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「夫は外働き、妻は家事」反対派は6割近く(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 妻は自宅で家事を成し、家庭を守るべきとの考えは昔からのものだが。(写真:アフロ)

夫婦間の仕事感・両者の関係における古くからの考え方の一つとして「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」というものがある。他方、昨今では女性の社会・職場進出や雇用機会の多様化、ライフスタイルや価値観の変化などもあり、結婚してもそのような様式はとらず、共働きをする世帯が増えているのも事実。

↑ 共働きなど世帯数(万世帯)(男女共同参画白書より筆者作成)
↑ 共働きなど世帯数(万世帯)(男女共同参画白書より筆者作成)

そこでこの考え方について賛成か否かに関して、内閣府大臣官房政府広報室が2019年11月付で発表した男女共同参画社会に関する世論調査(※)の結果から確認していく。

調査対象母集団全体では35.0%の人が賛成派(「賛成」「どちらかといえば賛成」)となった。反対派(「反対」「どらちかといえば反対」)は59.8%で、反対派が多数を占める形となった。

↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について(男女別)(2019年)
↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について(男女別)(2019年)

男女別では男性の方が女性と比べて賛成派が多い。女性に限れば反対派は6割超え。また男女ともに「どちらかといえば」ではない、強い意思を持った回答は反対派の方が多い。特に女性は1/4近くが強い反対の意思を示している。

これを男女それぞれ年齢階層別に見ると、男性はおおよそ年が上になるに連れて賛成派が増え、女性はおおよそ60代まで賛成派が減り反対派が増え、70歳以上で賛成派の増加・反対派の減少の動きが確認できる。

↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について(男女別・年齢階層別)(2019年)
↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について(男女別・年齢階層別)(2019年)

やはり設問の内容が古い考えであるため、年長者には肯定する向きが強いものと考えられる。特に男性70歳以上は賛成派がほぼ5割となり、強い意思の賛成の意見も15.8%。他方、女性の60代に至るまでの反対派の増加傾向は、共働きの実情を認識している、さらには実体験をしているからだろう。

これを過去も含めて全9回分の調査結果の推移として見たのが次のグラフ。

↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について
↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について
↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について(賛成派・反対派の動向)
↑ 家庭生活において「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考え方について(賛成派・反対派の動向)

長期的には賛成派の減少と反対派の増加が確認できる。共働きに関する他の調査結果からも明らかな通り、夫婦世帯において共働き比率が増加しているのが大きな要因だろう。2012年10月時点ではイレギュラーな動きが生じ、反対派と賛成派の勢いが逆転した流れを示しているが、これは多分にその前年に発生した東日本大震災の心理的影響が働いたものと考えられる。何らかのトラブル、特に災害が生じた際に、子供のそばに妻がいない状況を想定した上での変化と推測すれば道理は通る。

他の生活様式や価値観の変化と合わせ考えると、今後もこの動きは継続するものと思われる。今調査は不定期に数年おきに実施されるため、次回調査時期がいつになるかは不明だが、今後の調査動向が大いに気になるところだ。

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※男女共同参画社会に関する世論調査

数年に一度、不定期の形で実施されているもので、直近分は2019年9月5日から9月22日にかけて、日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を有する者の中から層化2段無作為抽出法によって抽出された者を対象に、調査員による個別面接聴取法で行われた。有効回答数は2645人。男女比は1238人対1407人。年齢階層比は18~19歳55人・20代186人・30代279人・40代445人・50代448人・60代520人・70歳以上712人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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