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諸外国の可処分所得の実情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 国により可処分所得はどれほどの違いがあるのだろうか。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

可処分所得の最大値はアメリカ合衆国の5.03万ドル

収入のうち非消費支出を除いた、自分自身が自由に使えるお金を可処分所得(※)と呼ぶ。豊かさの指標の一つだが、この過去からの推移と現状をOECD(経済協力開発機構)の公開データベース「Household accounts」から確認する。

まずは欧州地域からはイギリス、スウェーデン、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、ギリシャ、ロシアを、それ以外からは日本、韓国、カナダ、アメリカ合衆国、メキシコを選び、最新値(2018年分。無い国は2017年以前の分でもっとも新しい値)を取得した結果が次のグラフ。なお単位はグラフ中にある通り米ドル。あくまでも他国との比較のために換算したもので、為替レートによって大きく変動することを考慮する必要がある。

↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(高値順)(米万ドル換算、2019年時点での最新年値)
↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(高値順)(米万ドル換算、2019年時点での最新年値)

今回選択した諸国の中では、アメリカ合衆国がトップで5.03万ドル。収入ではなく可処分所得であることに注意。同国の馬力をうかがえる数字ではある。次いでヨーロッパ方面ではもっとも高い値を示すドイツ、フランス、スウェーデン、イギリスと続き、再び北米に戻ってカナダ。日本はカナダの次で3.10万ドル。

今値について、取得可能な限り過去にさかのぼって、その推移を見たのが次のグラフ。国によっては今世紀以降しか値が無い場合もあり、折れ線が一様の長さを示していない。また繰り返しになるが、あくまでも米ドル換算の結果で、各年・各国の対米ドル為替レートによる変動もあることを考慮しておく必要がある。

↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(米ドル換算)
↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(米ドル換算)

アメリカ合衆国が群を抜いて可処分所得が高いことが改めて分かる。次いで高い値を示し続けているのはドイツやフランス。日本は全体の真ん中らあたりのポジションを維持し続けている。

おおよその国では右肩上がりを示しているが、気になるのは今回確認した国の中では唯一失速、右肩下がりに転じ、ここ10年近くの間は横ばいのままのギリシャ。両国のここ数年の経済状況を容易に想起させる動きとなっている。また横ばいを維持していたスペイン、イタリアも、数年前までの欧州債務危機ではよく名前が挙がった国で、それぞれの国で施策として行われた財政の緊縮政策が、国民生活にはプラスとならなかったことがうかがえる(ここ数年、ようやく上向きを示し始めているが)。特にギリシャの下げ方は、失業率の高さも合わせ考えると、一般市民の生活の大変さが容易に想像できる。プライマリーバランスの調整を強要すると、国が不幸になることも多分にありうるとの好例ではある。

過去からの増加分で見ると

可処分所得が家計の良し悪しを推し量る指標のすべてでは無く、また米ドル換算なので為替レートの問題や、それぞれの国の物価・インフレ率も考慮する必要があるのだが、一つの指標として、前世紀末の1999年からの伸び率を算出する。

↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(米ドル換算)(1999年以降のデータがある国限定、1999年の値を1.00とした時の比率)
↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(米ドル換算)(1999年以降のデータがある国限定、1999年の値を1.00とした時の比率)
↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(米ドル換算)(1999年以降のデータがある国限定、1999年の値を1.00とした時の比率、2019年時点での最新年値)
↑ 主要国世帯あたり平均可処分所得(米ドル換算)(1999年以降のデータがある国限定、1999年の値を1.00とした時の比率、2019年時点での最新年値)

基準年次第との話もあるが、1999年を基準とした場合、もっとも高い成長率を示しているのは韓国で2.06倍。可処分所得が20年近くで2倍以上に増加した計算になる。次いでスウェーデン、イギリス、アメリカ合衆国と続き、日本は1.73倍。ギリシャは欧州債務危機で同じく名前を挙げられているイタリアやスペインと比較すると、やはり低めの値に留まっている。

今件可処分所得は各国の一般世帯におけるお財布事情を知る上では、貴重な値となる。他国情勢を知って自分の懐が潤うわけではないが、何かのきっかけで参照値として用いられた際、その実態を確認する上で役立つに違いない。

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※可処分所得

厳密には実収入から非消費支出(支払いを義務づけられている税金や社会保険料など)を引いたもの。この可処分所得を、生活に必要な消費となる消費支出や、貯蓄などの黒字に割り当てる。世間一般にはこの可処分所得を手取り(収入)とも呼んでいる。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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