60年あまりにわたる税金や社会保険料の負担の実情をさぐる(2020年公開版)

↑ 社会保険料は医療分野をはじめとする社会全体を支えるコストではあるのだが。(写真:アフロ)

社会環境の変化や医療技術の進歩、人口構成比の変化に伴い、可処分所得や社会保険料の負担度合いが大きく変化しているとの指摘がある。今回は総務省統計局の家計調査(※)の公開値を基に、実収入に対する税金や社会保険料の割合、つまり負担の実情を確認する。

実収入と非消費支出、可処分所得の推移は次の通り。

↑ 実収入と非消費支出・可処分所得(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く、円)
↑ 実収入と非消費支出・可処分所得(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く、円)

戦後少しずつ増加を見せた実収入だが、バブル期に向かって上昇幅を拡大、一時緩やかになるが再び大きな増加を示し、バブルの崩壊後は減少せずにほぼ横ばいを維持。実収入の最高額は1997年の59万4038円、可処分所得は1998年の49万8422円。それ以降は緩やかな下落を示しているが、デフレ期の突入時期とほぼ一致しているのが興味深い。

なお人口構成比の観点で考えると、特にここ数年は高齢者でも退職後の再就職(多分に非正規就業で実収入は低いものとなる)で生活費の補完をしているケースが増えており、それが今件の実収入の値の頭を押さえている実情も考慮する必要がある(再就職でも勤労者には違いない)。

他方ここ数年はしばらく続いていた低迷感が嘘のような上昇ぶりを見せ、直近年となる2019年の可処分所得は48万1982円で前年比1万9794円のプラス。今世紀初頭の2001年における46万7353円と比べると1万4629円のプラスとなる。

そして実収入のうち可処分所得を圧迫している非消費支出、つまり直接税(所得税や住民税など)や社会保険料(公的年金保険料、健康保険料、介護保険料など)の割合の変化を示したのが次のグラフ。

↑ 実収入に占める非消費支出の比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く)
↑ 実収入に占める非消費支出の比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く)
↑ 実収入に占める直接税や社会保険料比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く)
↑ 実収入に占める直接税や社会保険料比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く)
↑ 実収入に占める直接税や社会保険料比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く)(2001年以降)
↑ 実収入に占める直接税や社会保険料比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く)(2001年以降)

直接税の負担はバブル期にかけて大きく増加したもののその後緩やかな減少、そして2005年からは再び上昇したものの2009年で天井を打ち、あとはほぼ横ばいで推移している。しかし一方で社会保険料の負担はバブル期以降一方的に増加するばかりで減少の機会はほとんど無く、結果として非消費支出の負担を押し上げる形となってしまっている。バブル期末期から2005年までの間において非消費支出の負担がほぼ横ばいだったのは、社会保険料の負担がゆるやかな上昇に留まっていたのに加え、直接税の負担が漸減していたからに他ならない。

非消費支出の増加は実質的に社会保険料の増加によるところが大きい。世帯あたりの社会保険料の額、比率が中長期的に増加しているのは、他の多数の記事で言及している通り、社会構造の複雑化・近代化に加え、高齢化に伴う医療をはじめとした社会保障負担の増加が要因である。

余談ではあるが、取得可能な最古の値となる1953年と直近となる2019年における、実収入に占める非消費支出・直接税・社会保険料の割合を比較したのが次のグラフ。

↑ 実収入に占める各種比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市))(1953年(農林漁家世帯を除く)、2019年)
↑ 実収入に占める各種比率(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市))(1953年(農林漁家世帯を除く)、2019年)

直接税の負担はほぼ同率、むしろ減っているが、社会保険料の負担は4倍強にまで増加し、結果として非消費支出の負担も2倍近くに増えている。可処分所得の目減りが何によるものか、容易に理解できるというものだ。

ちなみに社会保険料の実負担的な額面推移を見たのが次のグラフ。「消費者物価指数配慮額」は直近年の物価をベースに、過去において直近年と同じ物価だったとしたらいくらになるかを試算したもの。

↑ 社会保険の実額と消費者物価指数考慮額(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く、円)
↑ 社会保険の実額と消費者物価指数考慮額(二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)、2007年までは農林漁家世帯を除く、円)

消費者物価を配慮しても社会保険料は、バブル期と比べて約2倍、1960年代と比べれば5倍以上に増加している。過去の水準のイメージのままで、現在の社会保険料の負担を述べるのは大きな間違いでしかないことが改めて理解できよう。

■関連記事:

日本の国民負担率の詳細推移をさぐる(2020年時点最新版)

租税と社会保障費の移り変わり…国民負担率の国際比較の推移をさぐる(2020年時点最新版)

※家計調査

今回精査対象としたのは、実収入や可処分所得、社会保険料が長期的に継続取得可能な対象となる、二人以上世帯のうち勤労者世帯(人口5万人以上の市)。原則として各年における平均月額を精査対象としている。2007年までは農林漁家世帯を除き、2008年以降は加えているため厳密な連続性は無いが(2008年の値がいくぶん不規則となっている)、2008年の時点で農林漁家世帯が占める比率は0.4%に留まっているため、誤差範囲内として解釈する。

実収入は非消費支出(税金や社会保険料)と可処分所得(自由に使えるお金)に分けられる。具体的な支出・収入の関係は次の通り。

・(実)収入……世帯主の収入(月収+ボーナス臨時収入)+配偶者収入など

・支出……消費支出(世帯を維持していくために必要な支出)

     +非消費支出(税金・社会保険料など。直接税+社会保険料)

     +黒字分(投資や貯金など)

       (※可処分所得=消費支出+黒字分)

なお勤労者世帯は世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯を指す。役員や個人経営者、自由業者、そして無職(年金生活者など)などは該当しない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。