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元正規社員と元非正規社員と…完全失業者の推移をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 失業は生き甲斐、生活の糧を失うだけでなく、自己否定にも。雇用形態で違いは。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

労働市場の変化に関連して、注目を集めている事象の一つが非正規社員問題。先日総務省統計局から発表された労働力調査の2019年分の結果などを基に、雇用形態別の失業者の動向を確認していく。

直近となる2019年分の結果では、正規社員は2018年の3476万人から2019年には3494万人となり、都合18万人増加している。一方で非正規社員は2018年の2120万人から2019年には2165万人となり、45万人の増加。結果として雇用者(職員・従業員)全体は正規・非正規合わせ(役員を除き)5660万人となり、前年の5596万人から64万人の増加となった(万人未満は四捨五入)。

前職の雇用形態別に離職した完全失業者(「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)」のすべてに当てはまる人)の推移を確認すると、前年より派遣社員は横ばい、正規社員は増加、パート・アルバイトと契約社員・嘱託は減少している。「仕事をしたくて職を探しているが見つからない人」の減少は、少なくとも雇用される・されないとの観点では労働市場が改善していることを意味する。正規社員の値が増えているのが気になるが、「よりよい条件の仕事を探すため」に離職し失業している人の数が多いため(詳しくは別の機会で解説する)、転職過程にある人が増えていると考えることができる。

↑ 離職した完全失業者(前職の雇用形態別、万人)
↑ 離職した完全失業者(前職の雇用形態別、万人)

今データはあくまでも「過去1年間に前職を離職した者のうち」との前提があることに注意しなければならない。つまり「失業期間が1年以上」(なかなか再就職先が見つからない)の人は今グラフには反映されていないことに留意する必要がある。この「就職浪人1年超」に該当する人は2018年の53万人から2019年には51万人に減少している。

元派遣社員に対する風当たりの強さは継続中だが、少しずつ風は収まりつつある。次のグラフは各雇用形態別に「その時点で雇用されている人数」に対する、「前職でその雇用形態にいた人の完全失業者数の割合」を算出したものだが、元派遣社員の値がいまだに他の職種と比べれば高い値を示している。現状はおおよそ29人派遣社員が雇われている場合、それとは別に1人が「元派遣社員の完全失業者」(失職してから1年未満)として存在する計算になる。

↑ 完全失業者の職員・従業員に対する比率
↑ 完全失業者の職員・従業員に対する比率

パートやアルバイト、正社員と比べて派遣社員は元々の人数が1ケタ少ないため(2019年では派遣社員は141万人、パート・アルバイトは1519万人、そして正規社員は3494万人)、単純な比率計算では「ぶれ」が生じている可能性はある。ただし10年来同じ計算式で同様の結果が出ていることから、その誤差は十分無視できる範囲に収まっていると考えてよい。解雇された派遣社員(の割合)の相変わらずの多さが認識できる。

完全失業者数の絶対数は元正規社員の立場にある人が一番多い(2019年は32万人)。しかし同じ雇用形態で現在働いている人に対する完全失業者数の比率を算出すると、元派遣社員の値が一番大きくなる。同じ雇用形態で再び就職を望む人が多い実態を考慮すれば、元派遣社員の辛さが再認識される次第である。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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