Yahoo!ニュース

「テレビを観ながらインターネットをする」の普及度合いをさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ テレビを観ながらインターネットへアクセス。その実情は。(写真:アフロ)

テレビを観ながらインターネットする人の実情

最近では双方向性のテレビ受像機による番組も提供される機会が増えてきたが、今でもテレビ(放送)はそのほとんどが一方向性、視聴者は放送される番組を観るだけの「提供される」タイプのメディア。その特性を活かし、食事をしたり雑誌や新聞を読みながらテレビを観るスタイルも数多く見受けられたが、昨今では携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォンの双方を含む。以下同)を用いた「テレビを観ながらインターネットをする」様式が増えており、それを前提としたビジネスや構成の番組も登場している。それでは実際に、テレビのリアルタイムでの視聴とインターネットの併用はどれほど行われているのか。情報通信政策研究所が2019年9月に発表した「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)から確認する。

今調査によれば、テレビの行為者(連続して10分以上の利用)率は朝食時、昼食時、夕食時とその後の3つの時間帯でピークが生じる。

↑ テレビ(生)の時間帯別行為者率(平日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビ(生)の時間帯別行為者率(平日、年齢階層別)(2018年)

それではテレビ番組と相性がよいと言われているインターネットの利用を「併用」している、つまり「テレビ視聴とインターネット利用の並行行為」者率、言い換えれば「テレビ番組を観ながらネットを使っている」人の割合はどのような推移を示しているのだろうか。それぞれの時間帯の全体比を、年齢階層別で見たのが次のグラフ。当然、まずはテレビを観ていなければ回答には該当しないので、テレビ行為者率そのものの変移と大きな連動性が生じる。

↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(平日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(平日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(休日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(休日、年齢階層別)(2018年)

まずは平日。全体的な流れとして3つのピーク時間帯が生じる動きに変わりは無い。一方でテレビ視聴そのものは若年層よりもむしろ高齢層の方が高い行為者率を示しているが、インターネットを利用する割合が低いことから、高齢層の並行行為者率は低め。むしろ若年層の方が高い値を示している。若年層におけるテレビとインターネットの相性のよさがうかがえる。

またよく中身を見ると、10代はお昼時は学校にいることが多いために低めにとどまるが、朝と夕方以降夕食前、そして夜は高め。朝は50代までが押しなべて高い値が出るが、夜は20代から40代で突出する傾向が見えているのが興味深い。特に40代は朝昼晩と積極的に「テレビを観ながらインターネット」なのがうかがえる。

休日となると、就学・就業のしばりが無くなり、テレビ視聴そのものの自由度も高まることから、「ながら利用」の値も大きく変化する。午前中では朝食時のピークが1~2時間ほど後ろにずれる。

午後に入るとテレビ視聴そのものが減ることもあり、並行行為者率も減る。そして夜半は夕食時とそれ以降に高い値を示すものの、ピーク時間帯は突出しており継続することなく値が落ちていく。10代は19時台、20~30代と50~60代は20時台、40代のみが21時台に明確にピークが生じているのは興味深い。ただし年齢階層とピーク時間帯との関連性は無さそうだ。翌日が平日となるため、早寝をしなければならない10代のピーク時間帯が早めになっているという程度か。

テレビを観ている人のうちインターネットをしている人は

それでは全体に占める「テレビ観ながらインターネット」率では無く、「テレビを観ている人のうち、インターネットも同時にしている人の比率」はどれぐらいなのだろうか。いわばテレビの「インターネットながら率」ともいえるこの値だが、そもそも論としてインターネットを利用していなければ「ながら利用」は不可能なため、若年層の方が高い値を示している。またテレビ・インターネットそれぞれの行為者率が低い時間帯では誤差が大きくなることから、2018年分は双方の値が高めに出る19時台から22時台限定での値のみが公開されている。

↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(平日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(平日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(休日、年齢階層別)(2018年)
↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(休日、年齢階層別)(2018年)

おおよそ「若年層ほど高い値」「高齢層ほど低い値」との傾向がある。10代がやや低めなのは、インターネット利用端末を持っていない場合があるため(今件調査の10代における下限年齢は13歳)。直上の通りインターネットの利用機会の多い少ないも一因だが、テレビとインターネットの相性は年齢階層の全体人数に占める割合だけで無く、テレビの観賞者に限った割合においても、若年層の方が相性はよいようだ。いわゆるテレビ視聴の「実況」が若年層に流行っていることを裏付ける材料の一つとして挙げられよう。

また見方を変えると、50代以降はテレビ視聴の際にインターネットを併用することはあまりなく、テレビに集中していることになる。ライフスタイルのギャップの一様式といえるかもしれない。

■関連記事:

検索動機となりやすい情報源はネット、テレビ、新聞のいずれだろうか

情報源として欠かせない存在は新聞よりインターネット…主要メディアに対する思いの実情をさぐる

※平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2019年2月23日から3月1日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

なお今調査は例年11~12月にかけて行われるが、直近分は翌年の2~3月となっている。グラフや本文上の表記や考察は、報告書に準ずる形で2018年と表記する。また調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが生じているが、報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事