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世界の対外債務状況をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 国レベルでの対外債務の実情は?(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

対外債務総額のトップはアメリカ合衆国

国単位による国債発行を介した、さらには民間企業や家計ベースでの海外政府・金融機関に対する借入金のことを国レベルでの対外債務と呼ぶ。その現状を世界銀行の公開データベースから確認する。

まずは純粋な対外債務額上位国。米ドルベースで換算している。

↑ 対外債務総額(上位国、兆米ドル)(2019年第2四半期または直近期)
↑ 対外債務総額(上位国、兆米ドル)(2019年第2四半期または直近期)

今件は政府・民間の合算であること、資産を勘案した純資産額ではないこと(対外債務を多数抱えていても、それ以上の債権を持つ多い)、各国の経済規模は考慮されていないことなどに留意しなければならない。例えばジュース1本分の借金でも、月500円の小遣いの子供と、月5万円の小遣いをもらっているサラリーマンとでは、負担が大きく異なるのと同じ。

額面だけで見ると、この数年は何度も繰り返し政府内の財務問題(予算や国債発行額上限)で大いにもめて国内外をやきもきさせているアメリカ合衆国が断トツに多い。そして次にイギリス、フランス、ドイツ、ルクセンブルクが続く。日本は6番目、4.24兆ドル。

切り口を変えて確認

実質的な国毎の負担を知るのには、総額以外に国単位での負担の度合いを考える必要がある。そこで各国のGDP(国内総生産。Gross Domestic Product)を同じく世界銀行のデータベースから抽出し(該当国の値が揃っている2018年のものを利用)、対外債務総額のGPD比率を算出したのが次のグラフ。直上のたとえなら、「月500円の小遣いでは120円のジュース代は24%にも相当し、大きな負担となる」「月5万円の小遣いなら、120円のジュース代は0.24%のみで、ほとんど苦にならない」のような状況を確認できる。

↑ 対外債務総額・対GDP比(GDPは2018年または直近年、150%以上の国)(2019年第2四半期または直近期)
↑ 対外債務総額・対GDP比(GDPは2018年または直近年、150%以上の国)(2019年第2四半期または直近期)

飛びぬけて高いのはルクセンブルク。これは同国はアイスランド同様に「巨額のお金を海外から借り入れ、それをより高利回りな金融商品(例:サブプライムローンを含んだ証券化商品など)に投資することで、利ざやを稼ぐ」ことを主な生業としているため(俗に言う「金融立国」)。上手く立ち回れているうちは非常によい収益が期待できるが、2007年以降の金融危機のような状況になると、大きな痛手を受けることになる。その痛手はまだ癒されていない。

またこの手法は主に「(人口面で)小国」「資源や産業に乏しい国」が国の財政面を支えるためによく行われたもので、上位にはその条件に合致する国が並ぶ。なお繰り返しになるが、今値は「対外債務総額」比率であり、政府債務のそれでは無いことに注意する必要がある。日本の姿が見当たらないが、これは上位には存在しないため。同一条件下では日本の値は85%。上から数えて44番目な次第。

最後に対外債務を、単純に各国人口(全年齢)で割った値。「国民一人あたりどれほどの対外債務を背負っているか」を示したもの。こちらも取得可能な最新値である2018年の人口値を用いている。

↑ 対外債務総額・対国民人口割額(人口は2018年または直近年、上位国、万米ドル/人)(2019年第2四半期または直近期)
↑ 対外債務総額・対国民人口割額(人口は2018年または直近年、上位国、万米ドル/人)(2019年第2四半期または直近期)

こちらは対GDP比のグラフ以上に、ルクセンブルクの突出度が際立つ結果となった。それを除くとアイルランド、シンガポール、オランダなど、やはり似たような国が並ぶ。こちらも日本の姿が見当たらないのは対GDP比グラフと同じ事情によるもの。日本の値は約3.4万ドルで、上から29番目となる。

今件はあくまでも民間と政府の対外債務をすべて合算した値をベースとしている。単純な比較にはそれなりのリスクが生じるため、債権動向も併せて比較することをお勧めする。一方、関連する記事を併せ読むことで、国内外の債務状況が今より確実に、明らかな形となって見えてくるに違いない。

※グラフに一部ミスがありましたので修正しました。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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