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41.8%は「正社員を希望」…非正社員の若年労働者の希望する就業状態をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 非正社員として働く人。「本当は正社員として働きたい」と思っているのか。(写真:アフロ)

就業形態の区分の一つに正社員・非正社員との考え方がある。雇用者によってフルタイムで半永久的に、あるいは定年まで雇用期間を定めずに雇われる雇用形態にある社員のことを正社員と呼び、それ以外を非正社員と呼ぶが、非正社員の方がその職における安定性は低く、賃金も低めに抑えられることが多い。そのため、非正社員の多くは自ら望んでその立場についたのではなく、可能ならば正社員として雇われたいとの願望を抱いているとの世間的なイメージがある。それはどれほど正しいのか、厚生労働省が2019年12月18日に発表した、2018年時点における若年層の雇用実態を調査した「若年者雇用実態調査」(※)の結果から確認する。

最初に示すのは、調査母体全体のうち非正社員のうち調査時点で在学していない人(つまり学生アルバイトではなく、主業として非正社員の立場で就業している人)に対し、今後どのような働き方を望んでいるかを尋ねた結果が次のグラフ。41.8%が「今後は正社員として働きたい」と回答している。

↑ 今後の働き方別非正社員の若年労働者割合(調査時点で在学していない人のみ)(2018年)
↑ 今後の働き方別非正社員の若年労働者割合(調査時点で在学していない人のみ)(2018年)

現在就労している会社か否かは別として、非正社員の立場のままで働き続けたい人は3割程度でしかない(詳しくは「現在の会社で」は25.4%、「別の会社で」は5.4%。非正社員の立場を望む人は、勤める企業そのものも合わせ、現状維持を望む声が大きい)。残り1/4強は独立事業・家業引き継ぎ、その他個々人のさまざまな理由による。

これを個々の属性別に見ると、それぞれの属性の事情や現状が透けて見えてくる。

↑ 今後の働き方別非正社員の若年労働者割合(調査時点で在学していない人のみ、男女別)(2018年)
↑ 今後の働き方別非正社員の若年労働者割合(調査時点で在学していない人のみ、男女別)(2018年)
↑ 今後の働き方別非正社員の若年労働者割合(調査時点で在学していない人のみ、男女・年齢階層別)(2018年)
↑ 今後の働き方別非正社員の若年労働者割合(調査時点で在学していない人のみ、男女・年齢階層別)(2018年)

・男性は正社員願望が強く、女性は非正社員を望む声が強い。女性は年が上になるに連れて兼業主婦の比率が高まることもあり、時間の調整がし易い非正社員のまま勤めたい人が多くなる。

・男性は20代前半、女性は10代後半においては多様な事情があるらしく「その他」「不明」回答が多い。また女性10代後半は「独立して事業を始めたい」とする意見が2割を超えている。

・男性10代後半は「別の会社で正社員として勤めたい」との意見が1/3を超える。

正社員を望む人のうち「”別の会社で”」正社員を望む人の割合がどの属性でも一定率存在するのが目に留まる。逆に考えれば「非正社員として働いている現在の会社では、正社員化を望んでいない」ことを意味する。

安定した就業が人生生活や消費行動においても重要な要素となることも考慮し、「これから」を創る若年層達の方を向いた政策を切に願いたいものだ。

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※若年者雇用実態調査

厚生労働省が5年おきに実施している調査で、直近分は2018年9月22日から10月15日(個人調査は10月11日から11月30日まで)の間に調査票郵送配布・郵送返信方式にて行われたもので、有効回答数は事務所調査が9455事務所、個人調査が1万9889人。現時点では2018年実施・2019年発表のものが最新となる。

用語定義は次の通り。

「若年労働者」…15~34歳の労働者(就業者)

「常用労働者」…期間を定めずに雇われているか1か月を超える期間を定めて雇われている人

「正社員」…直接雇用関係のある雇用期間の定めのない労働者のうち、正社員・正職員など

「非正社員(資料上の表記では「正社員以外の労働者」)」…直接雇用関係のある労働者のうち、正社員・正職員などとされている”以外”の人(例 パート・アルバイト、契約社員など)

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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