのが目に留まる。「貿易・経済関係」こそ同じだが、それ以外の項目は日本とは大きく異なり、何を注視しているのかが透けて見える形となっている。
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※米国における対日世論調査
直近分は外務省がハリス社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2019年11月に実施されたもので、有効回答数は一般人1015人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。