ゲームに欠かせない雑誌達の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる(2019年7~9月)

↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが。(写真:アフロ)

トップはVジャンプ…部数の現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。

まずは最新値にあたる2019年の7~9月期分と、そしてその直前期にあたる2019年4~6月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2019年4~6月期と2019年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2019年4~6月期と2019年7~9月期)

いくつかの雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減少している様子が分かる。他方、差異はさほどないように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、このポジションは前期と変わり無し。

印刷証明付き部数を提示しているゲーム・エンタメ誌は、現時点で7誌。日本雑誌協会の情報公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」に該当する雑誌は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している。かつては「マック・ピープル」「ネットワークマガジン」などがあった)。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2019年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2019年7~9月期)

プラスを示したのは「PASH!」「メガミマガジン」の2誌。マイナスは4誌で、誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた下げ幅を示しているのは「アニメディア」。

「PASH!」は誤差領域内だがプラス3.8%。後述する前年同期比でもプラスを示しており、堅調な部数動向。対象期間中の刊行は3誌で、そのうち8月号の「あんさんぶるスターズ!」の特集や付録のクリアファイル、そして9月号の「ギヴン」の特集や付録のチケットホルダー、応募者全員プレゼントの「ギヴン」オリジナルアクリルパスケースが大変好評で、これらが部数を底上げしたようだ。

↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)
↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)

「PASH!」は特集の当たり外れによる部数変動がとりわけ大きくなる傾向がある。一方でここ1、2年は部数の安定化、さらには少しずつだが底上げしている様子が見られる。よい動きには違いない。

今ジャンルでは最大部数を誇る「Vジャンプ」は前期比でマイナス3.0%。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

同誌は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、長期的には部数減少の傾向にある。話題性のある付録で一時的な部数の引き上げを果たしても、それが継続するには至らない状態が続いている。ここ1年ほどはヒットも無く、部数を落とす一方。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいは代入できる要素=ゲームが空振り状態なのか。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2019年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2019年7~9月期)

プラス誌は「アニメージュ」「PASH!」の2誌。誤差領域を超えたマイナスを示したのは「声優アニメディア」「Vジャンプ」「メガミマガジン」「声優グランプリ」の4誌。うち2誌が1割超えのマイナスを示しており、状況はかならずしもよいとは言えない。

「アニメージュ」はプラス13.0%と大きな躍進ぶり。

↑ 印刷証明付き部数(アニメージュ、部)
↑ 印刷証明付き部数(アニメージュ、部)

該当期間に刊行されたのは3誌。そのうち2019年9月号の「ゾンビランドサガ」の特集が高い評価を集めており、これが部数底上げに奏功したものと思われる。もっともグラフを見れば分かる通り、前年同期に部数が大きく落ち込んだことの反動とも解釈できるのだが。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向を確認する。「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、今回も残りの「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみ合いの形を維持している。最近では2016年1~3月期で両誌とも「おそ松さん」特需で跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。なおグラフ中の「Q1」とは第1四半期、つまり1~3月期を意味する。

↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)
↑ 印刷証明付き部数(三大アニメ誌、部)

直近値では「アニメージュ」3万3367部、「アニメディア」2万7233部。前期と比べると両誌の差異は広がった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことは無い。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。